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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第二章 狂気の地のヴァルキュリア
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第二十五話 侵入するためには

 作戦会議が始まり、ヴィオレット達は、それぞれの情報を公開し始めた。


「やはり、宮殿に侵入するのは、今の所、不可能に等しい、か」


 クライドは、頭を抱える。

 宮殿に侵入し、襲撃したかったのだ。

 宮殿には、地のヴァルキュリア・ベアトリスがいる。

 それに、結界の核となっている魔法陣もあるらしい。

 ゆえに、クライドは、迷っていた。

 どうするべきなのか。


「自分が、宮殿あたりを見てきましたが、兵長クラスの者ばかりが、集まっていましたね」


 ウォーレットは、自分が持っている情報を公開する。

 宮殿の警備は、厳重らしい。

 ウォーレット曰く、兵長クラスの者ばかりが、警備しているようだ。

 兵長と言う立場ではないが、それほど、強者どもが集まっているという事であろう。

 元帝国兵のウォーレットが言うのだ。

 間違いないだろう。


「しかも、ヴァルキュリアって、宮殿で待機してるんでしょ?」


「なぜだ?」


 アトワナ曰く、ヴァルキュリア達は、宮殿にて待機しているらしい。

 ヴィオレットが、侵入したというのに、なぜ、待機しているのだろうか。 

 オルゾは、理解できず、アトワナに尋ねた。

 彼女なら、その理由さえも、知っているではないかと察して。


「コーデリアに命じられたから」


「な、なるほど」


 アトワナは、答える。

 女帝・コーデリアが命じたからだと。 

 オルゾは、罠を仕掛けているのではないかと、推測してたため、予想外の答えが返ってきて、驚きを隠せなかった。

 まさか、女帝が、命じたという情報を手に入れられるとは。

 さすが、情報屋と言ったところであろうか。


「地下からの侵入は?」


「あれも駄目だな。警備が厳重だ」


 ヴィオレットは、地下からの侵入なら可能ではないかと、推測する。

 ヴィオレットなら、地下の道を知っているのだろう。

 さすが、ヴァルキュリアと言ったところだ。

 だが、オルゾは、首を横に振る。

 地下の警備も、厳重だったらしい。

 これでは、侵入経路が確保できないままであった。


「これじゃあ、全然、駄目じゃん。どうすりゃいいんだ?」


 ラストは、お手上げ状態だと思ったらしく、困惑しているようだ。

 このままでは、ベアトリスを殺す事も、結界を解くことも、不可能であろう。

 万事休すと言ったところであろうか。

 ヴィオレット達も、方法が見つからず、手詰まり状態であった。


「クライド、ここは、彼女達に頼んだほうがいいかと」


「……仕方がないか」


 ラセルが、意を決したかのように、クライドに提案する。

 「彼女達」に協力を求める事で、方法が、模索できるのではないかと、考えたようだ。

 クライドは、ため息交じりにうなずく。

 何か理由があるようだ。


「彼女達?」


「私の闇ギルドに、所属していないレジスタンスだよ」


「あそこだけ、拒否られたもんね~」


 「彼女達」とはいったい誰なのだろうか。

 ヴィオレットとラストは、知っているようだが、アマリアは、当然、知らないため、尋ねた。

 クライドが、説明する。

 なんと、闇ギルドに所属していないレジスタンスがあるようだ。

 アトワナ曰く、そのレジスタンスだけ、断られてしまったらしい。

 独立は、危険だが、それをあえてするというのだから、よほど、理由があるのだろう。


「けど、聖女を連れてきたと知れば……」


「手を貸す、か」


 キャリーは、今までなら、断っていたが、今回は、アマリアを連れていけば、協力するかもしれないと考えているようだ。

