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転生者は創造神  作者: 柾木竜昌
第二章 幼年期 ~鬼才の片鱗編~
19/84

名前を呼んで

若干短いようです、申し訳ない。

 速攻何やらバレた気がするが、特に騒いでいる、という雰囲気はなかった。

 ただ一人ははしゃいでいたような感じがしたけども。

 まあ何はともあれ、今すぐどこかへ連れて行かれたりとかはしないみたいだ。

 最悪【念話】で語りかけるという手段はあるんだが、聞くことが出来ない以上一方通行だ。

 しばらくは赤ちゃんプレイを楽しむことにする。


 断っておくが、そういう性癖ではない。断じてノーマルである。


 流石にこの身体では何か行動できることもなく、ひたすら起きて寝るということを繰り返した。

 ただ何やら話しかけてるときは、なるべく聞くようにしたし、発声練習も忘れない。まあ「だー」とか「あー」とか言うのが精一杯なわけだが。

 起きている間は色々と観察を心がけているものの、そんなに簡単に器官が成長するはずもなく。

 どうも【完全解析】はしっかり姿を捉えていないと発動しきれない感じだ。

 一応試し続けてはいるのだが、発動することは今のところない。


 完全に忘れていたことなのだが、寝るというのはとても心地よいものである。


 母体にいる時も寝てたとは思うのだが、実際に母体から出て肉体を持つと、「寝る」という行為がとても気持ちいい。

 精神体でいた時期がどの程度だったのかというのは、神々の時計感覚を信じて考えるのであれば、およそ4年程度だろう。

 ただし、眠らない・夜が無い・疲れない、という要素があるので、時間感覚については非常に曖昧なままだ。

 とはいえ地上はちゃんと昼夜の概念があるので、少なくとも一日が過ぎたかどうかくらいは分かるのだが。

 ぶっちゃけ赤ちゃんの時くらいは寝られるだけ寝ていたいというのもある。


 あと、純粋に眠いのだ。

 肉体が幼いというのはこういうものなのだろうか、寝る子は育つって言うし、まあいいか。



 生後から3ヶ月くらい経っただろうか。

 まだぼんやりとはしているが、メガネでもあればもうちょっと見えるんじゃね?というレベルまで視覚は成長したようだ。

 流石に赤子の感覚なんぞ分からんので、これが早いのか遅いのかは不明だ。

 【完全解析】はまだ成功しないが、一つ朗報がある。


 どうやら俺のことを知る精霊が集まってきたようだ。


 いるかもしれない、と思って、観察を続けていると、少しずつそれが形に見え出してきたのだ。

 誰もいない時に、【念話)】を送ってみたが、返事はまだない。

 ただ反応があるようには見えるので、そのうち話せるようになるだろう。



◆◆◆



 ゼン様が産まれてから4ヶ月が経ちました。

 とても賢い子です、さすがシャレット様だと思います。

 失礼ながら御主人様(ゾーク)のお子様とは思えません。



「俺の子は俺の子だ。鑑定士が来た時はそれで済ませるつもりだ」

「そうね、私の子だもの。隠し事の一つや二つ、誰にだってあるでしょ」


 先祖返りであることを喜んだのは私だけだったようですが、お二人は割と冷静だったと思います。

 もっとも、「カノー」というのは初めて聞きました。

 先祖返りはステータスに名前のあとに称名(ミドルネーム)が付きます。

 ゼン様は「ゼン・カノー」と[鑑定]されたことから、先祖返りであることは確定です。

 王族や貴族のように家名があるわけではありませんので、これは間違いありません。

 シャレット様が確認された内容でも、とても優秀なお子様のようです。


 特に精神力については、生後まもなくで表示されたのはD。今の私と同じレベルです。

 私くらいの年齢の時には、少なくともBくらいにはなっているのではないでしょうか?とても期待してしまいます。

 魔力だけは並のようですが、私も魔力は高くありません。魔法もあまり使えませんし。

 その代わり他は軒並み優秀です、きっと強い戦士に育つのではないでしょうか。



「ゼン様は落ち着いていらっしゃいますね」

「あぅ」


 ゼン様は首を振りながら答えてきます。

 最近はこちらの言うことが随分分かってきていらっしゃるようです。

 混血種なので成長も早いのでしょうか?


