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間に合いました…ほっ(*´꒳`*)

ミスコン…もとい、一夜の姫の夢の貴公子を決める場は講堂です。

まるで夜会みたいな雰囲気なんですよね。

って言っても、夜会行ったことないですけど。


ただ、講堂の設えがダンスホール風になっていって、そこで有名どころの淑女様方が審査を為さる様子を生徒たちは観覧するんです。

まだ、学園生達はデビュタントを済ませてはいませんからね。踊ったりはできません。端的に言うと、野次馬ですね。

え?酷い言い草ですか?

でも、実際そうですよ。投票も出来なければ、夜会をしている訳でもありません。

元々私は、野次馬勢に行きたかったんですけどね。

恐ろしき生徒会の先輩方の目論見によって、私はミスコンに出場する事になりました。

あの先輩方の方が標準スペックは高い訳ですし、あの方々が出場されればよろしいのに…


「あの…リリアーネ…さん?」


物思いに耽っていたので、後ろから近づいてくる人影に気が付きませんでした。

まあ、ここは入場する扉の裏、つまりミスコン出場者が集まる所です。他の方もいらっしるわけですからね。


勿論。


「はい。何様でしょう?ユウナ様。」


ヒロインさんもいらっしゃいます。


ヒロインさん、ものすごく気合いが入っていますね。

顔はナチュラルに見せかけてバッチリメイク、ドレスは若草色のAライン、スカートの上から薄緑のレースが重なっていて、所々に透明のビーズが散りばめられています。胸元に花形の白いネックレスがキラキラ光っています。髪はハーフアップにしてあり、新緑のリボンが結ばれています。

ヒロインさんは、目に優しい色がお好きなんでしょうか?


ドレスをガン見してたのが、バレたのでしょうか。

ヒロインさんは聞いてもいないのに、ドレスの説明を始めました。


「あ、このドレスが気になりますか?これはリヒト殿下が下さったんです。コンテスト頑張れって。殿下のタキシードと色を合わせたそうですよ!それに、この首飾りも殿下が私に似合うだろうって。」


「そうでしたか。大変お似合いですよ。」


「嬉しいです!ありがとうございます。」


ニコニコと笑うヒロインさんから、邪気は微塵も感じられません。

ただ、言ってる事は完全なる嫌味です。


だって、貴女の婚約者にドレスを贈ってもらいました、しかもお揃いですってただのマウントですよね。

私、貴女の婚約者に好きって言われてるんですって言われてるに他なりません。

ゲームの悪役令嬢としてのリリアーネなら、頬に平手打ちをかましてたでしょうね…

ゲームのリリアーネに初めて共感しましたよ。


…まあ、私別に王太子さんが好きな訳でもないので、どうでもいいのですけど。

こういうところが、悪役令嬢じゃないって言われる所以なのかもですね。

普通なら、婚約者さんが好きじゃなくても、『この泥棒猫!』って叩き飛ばすものなんでしょうか。ただなぁ…ヒロインさん可愛いんですよね。幾ら悪役でも、この子の頬は叩けません。


というか、一つ言いたいことがあるんですよ。王太子さんに!

ヒロインさんに、普通ドレスを贈る相手は婚約者だということを伝えてなかったのは、百歩譲って許しましょう。

ただ、王太子さん…センスなさすぎじゃないですか?

茶髪の人に緑はないですよ!緑は!

普通はオレンジなら赤なりを選ぶはずです!

エメラルドグリーン程度ならいいですよ。でも濃い緑はないです。あり得ません。

ダサすぎです。

栗色に緑ですよ?私は森かっていう話ですよね。

王太子さんにドレスを贈られてなくて、ある意味良かったかもです。


「あ、リリアーネさん!もう出番みたいですよ!」


「あら…本当ね。教えて下さりありがとうございます。」


「いえいえ!ささ、行きましょ!」


コンテスト出場者の5人全員で、講堂のステージの上にでます。

一斉に視線があつまります。

見られてますね…


椅子は片付けられていて、フロアはまるでダンスホールです。

斜め前には広めの階段が備え付けられています。これを降りて行くんでしょう。真っ直ぐ前には5人の貴婦人がいらっしゃり、それぞれ品定めをするように見つめてきます。この方々が審査員さんでしょうね。


階段はまだ降りません。まずは名を呼ばれて深くゆっくりカーテンシーをします。その後、5人でゆっくり下に降ります。その後審査会をして、一夜の姫の発表をし、その後姫以外は退場となります。8割私は退場でしょうね。


