いざ学園都市へ
今回から短いです。
長くても1万字以内、だいたいこれくらいの文字数を目安にしようかと思います。
あと、こっから大分ノリが軽くなります、はい。
現在の人類生存圏における中央に位置する、学園都市シェラハー。
およそ10万人が住まうその都市は、人口だけで言えば中堅都市といったところ。
だが、その規模はカルローゼ王国の王都よりも更に大きく、住人全てが高い外壁に守られた、非常に防衛力の高い都市になっている。
住人の大半は学園の業務に従事しており、国籍や人種も非常に多様。
魔法神シェラハーの名が付けられたこの都市では、全ての人類を平等に扱う。
たとえ他国の王族であろうが、自由民であろうが、誰かの奴隷であろうが。
全ての人類は平等であり、その存在を悪とする行為こそが悪である、という法の下に成り立っている、稀有な中立都市である。
それゆえに、この都市に住処を求める者は後を絶たないのだが、この都市に住まうには非常に高いハードルが待ち受けている。
一つは税率の高さ。一律税として年に金貨20枚、加えて所得の3割という、一般人にはまず支払えない高額な税金。
一つは要求されるステータス。最低でもC以上のステータスがないと住民になることすら出来ない。ただし、固有能力を所持していればその限りではない。
最後に倫理観。最も低いハードルではあるが、学園の理事との面談をクリアしなければ、住人として認められない。
故にこの都市の住人は、ほぼ裕福な人々で占められている。
だからこそ、若干の矛盾が生じていることに、学園長であるアドルフ=ザワチ=6世は気づいていた。
「今期の入学者は何名だったかな?」
アドルフは人間族であるが、魔人族の血も混じっており、53歳という年齢の割には若い。
若干の白髪は混じっているものの、緋色の長い髪と伸ばした顎鬚は、威厳に溢れる男っぷりである。
「今年の後期は600名です。前期合わせて1200名、今年も定員に達しました」
返事をしたのは理事の一人である、プリシラ=ザワチ。アドルフの娘である。
身内贔屓を抜きにしても整った容姿で、今年で29歳になる才女だが、釣り目でややきつい印象を受ける。
父であるアドルフとしては、嫁として貰い手がないのではないかと心配である。
既に行き遅れ感は否めない。というより、この世界での一般論からすると、手遅れであろう。
「定員通り、か。喜んでいいものかどうか悩ましいね」
「そうですね……前期は早い段階で達したのですが、後期は締切ギリギリまで応募数が達しませんでした」
「やはり、学費を下げねば難しいかね?」
「年間費金貨10枚はこちらとしてもギリギリです。ここ数年、独自の目新しい研究成果も出せておりませんので、他国への技術貸与も芳しくありませんね」
「だからといって研究費を下げては無意味だからね。カルローゼ王国からの技術調査依頼の件くらいなものか」
深くため息を吐くアドルフ。
実のところ、学園都市という機構が生まれてから数十年、生徒数は最盛期で総数1万人にも及ぶ人数が在籍していた。
だが、今の生徒数は、年に1000人強。最大在籍年数が5年であることを踏まえた人数は、4000人にも満たない。
学園は前期・後期で別れて1年に2回生徒を募集する。
その生徒に関しては、出生も身分も問わず、入学金と年間費さえ払えれば入学を認める。
年齢も最低10歳から、というだけで、10歳を超えていれば誰でも可能である。
そのため、最盛期には職員の数が足りなくなり、一定の「定員」を設けることになっていた。
時は過ぎ、前任のケーニッヒ=ザワチ=5世からアドルフの代に移り変わる頃には、入学希望者が最盛期の半分にも満たなくなっていた。
「定員割れ」は学園都市の尊厳に関わる、大きな問題として捉えていた。
過去の栄光に縋っているつもりはない。だが入学してくる生徒はそうではない。
大国の貴族であったり、平民でも大手商会の子であったりと、「学園都市卒業者」という肩書を得るために入学してくる者も少なくない。
だからこそある程度の尊厳は保たれなければならないのだが……。
生徒から得られるインスピレーションは馬鹿にならない。
研究施設でもある学園都市において、生徒数が減少している現状は、栄光の落日を感じさせ、アドルフの気分を落ち込ませる一方である。
