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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 狂気の地のヴァルキュリア
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第二十四話 トパーズエリア

「どうも~」


 ラストは、手を振りながら、クライド達の前に立つ。

 クライドは、ソファーに座っていたが、すぐに立ち上がる。

 やはり、こう言うところが、紳士らしく、貴族のように思えるのだろう。

 彼の隣に立っていた精霊の男性も、ヴィオレット達の前に立った。


「無事に合流できて良かった」


「そうだな」


 クライドは、安堵しているようだ。

 ヴィオレット達と無事に合流できたと。

 実は、ヴィオレット達が、トパーズエリアに侵入した後、クライドとは、行動をしていたのだ。

 帝国兵に気付かれないように。

 フードを深くかぶり、裏路地を使って、クライド達の元まで来たのだ。

 そうでもしなければ、一目で気付かれてしまっただろう。

 なぜなら、トパーズエリアは、貴族のエリアと言っても、過言ではない。

 元々、どのエリアの帝国の民も、貴族のように、暮らしていたのだ。

 帝国に守られていたから。

 だが、見放されたエリアは、貴族から転落したような感覚に陥った。

 ゆえに、廃れてしまったのだ。

 帝国の民も、エリアも。


「さて、紹介をしよう。彼女の為に、な」


 クライドは、アマリアの為に、自己紹介を行うつもりだ。

 本当に、紳士的だ。

 そう、アマリアは、思っていた。


「彼は、ラセルだ。私のパートナー精霊であり、闇ギルドのサブリーダーだ」


「初めまして。ラセルと申します。火の精霊です」


「アマリアです。よろしくお願いします」


 クライドの隣に立っていた赤い髪の男性は、クライドのパートナー精霊のようだ。

 アマリアは、推測していたが、やはりと言ったところであろう。

 ラセルは、丁寧にお辞儀をする。

 彼と同じ貴族のように見える。

 アマリアも、静かに、頭を下げて、改めて、自己紹介をした。


「警備の方はどうだった?」


「帝国兵がうじゃうじゃいたなぁ。あれじゃあ、ベアトリスの所に行くには、手間がかかりそうだぜ」


「だろうな」


 クライドは、ラストに尋ねる。

 実は、路地裏から街中の様子を探ってもらうように頼んでいたのだ。

 ラスト曰く、街中は、帝国兵が多いらしい。

 もしかしたら、自分達が、潜入した事が、知られてしまったかもしれない。

 となると、ベアトリスがいる宮殿に向かうのは、困難を極めるだろう。

 結界を解くのも、至難の業だ。

 クライドも、同じことを思っていたらしく、ため息をついた。


「奴らは、私を殺すとあれば、何か、仕掛けてくるはずだ。あいつらは、手段を選ばないだろうからな」


「私もそう思う」


 ヴィオレットは、帝国は、手段を選ばないだろうと推測している。 

 なぜなら、四つのエリアを落下させたのだ。

 多くの命を犠牲にして。

 クライドも、同じ事を思っており、うなずいた。


「一刻も早く、帝国を滅ぼしたいところだが、そうも、いかないしな」


「なんとか、ならない?」


 クライドは、早く、帝国を滅ぼしたいらしい。

 そうでなければ、被害が拡大するだけであろう。

 だが、それは、困難を極める。

 多くの帝国兵が警備にあたっているのだから。

 ラストも、その事に関しては、頭を悩ませており、クライドに助けを求めた。


「そうだな。情報屋と元帝国兵が、ここに来るはずだ」


「え?情報屋?元帝国兵?」


「闇ギルドの幹部だ。来たら紹介しよう」


「あ、はい……」


 クライドは、情報屋と元帝国兵がここに来る事を明かす。

 だが、情報屋と元帝国兵とは、誰の事なのだろうか。

 アマリアは、やはり、知らないようで、首を傾げた。

 すると、クライドが、正体を明かす。

 闇ギルドの幹部だと。

 ここに来たら紹介してくれるようだ。

 アマリアは、戸惑いながらも、うなずいた。

 その時だ。

 足音が聞こえてきたかと思えば、ドアが開いたのは。


「はいは~い、戻ってきたよ~」


「ただいま」


 入ってきたのは二人の女性だ。

 一人は、黒髪のショートカットの女性。

 もう一人は、緑の髪のウェーブの女性だ。


「ご苦労様です。アトワナ、キャリー」


「ありがと。あれ?ヴィオレットとラストじゃん。久しぶり~」


「おうおう、久しぶりだな~。アトワナ~」


 ラセルが、二人の女性を出迎える。

 彼女達の名前は、アトワナとキャリーと言うらしい。

 すると、黒髪の女性が、陽気に手を上げた。

 かと思えば、ヴィオレットとラストを目にした途端、二人の元へ駆け寄る。

 ラストも、嬉しそうに手を振った。


「ヴィオレット、大丈夫だった?」


「ああ、問題ない」


「そう」


 緑の女性は、ヴィオレットの元へと歩み寄る。

 心配していたようだ。

 ヴィオレットは、女性の問いに答えると、緑の女性は、安堵していた。


「で、彼女が例の聖女様なんでしょ?」


「し、知ってるんですか?


