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転生者は創造神  作者: 柾木竜昌
第四章 青年期 ~学園編~
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洗礼(2)

いきなりですが、若干アレな描写が入ります。

 ギースの館が目の前に見えたところで、俺はネリーとの演武を切り上げ、【神威】を切る。


 なんつーか、ごめんとしか言いようがない。ほら、ギースの表情も引き攣ってるし。

 いやね、俺なりに盛り上げようとしたわけよ。なんか御輿乗ってたらさ、盛り上げなきゃいかんと思うわけよ。

 それにさ、ほら、結構上手かったっしょ?ホウセン直伝の演武だぜ?本当は剣同士でやるらしいけど、ネリーとやるならこうなるわけよ。

 上手くアレンジ出来たと思うんだよね。ね?


 なんて誰に言い訳をするわけでもなく、やらかした感満載。

 もうやっちゃったものは仕方ないので、ここはひとつすっきりした表情で。


「些か、無理があるかと」


 ですよね。ネリーにそう小声で言われてしまった。

 誰かこの空気を何とかしてくれ、ギースがいたたまれない。

 観客についてはどうしようもないので放置をすることにして、とにかくギースに手筈通りやってもらわねば。

 って俺、手順について何も聞いてなかったわ。どないしよ。

 ギースが何か言おうとして、顔を上げて、苦い顔をして、顔を下げる。それを繰り返しているうちに、御輿が止まった。

 ……降りるしかないんだけどどうしよう。何か口上でも述べるべきなのかなコレ。


「フィナール伯よ、どうしたのだ?貴族の洗礼ならばカルローゼ王国には手順があったと思うのだが」


 空気を読まない娘がいてくれたー!

 てかフランなんでここにいるの?

 つうかさ、あれだ……ちょっと見ない間にまた成長したねぇ……ああ、いかん、いかん……くっそ。


 白状しよう。

 ちょっと前までは「いいな」くらいにしか思ってなかったんだ。

 でもな、最近衝動が激しいのよ。ぶっちゃけたところ、下の話な。

 いつからか、唐突に、だ。

 だからこそネリーに反応したり、色々と成長著しいフランを見て欲情したりするわけ。

 こんな状況でも理性を抑えるのがキビシイ。

 幸いにもどこかで冷静な回路が働いてるからか、アレがエレクチオンすることはない。ないったらない。


 本当にないんだよォォ!!


 だからイライラする。

 不能ってことはないだろうと思いたい。

 いやこんなところでアレがアレだったらドン引きだと思うけど、年齢の割にはアレだし。アレが多くてすまんな。


 理由付けは出来なくもない。

 ちょっと前からどうも「背が伸びている」気がしたのだが、実際ネリーに確認したところ、確かに成長しているという。

 およそ一年前に多少縮んだ分、元に戻ってきたのかと思ったが、それよりも背が伸びている。

 一次成長期の頃は、赤ちゃんから子供まであっという間だったこともあるし、活動時間も短かった。それに子供は成長が早いもんだって思ってたし。

 問題はそのまま七年近く成長が止まっていたことと、人の成長に加わる一つの要素。青少年ならではの問題。


 つまるところ、性的なことだ。

 使えるか使えないかだ!


 こんな場面で考えることじゃない?

 まったくもってそう思う。

 しかし、こんな場面でこんなことを考えざるをえないほど、抑制が難しい。本当に難しい。

 サリアに散々揶揄われたことも要因の一つなのだろうか?いや、多分あまり関係ない。

 んでもって深刻なのは、要は頭の中は大変ムラムラしているわけだけども、体の方は反応しないこと。

 厳密には反応しかかっているのだが……どうも、その辺り精神と肉体がリンクしていないというか。ぶっちゃけた話、まだ「精通」した気配がない。

 それでも反応くらいはしそうなもんだが、よく考えたら今まで一度もそれらしき様子がなかった。

 恐らくは二次成長期、いやもう二次性徴と言っちゃっていいと思うけど、そこを経て改善されるのだろう。


 てか、してください。


 男として、俺の本能として、かなりしんどいです。マジで。

 子供だからまだ早いとか、そういう言い訳も通じないくらい、しんどいんです。精神的に。


 だから。


 ありがとうフラン、微妙な空気を流してくれるきっかけを作ってくれて。

 ありがとうネリー、背中を押して館に進むように伝えてくれて。

 そしてすまんギース。お前の言っていること、全然聞いてなくて本当にすまん。

 俺が葛藤してる間に口上が終わっていたとか、全く気付かなかったよ……。


 青少年なら、必死に考え事をして抑えるとか、よくあるよね?



