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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第五章 憎悪の炎のヴァルキュリア
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第六十二話 ティアベルが、憎んでいる理由

 少女は、ヴィオレット達に刃を向ける。

 豹変したかのように。


「お前、一体、何者だ」


「お前なんかに、教えるか!!ヴィオレット!!」


 ヴィオレットは、少女に問いただす。

 だが、少女は、答えるつもりはない。

 ヴィオレットの事は知っているようだ。

 裏切りのヴァルキュリアだからなのか、帝国関係者だからなのか。

 少女は、魔法・ブロッサム・スパイラルを発動する。

 どうやら、彼女の属性は、華のようだ。

 ヴィオレット達は、回避しながら、少女に向かっていく。

 だが、少女は、魔技・ブロッサム・アローを発動して、ヴィオレット達を殺そうとしていた。


「ちっ」


 ヴィオレットは、舌打ちをしながら、後退する。

 少女が、何者なのか、不明だからだ。

 帝国兵なのか、ヴァルキュリア候補なのか。

 正体を暴いたうえで、目的を問わなければならない。

 もしかしたら、カレンの差し金の可能性があるのだから。

 だが、少女は、手強い。

 魔法や魔技を連発して、ヴィオレット達を近づけさせようとしないからだ。


「帝国兵か?」


「いや、ヴァルキュリア候補の可能性もある」


「さあ、どちらだろうな」


 ラストは、彼女は、帝国兵ではないかと、推測している。

 だが、ヴィオレットは、ヴァルキュリア候補の可能性もあるのではないかと、推測しているようだ。

 一体、彼女は何者なのだろうか。

 少女は、不敵な笑みを浮かべながら、魔技・ブロッサム・ブレイドを発動する。

 ラストは、回避しようとするが、少女は、もう一度、魔技・ブロッサム・ブレイドを発動して、ラストの腕を切り裂いた。


「くっ!!」


「ラスト!!」


 ラストは、苦悶の表情を浮かべる。

 それでも、少女は、容赦なく、魔法や魔技を連発する。

 ヴィオレットは、ラストの前に立ち、魔法や魔技を発動して、少女の攻撃を防ぐ。

 それでも、少女は、魔法や魔技を連発した。


「あはは!!死ね!!ヴィオレット!!」


 少女は、狂ったような笑い方をしながら、ヴィオレット達を追い詰めようとする。 

 その時であった。

 少女は、勝ったと思い込んでいるのか、ある物を取り出した。

 それは、武器だ。

 しかも、少女が手にした武器は、ハルバートであった。


「あれは、ハルバート!!」


「てことは、ヴァルキュリア候補か!!」


 ハルバートを目にしたラストは、目を見開く。

 しかも、ヴィオレットは、少女の正体を見抜いたようだ。

 彼女の手にしているハルバートは、ヴァルキュリア候補が、手にするものだ。

 華属性ではあるが、カレンから、訓練を受けたのだろう。

 ヴィオレットを殺すために。


「そうだ、だが、今更、遅いんだよ!!」


 少女は、正体を明かす。

 本当に、ヴァルキュリア候補のようだ。

 少女は、ヴィオレットに向けてハルバートを振り回す。

 ヴィオレットを殺すために。

 だが、その時であった。

 ヴィオレットが、ヴァルキュリアに変身し、鎌で、少女のハルバートをいとも簡単に、弾き飛ばしたのは。


「なっ!!」


 少女は、あっけにとられる。

 あれほど、苦戦を強いられていたヴィオレットが、自分のハルバートを弾き飛ばしたのだ。

 ハルバートは、回転しながら、飛ばされ、カタンと音を立てて、地面に落ちた。


「本当に、お前は、詰めが甘いな」


「何?」


 ヴィオレットは、少女に鎌を向けて、言い放つ。

 その表情は、冷酷だ。

 だが、なぜ、詰めが甘いと言われなければならないのだろうか。

 少女は、理解できず、眉をひそめた。

 ヴィオレットは、何が言いたいのかと、苛立ちながら。


「あんたが、俺達の敵だってことは、知ってたぜ」


「なんだと!?」


 ラストが、衝撃的な事実を明かす。

 なんと、ヴィオレット達は、最初から知っていたのだ。

 ヴィオレットに助けを求めてきた時から、少女が敵であると。

 つまり、掌で踊らされていたのは、少女の方だったという事なのだろう。

 これには、さすがの少女も、驚きを隠せない。


「全て、見抜いていた。お前が、ヴァルキュリア候補である事を」


「だから、わざわざ、助けて、保護するふりをして、ここまで連れてきたんだろ?あんたが、本性を現すと思ったからさ」


「な……」


 ヴィオレット達は、少女の正体が、ヴァルキュリア候補であることまで、見抜いていたようだ。

 ゆえに、少女を保護するふりをして、ここまで連れてきた。

 少女が、本性を現す時を待っていたのだ。

 話を聞かされた少女は、絶句した。


「お前は、しくじったようだな」


「な、何を……」


 ヴィオレットは、少女が、決定的なミスをしたと告げる。

 だが、何のことなのか、少女には、わからない。