そこに、プリシラが一筋の希望を見出す言葉を発した。
「ですが学園長。今年の後期生に面白い入学者がおりました。あの「シャレット代官」のご子息が入学されるそうです」
「シャレット代官のご子息だと!?あのフィナール領のか!」
思わず声を大にして驚くアドルフ。
カルローゼ王国からの技術調査依頼は、イストランド群で行われている農業改革と、産地品の魔道具についてである。
その中身が驚くほど新鮮であり、未知なる技術が使われていることが既に分かっており、その代官であるシャレットには幾度となく冒険者ギルドを通して指名依頼を出していた。
決してその依頼がシャレットに届くことはなく、多忙であろうという理由で、学園に招くことは出来なかったのだが。
本人ではないが、その子息ともなれば、少なからず知識はあるだろう。
どこかの貴族というわけでもない。SSクラス冒険者を両親に持つ、という点は配慮する必要があるが、大きな後ろ盾があるわけでもないだろう。
ともすれば、学園を通して世界に技術を広めることも――。
「ご子息の名前は、ゼン・カノー=レリック。カルローゼ王国では名誉大公として封され、アルバリシア帝国では征西帝の位を預かっておられるとのこと」
「どこの世界に10歳で公と帝が贈られる者がいるというのだ!流石にありえんわ!」
「11歳です。あ、でも爵位と官位を賜ったのは10歳ですから、合ってますね」
何かの冗談だろう、と叫ぶアドルフの反応はごく普通のことである。
それをさらりと受け流すプリシラ。
「なお、婚約者はカルローゼ王国第三王女、リリーナ・シュア=カルローゼ姫。アルバリシア帝国第二席、フラン・ニス=アルバリシア姫。この御二方も同期入学となりました」
「優遇されすぎではないか!?大陸随一の大国の姫を両取りだと!?」
ごく普通の反応である。
オーバーリアクションな気がするのは、ゼンの周囲がおかしいだけである。
少なくとも自由民であるはずのシャレットの息子が、二大国家から最高峰の位を与えられ、直系の姫との婚約を結ばれるはずがないのである。
「また、最近Sクラス冒険者に昇格した、ネリー=チシャも同期入学となりました。最新の<厄災級>討伐者ですね。こちらはアルバリシア帝国で征西将の位にあり、ゼン・カノー=レリックの腹心であるという話です」
「あの「最凶のAクラス冒険者」のネリーのことか!って、後期入学者濃すぎるだろう!」
憂いの表情を浮かべた威厳のある姿はどこへやら。
どうやらこの学園長、突っ込み体質であるらしい。
いや、まったくもって、これが普通の反応である。
プリシラはそんな父の二面性を見つつ、何やら面白いことになりそうだと密かに笑う。
その笑顔がやたらと怖い点が、自分のモテない理由の一つであることを、彼女は知らない。
◆◆◆
「改めまして、リリーナ・シュア=カルローゼです。よろしくお願いしますね、ネリー姉さま」
「妾はフラン・ニス=アルバリシアなのだ!ネリー姉、お世話になるのだ!」
リリーナとフランが示し合わせたように「姉」を強調してネリーへの自己紹介。
いや、俺は何も言ってないよ。マジで。
だからネリーさんこっち見ないで。
「……ええと、リリーナ姫とフラン姫、ですか。そういえばお話するのは初めて、ですか」
「そうなのだ。機会はあったのだが、時間が取れなかったのだ。フランと呼んで欲しいのだ!」
「学園内ではネリー姉さまを頼るように、と言われております。リリーナとお呼びください」
困惑顔のネリーを見て若干ニヤけてしまう。あまりにも好意的な挨拶に戸惑っているのだろう。
どういうことですかと目で訴えてくるが、【思考対話】を使ったりしない。
本当に俺は二人にどう言えとか、そんなことは言ってない。
ただ仲良くやってくれとだけは伝えたし、実際仲良くやってくれないと困る。
「というわけで、学園では頼んだぞ、ネリー」
「何がどういうわけか全く分かりませんが」
え?いや、だってさ。
「一応学園ってのは入寮せにゃいかんのだろ?だったら俺が二人の面倒を見るわけにはいかないじゃないか。女子寮までは流石に入れんし。それに部屋割りもまず間違いなく、一緒になるだろ」
そう、学園都市はまず生徒を寮に入れる制度がある。