◆◆



 馬鹿な事を考えているうちに十分落ち着けたようだ。

 いずれ慣れるだろうけど、やばいと思ったらいきなりだからな。若さゆえ致し方なし。

 しかしはたから見てどう見えていたのだろうか、なるべく動揺は出さないようにしているつもりだったが、あまり自信がない。さっきもネリーに聞いてないことはバレてたみたいだし。

 ……忘れよう。


 さて、今から洗礼の儀に入るらしく、エルが正装?で俺を迎えてくれた。

 なんで?マークが付くのかというと。


「なんで巫女服?確かに儀式的なものではあるだろうけど」


 恰好がそっくりそのまま巫女さんだったから。

 確かにエルは普段着物っぽい服装をしてることが多いけど、巫女装束までされると流石に違和感がある。

 外国人がコスプレしてるみたいな……似合ってない、ってことはないんだけど。

 エルもそれほど着慣れていないのだろう、どうにもやりにくそうに見える。


「その巫女服とはこれのことかえ?わしもようわからんのじゃが、ギース殿がのう」


「エル殿はハイエルフ。ともすれば、かつての伝承に沿い、勇者シツネ様の奥方様が、神事においてお召しになられたという装束を用意したのだが……巫女服というのか?」


 源義経の嫁さんといえば、静御前になるわけだが……。

 一度死んで、転生先で再会したというのなら、随分ロマンチックな話だと思う。

 もしかしたら何か文献が残っているのかもしれない。

 いずれ探してみるのもいいかもしれないが、そうなると静御前はハイエルフだった、と。

 なるほど、黒髪のエルフがエルフ族の中で伝説になろうものだ。ついでに俺を女扱いしたがるのもよく分かった。


「こっちでは神官とかそういうものになるのかな。神に仕える娘のことを巫女という。その装束がそれ。俺の前世ではそこまで神聖なものという印象は薄かったけど、勇者シツネが生きてた頃は神聖だったかもな」


 ただし、俺の知ってる歴史上の「巫女」というのは、必ずしも神聖だったとは限らない。

 神楽を舞ったり、神卸しをしたり、という巫女もいれば、所謂「歩き巫女」という遊女的な存在も巫女といえる。

 かの武田信玄が運用していたとされているのが後者らしい。

 もっとも、正当な巫女であれば神聖なものであるというのは正しいし、後者も必要な建前とでも言うべきか、何と言うか。

 現代ではコスプレ衣装的な使われ方もするので、微妙に思えるのは単純に俺が邪すぎるのだろう。

 静御前のエピソードから考えるに、シツネに神楽舞を贈ったとか、そんな感じの伝説なのかな。

 何かしらの役に立つかもしれないから、調べてみてもいいかも。


「洗礼には直接関係ないんだろ?パレードも終わったし、観客もいるけど……長々とする必要はないでしょ?」


 洗礼の儀に立ち会うのは、領主であるギースと洗礼者であるエル以外に、父さん・母さんの二人。

 それから立会人として何故か来ているのが、イアン、リリーナの王国兄妹と、マリス、フランの帝国姉妹だ。


「非公式の訪問だけど、レリック公の洗礼ともなれば、ね。事後で申し訳ない」


「一応まだ他国の身で、この場に立ち会うのもどうか、とも思ったのですが」


 イアンとマリスが恐縮そうに言ってくるが、今更気にすることでもない。

 てかあれだろ、リリーナとフランが見に来たかったってのが本音だろ?