 自分が、どのようなミスをしてしまったというのだろうか。

 ゆえに、戸惑いながらも、ヴィオレットに問いかけた。

 体を震わせながら。


「もし、私達を殺したいのであれば、ハルバートで殺すのではなく、短剣で殺すべきだったんだ」


「だって、ヴァルキュリア候補ですって、言ってるようなもんだろ?」


「だから、私達は、容赦なく殺せる」


 ヴィオレットは、少女が、どのようなミスをしたのかを明かす。

 本当に、ヴィオレットを殺したいのであれば、短剣で殺すべきだったのだと。 

 ハルバートを手にできるのは、ヴァルキュリア候補だけだ。

 ゆえに、少女の正体は、誰でも見抜ける。

 たとえ、見抜けなかったとしてもだ。

 ヴィオレット達は、少女が、ヴァルキュリア候補であると、見抜いていながらも、確かな証拠が欲しいがために、少女と戦い、苦戦を強いられているふりをしたのだ。

 必ず、少女が、ハルバートを取り出すのではないかと、推測して。

 少女の正体が、ヴァルキュリア候補だと確信を得たヴィオレット達は、少女を殺すために、本気を出したのであった。


「さて、そろそろ、殺そう」


「な、なめるなああああああっ!!!」


 ヴィオレットは、鎌を振り回す。

 だが、少女は、魔法を発動して、ヴィオレット達を遠ざけようとした。

 ラストは、そのまま、突っ込んでいく。

 傷を受けようとも、気にも留めず。

 そして、そのまま、短剣で、少女の腹を刺した。

 それも、深く。


「かはっ!!」


 少女が、血を吐く。

 これで、息の根を止めたはずだ。

 心臓を突き刺せなかったと言えど、重傷は、負ったはずなのだから。

 だが、その時であった。

 少女が、歯を食いしばりながら、ラストの短剣を強引に、引き抜いたのは。


「うおおおおっ!!」


「ラスト!!」


 少女が、雄たけびを上げながら、短剣で、ラストを刺そうとする。

 ラストは、後退しようとするが、少女は、なんと、ラストの腕をつかんでいたのだ。

 なんという執念だろうか。

 そこまでして、ヴィオレット達を殺したいらしい。

 だが、ヴィオレットは、強引にラストと少女の間に割って入り込み、鎌で、少女の心臓を突き刺す。

 少女は、目を見開いたまま、仰向けになって倒れた。


「悪い、仕留め損ねた」


「いい。殺せたんだ」


 ラストは、ヴィオレットに謝罪する。

 申し訳ないと思っているのだろう。

 心臓を突き刺していれば、このような事にはならなかったと。

 だが、ヴィオレットは、ラストを咎めるつもりはない。

 ラストが、心臓を突き刺せなかった理由を理解しているからだ。

 もし、心臓を狙えば、少女は、捨て身も同然で、ラストに向けて、魔法を放っていただろう。

 死から、免れる為に。

 だからこそ、ラストは、少女の心臓を狙えなかったのだ。

 だが、ラストは、拳を握りしめていた。

 自分を責めているようだ。

 その時であった。

 アマリアが、屋敷から飛び出してきたのは。


「一体、何があったのですか!!」


「アマリア……」


 アマリアは、ヴィオレット達の元へと駆け寄る。

 大きな音が、屋敷にも響いてきたのだ。 

 だからこそ、驚いて屋敷から出たのだろう。

 クライド達も、危険を察して、屋敷から出てきた。


「っ!!」


「どうしたんだよ」


 倒れている少女を目にしたアマリアは、目を見開き、絶句する。

 まるで、衝撃を受けているかのようだ。

 だが、ヴィオレットは、どうしたのか、わからない。

 ゆえに、ラストは、アマリアに尋ねた。


「そ、その子は……ティアベル?」


「……さあな。こいつは、見た事がない」


 アマリアは、声を震わせて、問いかける。

 少女の名は、ティアベルと言うらしい。

 だが、ヴィオレットは、知らない。

 彼女の名前など。

 見たこともなかったのだ。

 今までのヴァルキュリア候補の少女達とは、違って。


「それは、そうですよ……」


「え?」


 ヴィオレットが、ティアベルの事を知らないのは、当然だと告げる。

 まるで、何か、知っているかのようだ。

 ヴィオレットは、驚き、戸惑いを隠せなかった。

 嫌な予感がして。


「この子は、ヴァルキュリアになるはずの子だったのですから」


「どういう事だ?」


 アマリア曰く、ティアベルは、ヴァルキュリアになる子だったという。

 もちろん、ヴィオレット達は、知っていた。

 ティアベルが、ヴァルキュリア候補だという事は。

 だが、一体、どういう意味なのだろうか。

 アマリアの言葉は、意味深のように思えてならなかった。

 ゆえに、ラストは、問いかけた。


「この子は……あの儀式の時、華のヴァルキュリアに、なるはずだったのです」


「っ!!」


 アマリアは、衝撃的な言葉を口にする。

 なんと、ティアベルは、華のヴァルキュリアになるはずだったのだという。

 しかも、ヴィオレット達が、アマリアを攫ったあの儀式の時に。

 アマリアの言葉を聞いたヴィオレットは、衝撃を受けていた。


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