といっても、全寮制というわけではないのだが、同期生は一年間の同室が義務付けられている。人数は特例を除き4名。
見知らぬ相手に円滑なコミュニケーションを取れるように、という制度らしいが、ここで躓く生徒も結構多いらしい。
もっとも普通に過ごせていれば、滅多なことではこの単位は落とさないようだが。
学園都市シェラハーにおける入学案内を読んだ結果、どうも大学のようなシステムらしい。
最低在籍期間は3年。この間に少なくとも6つの単位を取得しなければ、「退学」と見なされる。
最終的に5年間で10単位。これが卒業の目安になる。目安はあくまで目安であり、もっと早い段階で卒業することの方が多いそうだ。
これはそれほど厳しい数字ではなくて、例に挙げると「文官クラス」というコースがある。
このコースを受講する者を一括して「クラス」とするそうだが、入学時にこのクラスを希望していれば、それに応じたカリキュラムが設定され、それに沿えば10単位分は確実だという。
無論それなりに試験やら実技やら研究やら、クリアしなければならない課題もあるのだが、まともにカリキュラムをこなせればまあ大丈夫、とユーリから聞いた。
「そういえばゼン様は何のクラスなの?」
「俺は選んでない。色々やりたいと思ってるからな」
「それはずるいのだ!ずーるーいーのーだー!」
リリーナの疑問に軽く答えたが、クラスは選ばなくても問題ない。自力で取りたい単位のものを選んでもいいのだ。
ついでにクラスを希望していても、他の単位だって取ろうと思えば取れる。ただ半端になると単位が取れないので、そこは自己責任ということになるが。
リリーナとフランは王族ということもあり、「特権階級クラス」という、いかにもなコースを選んでいる、というより選ばされたそうな。
こればかりは仕方ないと二人は諦めていたが、他の単位も取る気でいるらしい。向上心があって良いことだ。
フランがかなり嫌がっているが、俺も特権階級クラスなんて入りたくもない。堅苦しいことばかり押し付けられそうな気がする。
「受ける単位が決まったら教えてねー。なるべくゼン様と一緒がいい!」
「そうなのだ!せめて取る単位くらい同じにせねば、ゼンと学園生活を送ったなどと言えぬのだ!」
「そりゃごもっとも。まぁ、いくつかは決めてあるけどな」
リリーナもフランも、俺が同じクラスを選ばなかったのは不満らしいが、一番不満なのはネリーだろう。
「何故私も「特権階級クラス」なのか、理解に苦しみますが……。少なくとも私が入るならば、ゼン様もそうするべきなのでは?」
「確かに俺は二つの国から高位を預かってるし、その通りなんだけどな。そこに時間を取られると、俺としては困るわけで」
そう、ネリーにもリリーナ達と同じカリキュラムを受けさせることになっている。
理由はいくつかあるのだが、一つはリリーナとフランの護衛役を兼ねることになっているから。
個人的には絶対不要だろうと思うのだが、ヴィーからは消極的に、ソルからは是非にとお願いされてしまった。
実はそれがメインの理由ではなく、俺なりの青写真があってこそのチョイスだったりする。
「それで、本音はどうなのです?」
「面倒くさい」
「妾らとてそうなのだぞ!!」
いやだから時間足りないんだって。面倒なのはマジだけど、俺には不要なものだ。
それから、前述した「共同生活」というのも一つの単位らしく、これは自分以外の3人からの評価も査定に含まれるようだ。
一年一緒に住むだけで単位1つ。俺と彼女たちが同室になれば余裕だが、絶対にそれはない。
当たり前だが、男女は別の寮だ。ちなみに一年過ぎたらあとはどこから通おうが勝手らしい。
この制度、俺にとっては少々痛い。週末は休みらしいのでそこは問題ないのだが、平日にイストランド群に戻ることが難しいことになりそうだ。
まあマリスに【思考対話】で相談するのがせいぜいか。
ネリーはまだ納得していないのか、不満げに聞いてくる。てかまあ、絶対納得は出来んだろうけど、そこは折り合いをつけて頂きたい。
「部屋割りが一緒だと確信されているようですが、何故ですか?」
「入学案内一緒に見たじゃないか。部屋割りはステータスの総合順なんだろ?だったらネリーとリリーナとフランは確実に同じ部屋だって。あと一人がちょっと可哀そうな気もするけど、同じクラスで同じ部屋が三人。心強いやん?」