 見た目はほとんど人間ですが、人間族としては成長が早すぎる気もします。

 鬼人族の角はありませんが、体格はかなりしっかりしてらっしゃいます。

 気になるのは、ご両親とは全く関係のない黒目黒髪であること。

 「カノー」の先祖返りである影響なのでしょうか?

 それが珍しい、というわけではありませんが。


「近いうちにお父様もお母様もお帰りになられますよ。ネリーにばかり面倒を見させてすまないって言われちゃいました。ゼン様はとてもいい子ですからネリーは幸せですよ」

「あぅん」


 ゼン様の返事も種類が増えてきた気がします。

 語りかけると、肯定か否定かの意思が伝わってきます。頷いたり首を振ったりしながら返してこられます。

 やはり言葉が理解出来てきているのでしょう。


 私には密かな野望があります。

 それは、ゾーク様やシャレット様より、先に名前を呼んでもらうこと。

 ゼン様のおそばにいる時間は、私が一番長いのです。これくらいは許されるでしょう。

 ですから、自分の名前がネリーであることは、ずっとアピールしています。


「ネリーはゼン様に名前を呼ばれるのを楽しみにしていますよ。それでは洗濯に行きますので、ゆっくりお休みください」



◆◆◆



 思ったより言葉を聞き取れるようになったのは早かった。

 ネリーが言っていることは大体分かったので、「ネリー」という発音について、こっそり練習してみる。

 実際一つの言葉を練習し続けたほうが早いのだ。


「ねぃ」


 誰もいなくなった部屋で、さりげなく発声練習をしながら、【念話】で精霊と会話を試みる。

 思念自体は伝わってきているし、姿も「妖精」っぽく見えてきている。

 あと少し、という感じなのだ。


「ぇり」


 妖精とのコミュニケーションが取れるようになれば、情報源が広がるのではないかと思う。

 思考するだけというのも案外退屈なのだ。

 【念話】は対象が見えているかどうか、というのは条件ではないのだが、特定の誰かに使用するには結構強いイメージが必要のようだ。


「えり」


 お、今のはいい感じだ。

 ネリーの希望を叶えてあげられるかもしれない。

 「父さん」とか「母さん」とかも練習はしている。


「ねり」


 よし、相当いいぞ。このまま練習する。


「ねりぃ」


「今呼びましたかぁぁぁぁぁぁぁ!」


 相当それっぽい、と思わしき発声をしたところで、ネリーがかっとんで帰って来た。ドタドタするわけでもなく、NINJAのように足音も立てずに。何者だこの娘。

 実際のところ、どう見ても獣人なんだよな。

 猫耳を付けているのは分かるので、耳がいいのかもしれない、偏見だけど。

 でも聴力良すぎるだろ。何か用があって別に呼んだわけじゃねえよ、練習してただけだって。


「もっかい!もっかい呼んで!」

「ねいぃ」


 口調がぶっ壊れたネリーに若干引いてしまった。


「もうちょっと!がんばれ!できる!やれる!」などと言っている。


 コイツホントにネリーか?


「ねりぃ」

「惜しい!もう一声!」


 今ほとんど合ってたと思うんだが?


「本気でやれば絶対できる、もっとポジティブに!」などと言っている、お前大丈夫か?

 だがこれでも不満か、ならば今一度。


「ねりー」

「もう一回、もう一回!」


 精密さを求めすぎだろ!

 少なくとも俺には「ネリー」と聞こえたんだが?

 ネリーは「やれば出来るぜったいできるできるんだからがんばれがんばれ」とかどっかで聞いたフレーズを俺に語り続けている。


 これあかんやつや、発声出来なかったら離れんパターンや。

 仕方ない、頑張る。


「ネリー」


「はにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


 渾身の力を込めて抱きかかえられてしまった。

 苦しいから、死んじゃうから、マジで!タップタップ!

 頬ずりしてくるネリー。そんなに嬉しかったか、うん、よく分かった。分かったから。

 ぺしぺしとネリーを叩いてみるが、頬ずりが止まらない。

 マジで、ギブギブギブ!