 クライドも、その話を聞いて、考えを改めた。

 確かに、聖女・アマリアがいれば、考えを改めるかもしれない。

 彼女達は、面倒ごとに巻き込まれたくないと言って、断っていたのだから。


「でもさ、依頼とか頼まれそうじゃね?」


「そこは、頼んだぞ」


「やっぱりか……」


 だが、ラストは、懸念している事があるようだ。

 それは、協力する代わりに、依頼を去れるのではないかと。

 クライドも、同じことを思っているようで、ヴィオレットとラストに託した。

 彼女達なら、依頼をこなせるだろうと、信頼しているようだ。

 ラストは、嫌な予感が当たり、げんなりしていたが。


「あいつら、ここにいるっぽいよ~。案外、あんたが、ここにいる事も、知ってるかもね」


「かもしれないな」


 アトワナは、「彼女達」が、このトパーズエリアにいる情報まで、つかんだらしい。

 さすがと言ったところだろう。

 恐れ入る。

 アトワナは、ヴィオレットが、ここに侵入した事を知ったから、来たのではないかと推測しているらしい。

 ヴィオレットも、同じことを思っていたようで、うなずいた。


「では、彼女達に協力を求めよう。アマリア、共に来てくれるかね?」


「は、はい……」


 クライドは、アマリアに確認する。

 アマリアの意思でなければ、意味がないと思っているのだろう。 

 アマリアは、戸惑いながらも、うなずいた。

 彼女の意思を確認したところで、作戦会議は、終了とした。

 明日、アマリアを連れて、「彼女達」の所に行くことを決意して。



 時間が経ち、夜になる。

 アマリアは、廊下を歩いていた。

 逃げるつもりはないと、意思を示したからなのか、監視されなくなったのだ。

 もちろん、アマリアも、逃げるつもりはない。

 帝国の真実を知るために、ヴィオレット達についていくと決意したのだから。


「はぁ……」


 だが、アマリアが、全てを納得しているわけではない。

 特に、ヴァルキュリアを殺すというのだけは、拒絶していた。

 だが、明日、アマリアは、ヴィオレット達と共に、「彼女達」に会うことになっている。

 それは、ベアトリスが、殺される可能性が高くなってしまうのではないだろうか。

 アマリアは、その事を悩んでいたのだ。


「本当に、これでいいのでしょうか……」


 アマリアは、呟く。

 どうしても、答えが見いだせないのだ。

 このままでは、ベアトリスが、死んでしまうのではないかと、恐れて。

 その時であった。

 ラストと遭遇してしまったのは。


「あっれ?聖女サマじゃん」


「ラスト……」


 アマリアと遭遇したラストは、あっけにとられている。

 予想外だったようだ。

 こんなところで、アマリアに出会うとは。

 アマリアは、ラストの名を呼ぶ。

 今まで、拒絶していたが、受け入れた証拠なのかもしれない。

 少しだけだが。

 そのため、アマリアは、再び、歩き始めた。

 ラストを避けるかのように。


「ちょ、どこ行くの?」


「部屋に戻るだけです」


「あっそ」


 ラストは、思わず、アマリアを止めてしまった。

 避けられた気がしたからなのだろう。

 ラストも、驚いている。

 なぜ、引き留めたのか、わからず。

 アマリアは、冷たく、突き放すかのように、答えた。

 ただ、部屋に戻るだけだと。

 ラストは、少しだけ、ムッとした表情を見せた。

 それでも、アマリアは、進もうとしていた。


「まだ、悩んでる?ここにいていいのかって」


「……そうですね」


 ラストは、アマリアに問いかけた。

 見抜いているようだ。 

 アマリアの心情を。 

 アマリアは、なぜか、答えてしまった。

 ラストの事を受け入れたが、心は開いていないはずなのに。


「私は、あの子に、カレン達を殺させたくありません。カレン達にも、死んでほしくない。ヴァルキュリア同士が、殺し合うなんて、あんまりです」