「まあ、どことも知れぬ者よりはマシですが」
入学の際にはステータスボードの開示が求められる。
あとは上から順に同じ部屋になるらしい。
ま、入寮っつっても4LDKとかある部屋らしいけどな。日本だったら10万コース物件だろ。
それはともかく、エルのステータスボードを見せれば、どう考えても女性部門はトップスリーが確定してる。
ついでに俺の男性部門一位も確定の予感。
「問題は特例のことだけどな。首席は一人部屋だって話だし」
「それはゼン様で決まりなんじゃないの?」
「フランかネリー、ってことも有り得るが?」
「それはないのだ。ゼンが持っている固有能力の数を考えれば、ゼンで決まりなのだ」
「そうなのか?まぁ、知らんうちに20個くらいあるけど」
「私も3つ得ちゃったし、フランちゃんも3つ持ってるんだっけ?ネリー姉さまは?」
答えていいのか?と俺に目線を振ってきたので、頷いておく。
「4つですね」
「流石はネリー姉なのだ!」
フランに褒められ満更でもない様子。これなら打ち解けるのも早そうだ。
計 画 通 り。
ちなみに俺の固有能力は「分かっている範囲で」これだけある。
【成長促進】、【成長指導】、【工程短縮】、【健康体】、【空間魔法】、【精霊魔法】、【召喚魔法】、【擬態】、【鼓舞】、【激励】、【闘気】、【契約】、【記憶】、【回想】、【絶倫】、【必中】、【電子工学】、【機関作成】、【通信科学】、【魔科学】、【魔眼】、【半魔眼】、【精神統一】、【探知】、【交渉】。
まあなんだ。もう固有能力っていうか固有能力って感じがする。
もう有難みも何もありゃしない。しかも明らかに使えないものも混じってるし。
【魔眼】と【半魔眼】の両方を得たせいか知らんけど、最近瞳の色が安定しないんだよな。ちょっと鏡を見たら、左の目がなんかこげ茶色になってたりするし。
救いはどちらもアクティブだってこと。封印するつもりでいれば、ちゃんと黒目のままでいられる。
問題は【?】、みたいな不明スキルがあること、しかも結構ある。
これについては唯一能力とかもまだ不明だったりするし、最近また不明なやつが増えたりしてるし、気にしたら負けだと思ってる。
切っ掛けは洗礼で間違いない。一応それぞれの効果も確認したが、実践出来なかったり、こちらでは明らかに役に立ちそうにないものもある。
この中でルビ付き、即ちこの世界で知られているスキルは、【工程短縮】、【擬態】、【鼓舞】、【闘気】、【契約】、【絶倫】、【魔眼】、【半魔眼】、【探知】。
何故【絶倫】だけ英語じゃないのかと思ったが、転生者が持ってたんじゃないかと適当に推測。他にもあるかもな。
ちなみに特殊能力については開示は求められていない。
何故なら特殊能力は世界のバランスブレーカーになり得るスキルだから、というのがこの世界の認識だからだ。
故に本来はフランの【無限成長】も本来は漏らすべきではないのだが、アルバリシア帝国の判断で喧伝しているという。
ま、強さの証明になるらしいからね。国として王族が所持しているのは喜ばしいんだろう。
正直、ちょっとスキルが増えすぎて、俺としては困っている。
あまり出来ることが多すぎるのも考え物だ、という意味で。
「そろそろ学園都市に到着します。皆様ステータスボードのご用意を」
言い忘れていたが、今は学園都市に向かって馬車で移動中である。
ちなみにこの馬車の作り手は俺。アルバリシア帝国の国旗とカルローゼ王国の国旗が両サイドにデザインされ、後部に一応俺の家紋?らしきものを付けてある。
俺の家紋は所謂竜胆紋。流石に源義経の笹竜胆は採用せず、竜胆花蝶と呼ばれる三日月型を採用した。
一応シツネの子孫ってことになっているので、竜胆紋は採用せざるを得なかった。この世界には馴染みのない形だし、被ったりはしないと思う。
御者はカルローゼ王国のレイラと、アルバリシア帝国のノリス。
レイラは騎士だから分からなくもないが、軍人で今や将軍位を得ているノリスが御者というのはいかがなものかと思ったが、俺の短期的措置が効いて今は比較的時間があるらしい。
それにしても馬車は遅い。馬車自体はオーバーテクノロジーで作ってあるから、ほとんど揺れもないし、【空間魔法】で見た目以上にスペースがあるから快適なんだが、いかんせん馬が遅い。