「別に構わんよ。それに、カルローゼ王国にだけ俺の情報を渡すのはどうかと思ってたし、非公式だろうが何だろうが、アルバリシア帝国としても洗礼結果を持ち帰るといいよ」


 ひらひらと手を振ると、応じたようにリリーナとフランがこっちに笑顔で手を振ってくる。

 いや、そういう意味で手を振ったわけじゃないんだけど。まあいいか。


「ではエル殿、準備はよろしいか?」


 ギースが開始の確認をするが、俺手順知らないんだって。


「うむ。されど、そげな時間はかからんぞえ?わしの【人物鑑定(チェッカー)】はすぐ終わるでな。舞いを披露しながら鑑定せぇちゅうたが」


「そんなもんエルなら必要ないでしょ。多分すぐ、かどうかは分からんけど、魔法の類でないことは知ってるし」


 神界で【解析】をステータスボードに写した経験からすると、多分エルの【人物鑑定】も同じ仕様だと思われる。

 洗礼っていうくらいだから、普通祈りとかそういうものくらいは捧げたりするものかもしれないが、ここにいるのは俺の関係者ばかりだし。

 ちょっとばかりギースが残念そうというか、「鑑定がすぐに終わるのか……」と戦慄気味だったが。


「では、私からよろしいでしょうか?」


 一歩進み出たのは、俺の斜め後ろにいたネリー。彼女のいつものポジションである。

 「職業」とやらがどう決まるかは、概ね想像が付いている。

 ただし、洗礼でどう決まるのかはよく分からないので、様子見を兼ねてネリーを先にお願いしようとは思ってた。

 俺の予想では、そんなに特殊なことにはならないと思うんだが……いや、どうだろう?本当に特殊じゃないのか?


「じゃてまあ、宣言くらいは正式な口上でせにゃあの。簡略口上じゃがな。『今ここに、ネリー=チシャを導く、資質と才を知る術を与える』」


 口上に微妙な違和感を感じたな。もしかしたら特別な言語が使われたかもしれない。

 チカリ、と、一瞬光った気がした。

 エルとネリーは動かない。

 いや、エルは何か固まっているような気がする。ネリーは何かを考え込んでいるような……。

 ちょっと間が持たず、近くにいたリリーナに【思考対話(テレフォン)】で聞いてみることにする。


(なあリリーナ、アレどうなってんだ?)


(多分職業を選んでるんじゃないかな?普通は一人一つだし、一番資質が高いものが勝手に選ばれるんだけど、「ダブル」の人なんかは、たまに職業が複数候補として現れるみたい)


 なるほど、ネリーならそれは十分あり得るな。


 ……あれ?何か、まずいような気がしてきた。


 えっと、俺が知ってる限りでは、父さんはシングルからダブルになって、最近トリプルになってたよな。母さんは元々ダブルで、今はトリプルだった。

 となると、個人差はありそうだけど、パラメータの数値で職業の数って決まるんじゃないか?

 ってことは、ネリーの場合いくつになるんだ?

 それ次第では俺って大変なことになったりしない?制限とか、あるよね?

 いや、ちょっと待てよ?確か俺の【完全解析】の隣にそれらしき表記があったような……。


 やがて五分は経っただろうか、ネリーが小声で「決めました」と呟いた。

 その情報が伝わったことでステータスボードの作成が完了したのか、エルが疲れたように板――木の板ではなく、銀板――を掲げた。


「いやいや、凄まじいのう……『ネリー=チシャの資質と才、ここに示した。彼の者の行く道に、光あらんことを願う』」


 まずはネリーの手に渡り、それを一読した彼女は、一つ首を捻りつつ、まず俺に渡してきた。

 あれ?リアクションがなんか微妙だな。

 というか本来なら本人の次は領主のギースに渡すんじゃないの?国に提出する情報でもあるんだから。

とは思ったが、ギースも空気を読んだのか、そこは黙認してくれるようだ。

 とりあえずそのステータスボードを見てみると、このように書かれていた。


 名前 ネリー=チシャ

 年齢 17歳

 種族 獣人種亜猫神 <ハイビースト>

 職業 獣王/超越者<剛腕・羅刹・暗殺者・格闘者>

 格位:王級

 筋力:SSS+

器用さ:SSS+

素早さ:SSS+

 魔力:SSS+

精神力:SSS+

スキル:【不明】【咆哮】【闘気】【隠蔽】【直感】


 成長率の表記がないな。エルが気を利かしてくれたのかどうかは分からんが。

 その代わり、俺が知ってるステータスボードとは表記が違う部分がある。

 スキルの【不明】、これは【百獣王化】のことだろう。魔法の[人物鑑定]だと特殊能力(エクストラスキル)まで表記されてた筈だから、完全に上位互換ってわけじゃないんだな。てか何か追加されてるけどここはスルーで。

 その代わりパラメータが「SSS+」とある。本来ならSより上も計れるってことなんだろうが、それでも上限値っぽいんだよな。


 まあ、突っ込みどころはそこじゃないってのは分かってる。

 まず種族。猫人族じゃなくなってますやん。亜猫神になってるし。半分神族ですやん?

