230 油雨、炎柱、そして赤い十二脚
短めです<(_ _)>
「おい、この油、予備はあるか!」
呼びかけにスカイは即座に頷く。
もう目の前には、漆黒のバイコーンが先頭に四頭、後続に紺碧のケルピーが三十余り――異様に青々しい草原を踏み荒らしながら迫っている。
はやる気持ちを抑え、思いきり魔力を込めて油が入った瓶を凶悪な馬群へと放り投げた。
「強襲の暴雨」
刹那、ガラスの瓶は粉々に砕かれ、大量の油の驟雨となり降り注ぐ。命の気配なき草花は、それを弾いて地面に吸い込もうとはしない。
突然現れた潤滑油の池に魔馬たちは激しく転倒し始め、雪崩となって次々に折り重なった。
さきほどの地鳴りが収まり、無数のうめきが交錯する中、叫ぶ。
「火魔法を放て、すぐに離脱するぞ!」
スカイは反射的に詠唱を始め、即座に構築。右手をかざし巨大な火球を放つと、すぐに丘へ向かって走り出した。
次の瞬間、油まみれの馬群は天を突くほどの火柱に覆われた。すぐに風魔法で障壁を作り、半円の背風で熱を押し出すようにしてスカイの後に続く。
頂上までたどり着くと、肩で息をする俺にサラが水筒を差し出した。
「すごいですね、一瞬であれほどいた馬たちを討伐するなんて。さすが、第3師団の団長ですね。咄嗟の機転は常人とはまるで違います」
笑顔を向ける彼女に肩をすくめる。アークが遺跡の中だと教えてくれたからこそ、賭けに出ることができただけだ。
それにスカイの方を称賛すべきだ。あの緊迫した状況で中級ではなく初級の火球を選択した。しかも魔力を膨大に込め、詠唱時間を短縮し威力を増大させて。
いい判断だ。威力よりも時間を優先――そのことを一瞬で理解し、最適な行動を示した。
水筒に口をつけつつ、スカイの行動を評価していると、風が吹き抜け、通気口があることに安堵する。
二王の遺跡でアークたちを散々注意した俺が、同じ過ちを犯すところだった。
呼吸を整え、炎に包まれた魔馬の群れに視線を向ける。吹き付ける風が、焦げた獣脂の匂いを運び、つい眉を下げる。
ふと静まりかけた炎を見ると、そこには深紅の巨躯をさらに赤く染め、周囲の炎を律動的に吸い寄せて呑み込む十二本脚のスレイプニルの姿があった。
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