「ネリー!」

「にゃぁぁぁぁぁぁ!」


 あ、やばい、オチるかもしんない。

 この体でオチたら死ぬかもしれん。仕方ない、実力行使だ。

 即興で土法術の術式を起動させると、小さな石を作り出してネリーの頭に当ててみた。


「に゛ゃっ!」


 ごめん。術式発動速度が速すぎて、逆に制御しそこなったわ。

 石もデカけりゃ当たり所も悪かった、痛かっただろうな。脳天直撃だった。

 なんか妙な感じもしたけど、魔力量が減った気もしない、はて?



「い、今のはまさか魔法ですかにゃ?ゼン様ですかにゃ!?」

「あぅ」


 魔法がどうかと問われると、魔法ではない。

 俺がやったのかと問われると、俺である。

 答えにくい問いをしてくるので、言葉だけではどうにも返事がし辛い。


 てかそろそろ離せ、苦しい。


 手足をバタバタさせると、ようやく状況を飲み込めたらしい。

 俺も答えたいんだけど、まだ言葉だけで説明出来るほど声帯が成長してねえんだわ。


「うー」


 両手をネリーの前で上下させて、落ち着くように伝えてみる。

 なんかめっちゃ耳がひくひくしてる。


「だー」

「だめにゃぁぁぁぁ!我慢できないにゃぁぁぁ!」


 これアカンパターンや、ループ確定やでぇ。


 仕方ないのでもう一度石をぶつけてみる、正直ちょっと息が苦しいねん、意識が遠いねん。

 だが止まらないのである。「すごいにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」とか言って頬ずりが加速しているレベルだ。

 このままだと本気で死ぬかもしれんので、【精霊魔法(かぜまほうもどき)】を使う。

 正直加減が難しいが……よし、精霊の力は借りられた。もう物理的にぶっ飛ばそうそうしようやばい酸欠だ。


「うぅー!」

「はにゃー!」


 想定していた威力ではなかったが、ネリーを壁まで吹っ飛ばすことに成功した。


 ついでに俺は床に落下した、後頭部打った。

 クッソ痛ぇ、別の意味でオチたわ。


 だがまあこの程度のダメージならば死にはしない。普通の赤子なら死んでてもおかしくはない気がするくらい痛かったが。

 クラクラする頭を何とか回復させてネリーを見ると、壁に若干めり込んでる。

 こっちの方がやばいかもしれん。


「うぅぅ……しゅごいれぇす……」


 大丈夫だな、ほっとこう。

 でも回復してまたループとかになったらどうしよう。

 床の上を転がりながら、少しばかりやらかした気持ちになった。

 魔術の説明とか求められたらどうしたものか……。



「ゼン様は魔法が使えるのにゃ?」

(それが素か)


 結局、またしてもループしかけたので、やむを得ず【念話】を使用した。

 さっきからこれ以上ない距離で顔を見ているせいか、対象にすることが出来たようで、「にゃんにゃにょにゃ!」とテンパるネリーを見れた。


 カミカミでかわいい。

 じゃなくて、【念話】まで発声が拙かったらどうしようと思ったが、明確に言葉を伝えられるようだ。


(とりあえず、驚きはしないんだな)

「【念話(テレパシー)】持ちということは知ってたのにゃ!……知ってました」

(別に訂正せんでもよろしい、どちらかというと素の方がかわいい)

「ゼン様はケモニャーにゃ?」

(そんな概念がある時代背景に今疑問を持ったところだ)


 否定はしないがな!


 はっきり視覚出来たネリーは、とても可愛いケモノっ娘なのだ。

 本当に猫っぽい釣り目をした、赤目が愛くるしい少女だ。

 猫人族らしいけど、耳がある以外はただそれだけだ、俺の知ってる人間とそう大した違いはない。

 10歳くらいに見えるが、見た目と年齢が一致しないのがこの世界だと思っているので、あくまで推定だ。

 素が出なければ、とても賢い少女だし、実年齢はもう少し上だったりするかもしれない。


「7歳にゃ!」

(マジで!てかよく分かったな!)

