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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第五章 憎悪の炎のヴァルキュリア
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第七十一話 裏切られた裏切りのヴァルキュリア

「ラスト……なぜ……」


 ヴィオレットは、震えながら、振り返る。

 まだ、把握できていないのだ。

 自分が、ラストに刺されたなど、信じたくないのだろう。


「悪いね。俺の目的と、あんたの目的は違うんだよ」


 ラストは、強引に短剣から引き抜く。

 激痛により、ヴィオレットが、目を見開き、体を硬直させた。

 これだけで、十分に隙を生み出せる。

 ラストは、そのまま、ヴィオレットを強引に自分の元に引き寄せた。

 抵抗できない彼女を。


「ヴィオレット!!」


「動くな!!」


 アマリアが、ヴィオレットの元へと駆け寄ろうとする。

 だが、その時だ。

 ラストが、ヴィオレットの首元に短剣を突きつけたのは。

 そのせいで、アマリアは、動くことができなくなり、立ち止まった。


「動けば、ヴィオレットを刺すぜ。聖女サマ」


 ラストは、アマリアを脅す。 

 もちろん、首を刺されても、ヴィオレットは、死なない。

 だが、ヴィオレットを傷つけたくないのだ。

 ゆえに、アマリアは、ヴィオレットを助けることもできず、ラストに従うしかなかった。

 ラストは、ヴィオレットの首を絞める。

 ヴィオレットが、抵抗できないようにだ。

 息が苦しくなったヴィオレットは、力が入らず、抵抗できなくなってしまった。


「なぜ、このような事を!!」


「本当に、俺の事、仲間だと思ってたの~」


「え?」


 アマリアは、ラストに問いただす。

 なぜ、ヴィオレットを刺したのか。

 何をしようとしているのか、理解できないのだ。

 すると、ラストは、いつもの様子で、問いかける。

 まるで、ヴィオレットとアマリアの事を仲間だと思っていなかったような口ぶりだ。

 アマリアは、驚き、あっけにとられていた。


「俺はね、あんた達の力を利用してただけ」


「そんな……」


 ラストは、真実を明かす。

 ヴィオレットとアマリアを利用していたというのだ。

 そのために、行動を共にしていたのだと。

 それを聞かされたアマリアは、愕然としていた。

 ショックを受けているのだろう。

 最初は、ラストを拒んでいたが、今では、受け入れてきたのに。

 それは、ヴィオレットも、同じだ。

 ラストは、同じ目的を持つ同士であり、仲間意識はなかった。

 今は、彼の事を信用していたのだ。

 その彼に、ヴィオレット達は、騙され、裏切られた。

 ヴィオレットにとっては、許しがたい事であり、歯を食いしばった。


「ヴィオレット、ありがとうな。あんたが、ヴァルキュリアを殺してくれなかったら、俺の目的は果たせなかった」


「お前!!」


 ラストは、ヴィオレットを煽る。

 ヴィオレットの怒りを買っているのだ。

 ヴィオレットは、ラストの挑発に乗り、怒りを露わにする。

 だが、それでも、ラストは、平然としていた。

 ヴィオレットに憎悪を向けられても、気にも留めてないのだろう。


「本当に、裏切ってたのですか?」


「そうだけど?」


 アマリアは、未だ、信じられず、ラストに問いかける。

 本当に、自分達を裏切っていたなどとは、信じたくないのだ。

 だが、ラストは、堂々と答えた。

 ヴィオレットとアマリアを裏切ったのは、本当なのだと。


「なぜ……」


「なぜって、簡単な事でしょ。俺は、ヴァルキュリアを殺せない。あんたは、ヴァルキュリアを殺せる。だから、利用した」


 アマリアは、未だに、理解できず、問いかける。

 なぜ、今まで、行動を共にしてきたのか。

 ラストは、利用するためだったのだ。

 ヴァルキュリアを殺せるのは、ヴァルキュリアしかいない。

 ゆえに、裏切りのヴァルキュリアとなったヴィオレットを仲間に引き入れ、カレン達を殺させた。

 ヴァルキュリア候補もだ。

 もう、帝国にはヴァルキュリアは、ヴィオレットしかいない。

 ラストの目的は、ヴィオレットによって果たされたことになるのだろう。


「じゃあ、私を攫ったのは?」


「もちろん、ヴァルキュリアを生み出さないため」


 アマリアは、なぜ、自分を攫ったのか、問いかける。

 理由は、簡単だった。

 アマリアは、ヴァルキュリアを覚醒させる能力を持っている。

 ヴァルキュリアを生み出さないために、アマリアを攫ったのだ。

 もちろん、回復魔法が使えるのは、アマリアだけなので、回復要員として、アマリアを連れていったのだろう。

 反発するとわかっていながら。


「ヴァルキュリアも、死んだし。お前らは、用済みってわけ。お分かり?」


 ラストは、淡々と語る。