 これ既に種族を超えてませんかね?もう獣人種っていう枠から外した方がいいんじゃないっすかね。

 ハイビーストというのもハイエルフと同じ類だろう。だが、ビーストマン、というのが正しいのではなかろうか。よくわからんな。


 それから職業が6つ。3つでトリプルという名付けなのだから、セクスタプルとでも呼べばいいのだろうか。

 しかもどう考えても固有職業(ユニークジョブ)というか、特殊職業(エクストラジョブ)みたいな表記がある。

 てっきり汎用能力(スキル)だけで決まると思っていたが、ちょっと安易すぎたか。

 そういやいつかの【完全解析】では(クアドラプル)って表記になってたな……。あれ、俺どうだったっけ……。


 しかしなあ、これどうしよう。

 エルにやってもらった以上、今俺が改竄するわけにもいかないし。

 ネリーが首を傾げるのも納得だ。職業の数については選んでいたんだから知っているだろうけど、まさか種族まで変わるとは思っていなかっただろう。

 まだ俺とエル以外は知らないことなので、言葉にする前に【思考対話】で確認する。


(この職業はネリーが選んだんだよな?)


(そうですね。知っている職業もありましたが、聞いたこともない職業の方が多かったです。数は確認してませんが、50~60はあったかと)


(これを見る限り、メイン2つにサブ4つ、みたいな感じがするんだが)


(よくわかりません。そういう意識をして選んだつもりはありませんでした)


 ふむ……基本的に、母さんは「賢王」というのが職業だし、父さんは「槍聖」だ。

 ここは汎用能力(スキル)レベル次第の部分であるというのは多分間違いない、ネリーの職業にも格闘者があるし。

 となると、もっとも効果が高いものがメインの職業としてチョイスされるとか、そういうことだろうか?


(少し確認する)


 一応断ってからネリーに【完全解析】を試みると、パラメータの数字が軒並み上昇していた。他にも見逃せない点があったのだが、それは置いておく。

 昨日見た数字から変化しているところを見ると間違いなく職業の影響だろう。ただ……。


(一応ステータスは向上してるけど、実感出来る程じゃなさそうだな)


(そうですね。ゼン様のご加護の足元にも及びません。ほんの心持ち、といったところです)


 職業を得たネリーのステータスは確かに上がっていた。軒並み30以上、大きいところでは50ほど数値が上がっていた。

 普通の人なら50近くステータスが上昇すれば、ランクが1つ変わるくらいの違いになるのだろうが、今のネリーにとっては大したことではないだろう。

 ぶっちゃけ誤差レベルである。

 この感覚はこの世界の人には分からんだろうなぁ。


(ちなみにネリーは数ある職業からこの6つを選んだんだよな?理由は?)


(ご相談すべきでしたでしょうか?申し訳ございません。「獣王」以外は何となく、としか申し上げられないのですが……)


(いや、そこはいいよ。ネリーらしい職業だと思うし、ネリーの直感は十分理由になり得るくらい俺も信じられるからな。獣王を選んだのは、ネリーの憧れか?)


(若輩の身には過ぎたる職業のような気もしたのですが……こう、私の内にある何かが、と言いますか、恐らく百獣王(ライガス)が……)


 【百獣王化】の影響か。何となく理解出来る話ではある。

 一度見せてもらったのだが、俺の【大魔鬼化】と比べてかなり理性的というか、ちょっとだけ野生化したネリー、という印象だった。

 見た目は結構変わるけど、それでも大本はネリーであって、俺の大魔鬼(デビモス)とは大分違う感じ。

 本来の変身系スキルについてもいくらか聞きかじったし、【天上書庫】でも調べてみたが、俺の【大魔鬼化】がイレギュラーすぎるんだろう。

 強烈なスキルなだけに、変身の元になる人格だとか、性格だとか、その辺りが本人にも及んでいる可能性は高いとみるべきだ。


 とりあえず一旦確認は終了し、洗礼の儀を進めることにする。

 つっても、ここからどうすればいいのか分からないので、ギースに聞く以外ないんだが。


「ギース、これを確認するのは俺が最初で良かったんかな?」


「本来ならば両親に、というのが手筋なのだがな。ネリー殿ならばゾーク殿かシャレット殿になるのだろうが、レリック家の臣ともなれば、主君であるゼンが最初でも問題あるまい」