 アマリアは、自分の心情を打ち明ける。

 本当は、嫌なのだ。

 ヴィオレットに、カレン達を殺させたくない。

 カレン達にも、死んでほしくない。

 ヴィオレットにも、生きてほしい。

 だが、ヴァルキュリア同士に、戦いは避けられないだろう。

 なぜなら、ヴィオレットは、裏切りのヴァルキュリアだ。

 いずれ、カレン達も、ヴィオレットを殺しに来る。

 だからこそ、嘆いた。

 あまりに、残酷な運命だと。


「本当、残酷だよな。宝石に選ばれてからって、宿命を背負わされて、最後には、死ぬんだからさ」


「……」


 ラストは、挑発するかのように、語りかける。

 本当に、残酷だと。

 神様に魂を捧げる事は、ヴァルキュリアにとって、誇りだ。

 アマリアも、そう思っていた。

 命を落とす事はわかっていた。

 心が痛んだことは、何度もあったのだ。

 それも、数え切れないほど。

 未だに、割り切ることはできない。

 それをさせてしまっているのは、自分だからだ。

 自分の力で、少女達をヴァルキュリアに覚醒させている。

 彼女達の命を奪っているのは、自分だ。

 アマリアは、反論できなかった。

 ラストの言っている事は、正論なのだから。


「それが、誇りだとは、俺は、思えないね」


「なぜですか?」


 ラストは、魂を神様に捧げる事は、誇りではないと、否定する。

 なぜなのだろうか。

 アマリアは、理解できず、問いかけた。

 彼女達は、世界の為に、命を捧げているというのに。

 魂を神様に捧げる事は、ヴァルキュリア達にとって、誇りであり、唯一の救いだと、アマリアは、自分に言い聞かせてきたのだ。

 だからこそ、理解できなかった。

 彼女達の誇りまでも、踏みにじっている気がして。


「復活する神は、本当に、良い神様なのかって考えた事は?」


「……良い神ではないと?」


「かもしれないな」


 ラストは、彼女達が、捧げている神様が、本当に、良い神様なのかと疑問を抱いているようだ。

 もしかしたら、悪い神様の可能性だってある。

 そう思った事は、本当にないのだろうか。

 もちろん、アマリアはない。

 今まで、盲目的に信じてきたのだ。

 帝国の事も、封印されている神の事も。

 だが、今は違う。

 疑うという事を覚えた。

 ゆえに、ラストに問いかけたが、ラストは、曖昧な返事しかしなかった。

 ラストは、知っている気がしたのだが。

 だからこそ、帝国を滅ぼすと宣言したのではないかと。

 ラストは、そのまま、歩き始める。

 アマリアとは、反対の方向を。

 答えを残してくれなかったのだ。

 ゆえに、アマリアは、悩んだ。


「だとしても、なぜ、殺し合わなければ……」


 アマリアは、拳を握りしめる。

 仮に、封印している神様が、悪い神様だとしよう。

 だとしても、なぜ、ヴァルキュリア同士で、殺し合わなければならないのだろうか。

 アマリアには、理解できなかった。

 食い止めるだけでは、本当に、駄目のなのか。

 手遅れとは、一体、どういう意味なのだろうか。

 アマリアは、思考を巡らせるが、答えは出なかった。



 その日の夜、ヴィオレットは、夢を見る。

 それは、二年前、ルチアを刺した時の事だ。

 しかも、魔剣で。


「っ!!」


 悪夢から目覚めたヴィオレット。

 勢いよく体を起こした。

 だが、全身は、汗をかいている。

 ヴィオレットは、何度も、荒い息を繰り返していた。

 うなされていたのだろう。

 すると、ヴィオレットは、自然と涙を流していた。

 無意識のうちに。


「ごめん、ルチア……」


 ヴィオレットは、ルチアに謝罪する。

 もう、会うことができない彼女に。

 ヴィオレットは、ずっと、後悔していたのだ。

 ルチアを殺してしまった事を。


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