「そりゃあ、そうでしょ~。あたしら、情報屋だし」


「あ、貴方達が……」


 黒髪の女性は、アマリアの方へと視線を移す。

 アマリアが、聖女だと一目見て、わかったようだ。

 当然であろう。

 彼女達は、情報屋だったのだ。

 正体を聞いたアマリアは、驚き、あっけにとられていた。


「あ、自己紹介まだだったね~。あたしは、アトワナ。人間で、属性は、風。よろしく~」


「私は、キャリー。アトワナのパートナー精霊で、属性は、風」


「よ、よろしくお願いします」


 陽気な黒髪の女性は、自己紹介をする。

 アトワナだと。

 彼女は、人間であり、属性は風のようだ。

 そして、同じ風属性である精霊・キャリーも、自己紹介をした。

 それも、淡々と。

 アトワナとは正反対の性格のようだ。 

 アマリアは、おずおずと、頭を下げた。


「で、あのごつい二人は~?」


「まだ、だが?」


「ごつい?」


 アトワナは、クライドに問いかける。

 ごつい二人とは、一体、誰の事なのだろうか。

 クライドは、まだだと言うが、もしかした、元帝国兵なのだろうか。

 アマリアは、首をかしげるが、ヴィオレット達が、説明する前に、足音が聞こえ、すぐさま、ドアが開いた。


「帰ってきたぞ」


「ただいま、戻った」


 部屋に入ってきたのは、茶髪の男性と黄色の髪の男性だ。 

 しかも、アトワナの言う通り、ごつい。

 ごつい二人とは、彼らの事なのだろう。


「おっ!!きたきた~」


 アトワナは、ごつい二人組の男性を目にした途端、すぐさま、二人に抱き付く。

 しかも、フレンドリーに。


「やっほ~。久しぶり~」


「昨日、会っただろ?」


「え?そうだっけ」


 アトワナは、ごつい二人組に会えて嬉しそうだ。

 だが、精霊の男性は、昨日会ったばっかりだという。

 アトワナは、忘れているのか、または、ごまかしているのか、問いかけた。

 それも、にっと笑いながら。


「アトワナ」


「はいはい」


 あまりにも、馴れ馴れしいアトワナを見たキャリーは、アトワナの襟をつかみ、強引にアトワナを引き寄せる。

 アトワナは、悪びれた様子を見せず、ニコニコとほほ笑んでいた。

 ごつい二人組は、ため息をつく。

 こう言う事は、よくあるようだ。

 その時だ。

 ごつい二人組が、アマリアへと視線を移した途端、目を見開き、瞬きさせたのは。


「あ、貴方は、アマリア様、ですか!?」


「あ、はい」


 ごつい二人組は、アマリアの事を知っているらしい。

 だが、ここに聖女がいるとは、信じられないようで、アマリアに問いかけた。

 アマリアは、戸惑いながらも、答える。

 彼らも、知っているとは、思いもよらなかったのだろう。

 すると、ごつい二人組は、膝をつき、首を垂れた。


「お会いしとうございました」


「まさか、本当に会えるとは」


「もしかして、貴方達は……」


 ごつい二人組は、アマリアに会えたことを喜んでいるようだ。

 それも、静かに。

 二人の反応を目にしたアマリアは、察した。

 彼らが、何者であるかを。


「失礼、自己紹介が遅れました。自分は、ウォーレットと申します。元帝国兵です。属性は地です」


「わ、私は、オルゾと申します。ウォーレットのパートナー精霊で、属性は、地です。私も、元帝国兵です」


 ごつい二人組は、立ち上がり、自己紹介をする。

 それも、礼儀正しく。

 やはり、二人は、元帝国兵のようだ。

 茶髪の男性の名はウォーレットと言うらしい。

 人間であり、地属性の男性のようだ。

 もう一人の男性の名が、オルゾと言うらしい。

 オルゾの同期であり、パートナー精霊でもあり、地属性の男性であった。


「元帝国兵と言う事は……」


「……脱走しました」


「そう、ですか……」


 アマリアは、彼らが元帝国兵だと知り、ある事に気付く。

 帝国兵は、理由がなければ、脱退は不可能だ。

 それも、認められた者は、ごくわずか。

 つまり、元帝国兵と名乗るのは、あまりいないのだ。

 しかも、闇ギルドに所属しているという事は、帝国に刃向おうと考えたという事であろう。

 二人は、脱走者だったのだ。

 ウォーレットが、言いにくそうに答えると、アマリアは、うつむいた。

 脱走するという事は、相当、過酷だったのだろう。

 または、真実を知ってしまったのかもしれない。

 帝国の闇を改めて知ってしまった気がして。


「皆、集まったようだし、そろそろ、本題に入ろうか」


「そうだな」


 クライドは、作戦会議を開こうと話す。

 ヴィオレット達は、うなずき、作戦会議が開かれた。


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