 両親というワードに引っかかりを覚え、父さんや母さんの顔を見てみると、母さんが少し眉を歪めている。

 ギースは事情を知らなかったのだろうし、ネリーも特に反応がないところを見ると、本人に思うところはないようだが。

 実際のところ、ネリーの両親については俺も詳しく知らない。反応を見るに、母さんは何かしら知ってる様子ではあるが……。

 昔、ネリーを最初に解析した時に知った情報では、存命ではあるような気がする。

 だけど実際、ネリーは随分早い段階で、もう親離れしているというか、かなり割り切った思考をしているようだし、大きな問題ではないのだろう。

 てか売られた両親についていい思いが持てるか、って話でもあるわな。そのうち聞くとしても、俺も深くは考えまい。


「そうか。ならこれ、次はギースに渡せばいいか?」


 一応ネリーに目線をやると、頷きが返ってきた。問題なし、と。

 ただコレ、ちゃんと正式なものになるのかなあ。

 そんな疑問を持ちつつギースに銀のステータスボードを手渡したわけだが、案の定というか、ピキッとでも擬音がなったようにこちらも固まってしまった。

 てかこれは【人物鑑定】の評価値基準をはっきりしておかないと駄目だろう。

 というわけで、エルの口から少しばかり補足してもらう。


「一般的にステータスは「S」が最大なのじゃがの、わしのスキルではそれが最大でないでなぁ。そも、Sちゅうても、上から下までなんぼでもおろう。今まで見て来た中にゃ、S+やらSSちゅうのも見たことあるでな。じゃが、SSSちゅうのはそうおらん。その上でSSS+ともなれば、わしの力では計り切れんちゅうことになるでな。わしが見て来た中では……3人目、かの」


 そう告げたエルの視線の先は、俺とフランに向けられていた。

 なるほどね。俺は当然として、フランにもパラメータにSSS+という評価があったんだろうな。

 リリーナも軽く人間やめちゃってるが、フランはネリーに近いレベルで人外級だし。

 となると、エルの計れるパラメータの上限値は、999とかそのくらいだろう。1000以上がSSS+だとすれば、リリーナはあの頃そこまで行ってなかったし、辻褄は合いそうだ。


「種族についてものう。これも恐らくはゼンのせいじゃろうて、わしゃ達観しとるでな」


 そうだろうあ。これも一つの「進化」なんだろうけども。

 てか何故俺のせいになってるし。いや、事実その通りなんだけど。


「しかしのう、格位の割には……」


「それ以上いけない」


 エルが余計なことを言いそうになっていたので、慌てて静止する。

 格位というのはまず間違いなくレベルのことだと思う。

 17歳で王級というのは恐らくかなり高い部類に入るのだろうが、それでもSSS+というのは高すぎるのだろう。

 一部のパラメータは俺の眷属だから、ということで何とか説明は付くのだが、元々素質が低かった筈の魔力まで人外突破しているのは流石におかしい。


 実のところ、すんなりローレを鍛えることに了解した理由の一つが、この「俺が絡んだ人物は劇的にステータスが伸びる」事案の対策である。

 今回のネリーは勿論のこと、リリーナもフランも大幅に……というか、普通のステータスボードなら「オールS」になっているわけで。

 となると、どうやったって俺に絡んでくる奴が出てくるだろう。ステータスボードは己の力量を示す、非常に分かりやすい手段だからだ。

 無論、【変化之理】を乱発するつもりはない。俺だけにちょっかいかけてくるならどうとでもなるが、その周りにまで手が伸びると、厄介極まりない。

 もっとも、そういった輩から守るために、こちらも諜報を強化しているわけだが。


「俺が関わっていることは否定しないけど、ネリーの研鑽があってこそだ。格位以外にもステータスに響いてくることはあるだろう。今回の職業も多分そうだろうし」


「そりゃまあ、そうじゃが……」


 エルの胡乱な瞳の視線が痛い。

 だが俺には【変化之理】以外にも、他人の成長を高めるスキルは持っている。最悪そっちで誤魔化す。

 あくまで数値が分かるのは俺だけで、S+やSSという力量が、どれほど一般的な「S」と差があるかはハッキリと分からないはずだ。

 エルの【人物鑑定】について、詳細の確認を怠ったのは俺の失態ではあるが、エルが洗礼者になることが分かったのが前日だったのだから、手の施しようもなかったと、諦めるほかあるまい。


 しかし困った。エルの【人物鑑定】は魔法のそれより優れているということは確実だが、基準が分からんだろう。

 ましてやいきなりの最大値(リミットオーバー)。これでは比較しようがない。

 そこでまだ固まっているギースを一旦視線から外し、イアンとマリスに提案してみる。


「リリーナとフランの洗礼って、もうじきなんだろ?どうもエルのスキルだと【無限成長】とかの一部スキルが分からないみたいだけど、それ以外は魔法のそれより優れものみたいだし、二人の洗礼もエルにさせてやってくれないか?」


「それは……カルローゼ王国としては、願ってもないことだけど、いいのかい?」


 先に反応したのはイアン。

 どうも望外の提案だったようだが、願ってもないことって何だ?