 ヴィオレットによって、ヴァルキュリアは、死んだ。

 もう、残りは、ヴィオレットだけだ。

 つまり、ヴィオレットは、用済みだったのだ。

 ヴァルキュリアを生み出してきたアマリアも。 

 これ以上、利用価値はないと、ラストは、判断したのだろう。

 あまりにも、ひどすぎる。

 だが、アマリアは、反論できなかった。

 ショックを受けているのだろう。

 ヴィオレットも、反論したいところではあるが、呼吸が思うようにできず、ただただ、拳を握りしめ、ラストをにらんでいただけであった。


「もう、いいぜ。来ても」


「え?」


 ラストは、突然、指を鳴らして、合図を送る。

 その直後、クライド達が、ヴィオレット達の前に現れた。 

 それも、取り囲むように。

 クライド達は、ヴィオレットをにらむ。  

 まるで、ヴィオレットの事を敵とみなしているかのようだ。


「クライド!!」


「ど、どうして……」


 ヴィオレットは、驚愕する。

 クライド達が、ここに来た事は、予想外だ。

 一体、何をするつもりなのだろうか。

 アマリアも、状況が把握できず、混乱していた。

 なぜ、クライド達は、ヴィオレットに敵意を向けているのか。


「全部、ラストから聞いてる。お前、私達も殺すつもりだったらしいな」


「え?」


「ちっ!!」


 クライドは、ヴィオレットに問いただす。

 ヴィオレットは、クライド達も、殺すつもりだったのだ。

 もちろん、ラストと共に。

 クライド達の魂も、作られた体に入っている。

 つまり、死んでいるのだ。

 ゆえに、彼らを殺すしかなかった。

 ラストが、殺すしかないと、提案したのだが、あえて、ヴィオレットが殺すつもりだと、嘘を吹き込んだのだ。

 何も知らないアマリアは、驚愕しながらも、ヴィオレットの方へと視線を向ける。

 ヴィオレットは、はめられたと察し、舌打ちをした。


「そう言うわけだから、一緒に来てもらおうか」


 クライド達は、ヴィオレットに迫り、ヴィオレットを捕らえる。

 抵抗できないように、強くつかんで。

 ヴィオレットを捕らえるつもりなのだろうか。

 それとも、殺すつもりなのだろうか。

 何かしらの方法によって。


「聖女様、あんたも、来てもらうよ」


 ハイネは、アマリアを捕らえる。

 他の仲間もだ。

 アマリアを閉じ込めるつもりなのだろう。

 抵抗できないように。

 ヴィオレット達は、そのまま、屋敷へと連行させられた。


「放せ!!放せ!!」


 ヴィオレットは、必死にもがく。

 だが、クライド達は、力強く、ヴィオレットの腕をつかんでいる。

 すると、クライドは、ヴィオレットに短剣を突きつけた。

 これ以上、抵抗しないように。

 ヴィオレットは、歯を食いしばり、クライド達に連れていかれた。

 アマリアも、同じように、連れていかれる。

 抵抗しないまま。

 アマリアは、ラストの方へと視線を向けるが、ラストは、不敵な笑みを撃買えべるだけであった。


「ラスト、お願いです!!本当のことを話してください!!あなたは……」


「まだ、信じるの?聖女サマ。だから、あんたは、箱入り娘ってバカにされるんだよ」


「っ!!」


 アマリアは、ラストに語りかける。

 説得を試みているようだ。

 アマリアは、未だ、ラストの事を信じているのだろう。

 何か、理由があるはずなのだと。

 だが、ラストは、アマリアを見下す。

 まだ、自分の事を信じているアマリアの事を。

 アマリアは、絶句した。

 まるで、今のが、ラストの本性のように思えて。


「さよなら、聖女サマ」


 ラストは、アマリアに向かって、冷たく突き放す。

 冷酷な表情を浮かべ始めて。


「貴方は、最低です!!信じてたのに!!」


 アマリアは、涙を流して、怒りをぶつけた。

 信じていたのだ。

 本当に、ラストの事を。

 だからこそ、信じられなかった。

 ラストが、裏切っているなど。


「信じる方が、悪いんだよ。こんな俺を……」


「ラスト、お前……」


 ラストは、再び、アマリアを冷たく突き放す。

 罵倒されてもだ。

 アマリアは、愕然として、うつむきながら、進んでいく。

 反対に、ヴィオレットは、振り向きながら、ラストをにらんだ。

 怒りを露わにしながら。


「じゃあな、裏切りのヴァルキュリア。今まで、ご苦労さん」


 ラストは、ヴィオレットに手を振って、別れを告げた。

 まるで、嘲笑うかのように。

 ヴィオレットは、歯を食いしばり、体を震わせた。


「ふざけるな!!ラスト!!」


 ヴィオレットは、ラストに向かって叫んだ。

 怒りをぶつけるかのように。

 だが、ヴィオレットは、クライド達に、強引に連れていかれてしまい、ラストから遠ざかった。

 ラストは、笑みを浮かべながら、歩き始めた。

 これで、復讐を果たせると思っているのだろう。

 帝国を滅ぼす事で。


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