これでも十分早いことは理解しているが、最寄りのカルローゼ王国領から出発して3日経ってようやくだ。
まあ、その間に女性陣は随分と打ち解けたみたいだし、結果的には良かったかもしれない。
ちょいちょいネリーの言葉遣いも素が出てたし、やはりお姉さん的ポジションに憧れがあったのかもしれない。
野営の際に、俺を除いて3人で内緒話をしていたことは気になった。俺に結界を張らせて俺に聞かせないようにするほどで、内容がとても気になったのだが、知らない方がいいこともあるだろう。
「王都より大きいねー」
「近くに鉱山もあるのだ、壁の外は畑だらけなのだな」
「ゼン様の領地ほどではないにゃ。あんまり量は取れそうにないにゃね」
「イストランド群は俺の領地ってわけじゃないんだが……見たことのない作物は多いな。鉱山もはっきりしたことは分からんが、そこそこ埋蔵量はありそうだ」
ちなみに埋蔵量云々は【探知】で調べた結果だ。
どうも人工的な鉱山になっている気がする。もしかしたら学園都市の技術で作り出したのか、あるいは単純に鉱石を埋めたのか。
埋蔵量も多いが、採れそうな鉱石の種類が多すぎる。
帝都アルバニアほどではないが、デカく作られた門の前に到着すると、門番らしき人物からステータスボードの開示が求められたので、俺たちは順々にステータスボードを提出する。
門番が真っ青な顔、というよりもはや蒼白の表情になっているが、そんなもん知らん。
「通っていいか?」
「は、はいい!」
慌てて門番が大手門を開くと、そこには非常に煌びやかな光景が並んでいた。
何しろ建っている建物は全て二階建て以上、それも一軒辺りの面積が非常に広い。
中には悪趣味な成金趣味の家もあるが、総じてファンタジーな光景と言えるだろう。
非常に治安は良いらしく、見渡す限りでは外壁近くの家が多少見劣りするかな?といった程度だ。
ここからは馬車の乗り入れが不可だというので、歩いて中央部に向かう。一応人力車みたいなタクシーもどきはそこらにいるが、利用するつもりはない。
観光が趣味とも言える俺が、この都市を見て回らないわけがないし、ネリー達も物珍しそうに周囲を見回している。
物価も気になるし、ちょっとだけ見て回ってから、学園中央部に向かうとするか。
◆◆
「収穫はあったが……高いな」
「そうだねー。王都で買えそうなものでも、相場の倍近いかも」
「しかもそんなに美味しくもなかったにゃ」
「武器の類も質は良かったのだが、ゼンから貰った槍には遠く及ばぬのだ」
「生活用品はそれなりに充実してたけどな。それでも一般の人にはちょっと手が出ないだろうけど」
「イストランド群で生産した方が安上がりにゃ。ゼン様なら仕組みはすぐ分かったんじゃにゃいのかにゃ?」
「つーかあれよりマシなモン、仕組みを把握するまでもなく作れるけどな。ま、無くてもさほど問題ないし、暇になったら作ってみるか」
一通り、といっても大通りにある店の冷やかしくらいしかしてないが、総じて物価は高かった。
フィナール領の2倍から3倍はあっただろう。
品質は悪くはなかったが……良く言ってもイストランド産の水準よりやや下程度だ。
見たことのない作物もいくつか購入してみたのだが、解析した結果、どう考えても大量生産は難しそうなものばかりだった。
正直に言って、今のところは期待外れだ。
だがまあ、それはこれから入学してから改善していけばいい話。
都合上長くはいられないにせよ、ここで知識を広め、技術提供をしてやれば、少なくとも「東部」については改善されて行くはず。
利権やら何やらで煩い連中はいるかもしれない。
でもね、俺の前世は何年生きたと思う?
更には転生を繰り返してきた記憶も戻ってきたわけで。
人生経験の豊富さは数世紀分くらいあるわけですよ。
スキルだって使う。もう開示してしまっていることだし、ここで俺の名を上げさせてもらう。
交渉や説得に役立つスキルも相当ある。使いこなせるかどうかはまだよく分からんが、使えるものは使う。
それが俺の目的に繋がるわけだからな。
スキル紹介コーナー
【鼓舞】
アクティブスキル
対象の意欲、思考能力、精神状態を向上させる。
この効果範囲は所持者の精神力に依存する。
この効果で上昇する値は、所持者の精神力と意思によって変動する。