「そりゃあ始祖エルフ族のハイエルフに洗礼をしてもらうわけだからね。僕たちカルローゼ王国の王族は、シツネ・ミナモの末裔なわけで、それにあやかるという意味では願ってもない話なんだよ」


「ああ、伝説がどうとかって、そういう話でもあったのか」


「勇者シツネはハイエルフである妻シズカの洗礼を受けたと言われるからね」


 なんかそれを聞くと、エルよりむしろ俺が洗礼者になった方がいい気がしなくもない。

 男女が逆さまになっちゃうけど、俺も一応ハイエルフだし、黒髪だし。

 けどまぁ、俺は始祖エルフ族ではないからな。体面を考えるとやっぱエルの方がいいか。


「ならリリーナの時はそうしよう。フランの方はどうだろう?」


「私の一存では何とも。お父様に相談してみますわ。ですが、リリーナ王女がそうなれば、やはりこちらも、ということにはなるかと思われます」


 それはそうだろうな。

 カルローゼ王国の王女として、絶滅されたとされる始祖エルフ族のハイエルフから洗礼を受けたとなれば、アルバリシア帝国としても、ということになるだろう。

 確か微妙にフランの方が生まれが遅かったような気がするし、時期をずらしてやれば問題ないか。


「そういや王族のステータスボードって一般的に公表されるものなのか?洗礼の儀はそれなりの規模でやりそうではあるけど」


「カルローゼ王国では一般に公表されることはないよ。あくまで身内だけに公表して……あとは公然の秘密、ってところかな」


「帝国では公表されますわ。ただし、スキルについては非公開です。こちらも公然の秘密、といったところでしょうか」


 両国らしいのスタンスの回答が返ってきたが、公然の秘密なのは変わらんのな。

 少なくともある程度知られるものであり、それを正式に認めることはしないってことか。


「エル、フィナール領の特使として、頼めるか?出来れば、他に何人かステータスボードを作ってやってくれ。それから、後で父さんや母さんのステータスボードの更新をして、情報提供してやるべきだと思う。いいかな?」


 最後の言葉は両親に向けてだ。

 詳細なステータスは俺の【完全解析】で知っているから、あとは本人がそれを周囲に見せるのを良しとするか、なんだが。


「問題ないわ。隠すよりも知られた方がいいこともあるでしょうし」


「だな。ネリーに比べりゃ大したもんでもねぇだろうが、後になって面倒事になるよかマシだろうぜ」


 快く賛同してくれた両親に感謝。

 エルも同意してくれたが、一人で行くのは、ということだったので、ネリーに護衛を頼むことにする。

 俺が行ってもいいが、洗礼結果次第ではまたややこしいことになりそうな気がしたので、とりあえず、ということで。


 さて、いい加減先に進めないことには洗礼の儀が終わらないので、ギースに[鎮静]とごく微小な[電撃]をかける。

 落ち着くだけじゃ進みそうにないからな、軽いショックを与えることにしてみた。

 身体をビクっと震わせ、ハッとした表情を取り戻したところを見ると、どうやら成功したようだ。


「驚くのは分からんでもないけど、俺の洗礼はまだ終わってないんだよ。ネリーの洗礼はこれで終わりってことでいいのか?」


「あ、う、うむ……あまりのことに動転してしまっていた、というより今でも動揺しているのだが……これを情報として国に提供していいものかどうか、悩んでいる。非公式とはいえ立会人がいる以上、ここでも発表せねばならんのだが……」


「それは俺の洗礼が終わってからにしよう。多分俺の方がいくらか時間がかかるだろうし」


「……そう、だな。ネリー殿でコレだ。ゼンはもっと異常な結果であろうし、今以上に驚くことになるだろう……が、それは今更というものだろうか」


 逆に落ち着けるやもしれぬ、とわけわからん理屈を述べるギース。

 そりゃあれか、俺はもう化け物だっていう認識してるからか。

 まあ、うん、自覚はあるけど。


次話でゼンの洗礼話は終わり。

幕間を2つくらい挟んで学園入りかな?

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