「ちょっとだけ思考が漏れてるにゃ!」

(マジで!?)


 まさかの下方向だった。

 やはりアテにならん世界だ。

 ちなみに【完全解析】は無理だった、全体像見えなきゃこっちはダメなのかよ。

 そして【念話】中は他のこと考えたらアカン、話しかけるつもりとの使い分けはやっぱ難しい。


「ゼン様は落ち着いた方だと思ってたにゃ、意外と愉快な人だったにゃ」


 失礼な、愉快な人というのはお前のような奴を指すのだ。


「伝わってるにゃよ?」

(お前が鋭すぎるんじゃね?)


 今のは絶対漏れてなかったって!


「確かに猫人族は鋭いにゃ、でも思考ダダ漏れで読めるというわけではにゃーよ?ゼン様が悪いにゃ」

(納得はせんが、そういうことにしておこう)


「今こうして話しかけてもらってるけど、どうして今までしなかったにゃ?」

(しなかったってこともあるし、できなかったってこともあるんだよ、説明しにくいんだが)

「じゃあネリーはお話これからできるにゃ?」

(まあ多分出来るだろう、ただいつもこうして話しかけると思うなよ?)

「どうしてにゃ?お話出来る方が退屈しにゃいにゃ」


 それはそうだが、「あうー」と、わざと発声してから思念を飛ばす。


(喋る練習しねえと、いつまで経っても喋れないだろ?)

「【念話(テレパシー)】でいつも話しかければいいにゃ!」


 ある意味いい発想をしている。

 ただいくらなんでもこれで全部済ますってワケにはいかんだろう。あまり多数の人数に知られてもそれはそれで困るのだ。

 精霊と話をつけるようにとか言われるかもしれんし。


(まあ、固有能力(ユニークスキル)持ちは色々あるだろう。あんまし言いふらすものでもないだろ?)

「確かにそうにゃ、シャレット様もそうだったにゃ」


 シャレット、というのは俺の母親のことだよな。

 ネリーは「お父様」と「お母様」と呼んでたから、確かそうだった気がする、くらいだが。


 実際あまり「お父様」と「お母様」には会ってない。

 ここ1月くらい会ってない気がする。

 放任って感じはしないが……仕事が忙しいのかもしれない。


「で、魔法使えるにゃ?しかもありえにゃい気がするにゃよ?」


 うーん、この問いは困るんだよな。

 【精霊魔法】は魔術か魔法かと言われれば、術式を無視して使ってるわけだから、カテゴリするなら魔法だ。

 ただ精霊の力を借りて魔力を代用しているわけで、単純に魔法とも言い難い、というのが魔術神(ヴァニス)の見解だ。

 それに【精霊魔法】は【擬態】で隠している固有能力(ユニークスキル)でもあるしなあ。

 単純に「魔法」が使えるかというと……。


(魔法が使えるかと言えば、使えないと答えよう)


 こう答えるしかない。

 俺が学んだのは「魔術」であり「魔法」は使えなかったのだ。魔術神(ヴァニス)はそのうち使えるようになるかもしれないと言っていたが、どうだろうか。

 いわゆる簡単な「火魔法」と「水魔法」くらいなら使えるかもしれない、化学式を突き詰めればイメージしてイケるかもしれない。

 ただ「土魔法」や「風魔法」は難易度が高そうなのだ。「雷魔法」の方がまだ芽がありそうな気がする。


「でも魔法としか思えにゃいのにゃ?石はそうでもにゃいけど、風はすごかったにゃ。そもそもゼン様は詠唱してにゃいにゃ?」


 何か致命的に食い違ってる気がしてならん。

 詠唱?なんぞそれ。

 ヴァニスが[鑑定]をしてた時にぼそぼそ言ってたが、もしかしてアレのことだろうか。


(そもそも魔術を使うのに詠唱なんかいらんだろ)


 そう伝えると、胡乱気な瞳でまじまじと見つめてきた。


「魔術って、何にゃ?」



 拝啓 魔術神(ヴァニス)さま。

 魔術が存在しないっぽいんですけど、どういうことでせうか?

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