「リリアーネ様。お早く…」


あ、横に並ぶのを忘れていました。

エントリーナンバーが3の方が、呼んで下さいました。ありがとうございます。


ちなみに、私のエントリーナンバーは5です。

ヒロインさんは4みたいですね。

隣同士です。


「あのぅ…リリアーネさん…」


「はい。何かしら?」


「少し恥ずかしいから場所を変わってくれませんか?」


「あら、そんな事?ええ。いいわよ。」


別に場所なんて大した問題ではないですからね。

ヒロインさんと入れ替わりました。

目立つのが苦手なんでしょうか…


『ーついで、エントリーNo.4ユウナ・オートリア嬢!』


いつの間にか、名を呼ばれていましたね。

ヒロインさんの次が私ですから、用意をしなくては行けませんね。


「ねぇ、リリアーネさん?」


「はい?なんでしょう…」


ヒロインさんは、私の両手を取ってグッと近づいてきました。

カーテンシーはしないんでしょうか?


「キャーーーーー!やめて下さい、リリアーネ様!!」


「え?あ、え?!」


にっこり微笑んだヒロインさんは、一気に90度回転して階段下に落ちます。

そして、ヒロインさんの足がステージを離れた瞬間、私の手を離しました。

ヒロインを支えようと、後ろに踏ん張ってた私の身体は、そのまま後ろに傾き…


グキッ

ボキッ


はじめの音は、とっさに後ろで着いた左手が折れた音で、次の音は右足のハイヒールが折れた音です。

これやばいです。

左腕痛すぎて、冷や汗が出てきました。

右足は不安定すぎて、立てる気がしません。


「大丈夫です…か…」


「リリアーネ!貴様!!」


とっさに助けおこしに来てくださった、エントリーナンバー3の方の言葉を遮るように、王太子さんが声を上げました。

なにか勘違いされているような気がします…


取り敢えず立たなきゃ始まりませんね。

頑張れ、私の左足!頑張れ私の忍耐力!


「え、あ…」


「大丈夫です。私1人で立てますから…」


痛すぎて気が遠くなりそうですけど、真っ直ぐ立ち、笑顔を浮かべます。決して、侮られることなかれ。

何度も言われましたからね。

流石に耳タコですよ。


「はい。如何いたしましたか、殿下。」


「如何いたしましたか…じゃないだろう!貴様、何のつもりで…」


「リヒト様!いいんです!!ミスコンが台無しになってしまいます!」


「しかし…」


「私は怪我一つありませんし!ね?」


「…わかった。今回は彼女に免じて許してやる!」


めっちゃ睨まれています。

王太子さんと、ベリリアスくんと、ナレオンくんに。

少し見ない間に、攻略対象らしくなりましたね…


王太子さんが人の輪に戻ったときに、ヒロインさんは深々とカーテンシーです。

次は私の番ですね。


大丈夫。

大丈夫です。

笑顔で耐え切りますよ…


『ーと…最後に、エントリーNo.5、リリアーネ・トパーズ・エクステリアス嬢です!!』


折れて好き勝手に動く左手を背中に隠して、右手を胸に置いて、深く膝を折ります。

カーテンシーとしては失格ですが、令嬢としてはギリギリ合格…ですかね?


左隣から、心配そうな視線を感じますが…今はスルーさせていただきます。

笑顔を貼りつけて、右足をひょこひょこさせないように、階段を降ります。

頑張れ、私!


「では、宜しくお願い致しますね。」


王太子さんの言葉によって、私はヒロインさんを突き落とした悪役という空気感の中、嫌悪感を見せずに応対して下さる審査員は素晴らしいですね。

尊敬します。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後、気力と体力で全てを乗り切り、控室に戻り…そこから記憶がありません。

どうやら、いろいろ限界だったようで…気絶してしまいました。

熱も出してしまったので、ソフィー達には心配され、サティー先輩達には謝られてしまいました。

謝らなくてもいいんですけどね…


と、いうかヒロインさん怖すぎません?

腕の手当てを受けて、気合がなくなった今となってはちょっとイライラします。

いや、たしかに悪役っぽく見えますけど、自分のしてはいない事で責められるのは、癪に触ります。


いくら私だとしても、許せないことだってありますよ。


…まあ、だからと言って何かしようなんて事は、ありませんけど。

私、基本的に放任主義なので。

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