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10 神父の悩み

食堂の事件から一週間が経過した。

今、僕たちは実践訓練の為にダンジョンのある町、『カスタム』に来ていた。


一週間は、本当にいろいろな事があった。

まずは、クラスメイトの実情。

一人ひとりのステータスを連携とかの為に確認する時があったが、慎太よりも強いステータスを持っている人はいなかった。

つまり、僕と慎太がクラスメイトの中で一番ステータスが高いということだった。


最高じゃないか。

これまで僕を見下してきた人が、一気に格下の存在になるという現実。

どっからどう考えても、最高の気分。


歓喜する心の中を押し殺して表に出さないようにするのが一苦労するぐらいだった。

僕らにはない特殊能力を持っているクラスメイトも何人かいたが、それでも僕らに対人訓練で勝てた人はいなかった。


もちろん、一週間の間にいろいろ訓練して分かった事もあった。

最初は、『魔法痛』。

魔法は体内から強制的に出した魔力を使って出す。

だが、それにはある程度のリスクという物があったのだ。


作用があれば、反作用もある。

硬い物を思いっきり殴れば、手の甲が痛いし、少し柔らかい物でも、殴り続ければ後で筋肉痛という物で帰ってくる。

これは魔法でも言えるらしく、強力な魔法を使ったり、弱い魔法でも体の許容範囲を超える魔法を使ったら全身が筋肉痛の様な状態になるそうだ。MPが残っていてもなる事があるそうだから恐ろしい。

全身が痛むのは全身に魔力回路という物があるから、それを伝わって痛みというか痺れの様な物が伝わるという理論と僕は聞いた。

ちなみに、魔法痛で訓練中にダウンした人はクラスメイトの中で5人ぐらいだった。


次に、職業。

この欄は、とある神殿で設定する事ができるそうだ。もちろん、僕らはそこに連れて行かれた。

ある程度制限はある選択肢から選べる様で一人ひとりが自分にあったのを適当に選んでいた。


仕組みは、神殿の神官が職業を変える人の血を垂らした水晶を使うとある程度の選択肢が出るらしく、そこから自由に選ぶのだそうだ。

普通の人がやると、選択肢は10個ぐらい出るそうだ。だが、僕が挑むと選択肢は二つしか出なかった。

ウソだろと思いながらも、出た選択肢を見ると、『闇の勇者』『?????』の二つで、片方は完全にバグっていた。

もちろん、悩みに悩んだが結果的に僕はまだ希望のある『?????』の方を選んだ。


希望と共に絶望したのは言うまでもない。


最後に、レベル、ステータス。

これは魔物を倒したりしたら、その魔物の魔力が体内に入り込み身体が強化されるそうだ。それを数値であらわしたのがステータス。

そして、レベルはその人の現在の成長限界までの目安だそうだ。100でその人は限界まで強化されたという事で、称えられるような物らしい。

簡単にまとめると、レベルが低くてステータスが高いと相当強くなる見込みがあるという事だそうだ。

僕も訓練の時にいろいろ頑張りまくった結果、レベルも上がり、ステータスもだいぶ上昇した。

もちろん、やったぜと喜んだ。


さらには魔神薬と体神薬をもう一つづつヒェライさんが私有財産として持っている事をヒェライさん自身が言ってきて、私が持っていても宝の持ち腐れだから、もし必要なら使ってくれと言って僕に託してくれた。

こういうのは、もらったからには使わないといけないかなと思い、僕はヒェライさんにもし何かあったら頼んだ状態でその薬を一本ずつ飲み干した。

最初に飲んだのはピンク色の体神薬で、飲んだ後は体が燃えるように熱くなったが前の時ほどひどくは無く、気絶する事は無かった。

魔神薬の方を飲んだか、体が引き裂かれるかと思う痛みが襲ったが、同じように前よりは酷くは無く、気絶もしなかった。

あの時は痛かったな……


ちなみに、現在のステータスはこうなっている。


==================================

天竜 ソラ 16歳 男 レベル:3

種族:人間(勇者)

職業:?????

称号:限界を超越した勇者


HP:50000/50000

MP:50000/50000


筋力:150

体力:1000

耐性:150

敏捷:150

魔力:900

魔防:900

技能:基本全属性魔法適性Lv.3、闇魔法適性Lv.MAX(+自動反撃Lv.MAX)(+死魔法Lv.6)(+武器付与Lv.7)、自動魔力回復Lv.MAX、魔法複合、限界超越、危険察知、『暴食』、言語自動翻訳(聴覚のみ)

==================================


見たままの、恐るべき成長率だ。

なぜか分からないけど、新しい技能まで増えているというおまけ付きだ。


あと、謎の地下通路で発見した本の謎もある程度は解明できた。

その本は暴食の書というらしく、僕が左手に宿していたのもその一つだそうだ。だれに聞いても、暴食の書というものを知っている人はおらず、得た知識は、左手に宿している実物から手に入れたものだ。


たしか、暴食といったら七つの大罪の一つだったはずだ。

一ページ目を開いたところには、早速七つの欄があり、暴食と書かれている欄と、??と表示されている欄が一つ。そして、まっさらな欄が残りを占めていた。


そして、この本の能力は完全に理解した。暴食という名前の通りに、何かを取り込んで力にするという物だ。

夜に、間違えてステータスプレートを上に置いたら霧の様に消えて取り込まれてしまったのだ。

馬鹿な失敗をしたと嘆いたものだが、開いてみると空白のページばっかりだった所に自分のステータスが事細かく記載されていたという事があったのだ。

不思議に思って、部屋の本を上に置いてみるとそれも取り込まれていった。ページを開くと、そこには自分の持っていた技能が一つずつ解説されていた。しかも、日本語で。

ここから僕が推測したのは、この本は技能についての解説書だったという事だ。


もちろん、取り込まれてしまったステータスプレートは、無くしたと偽って、軽く怒られながらも、ヒェライさんから新しいのを貰って使っている。

あと、図書館からも何冊か本を貰って取りこんである。入れたのは、職業辞書、魔物辞書、基本魔法陣の一覧だ。

さすがに、これ以上はもらえなかったが、相当重宝している。


そんなこんなで、いろいろありながらも一週間が過ぎ、実践となるダンジョン攻略へと漕ぎ着いたのだ。

本当にどうでもいいことだが、食堂事件はなぜだか僕のせいとなっているらしい。まぁ、別に何かが変わるわけでもないので無視しているが、心なしか王様や偉い人の態度が僕に対して冷たかった。

逆に、慎太に対しては相当良い待遇を受けているらしい。まぁ、僕らを引っ張る力があるし、乗せられやすいからおだてて手綱を握ろうというところだろう。

ちなみに、慎太のステータスも上昇している。


==================================

正上 慎太 16歳 男 レベル:4

種族:人間(勇者)

職業:英雄

称号:栄光の勇者


HP:500/500

MP:500/500


筋力:200

体力:200

耐性:200

敏捷:200

魔力:200

魔防:200

技能:基本全属性魔法適性Lv.4、光魔法適性Lv.9(+浄化Lv.1)(+武器付与Lv.2)、自動魔力回復Lv.6、魔法複合、限界超越、言語自動翻訳(聴覚のみ)

==================================


派生技能も少しばかり増えているし、全体的には僕よりも上回っていると思う。

まぁ、実践では僕が勝つと思うけど。


いつもより軽めの訓練を終え食事をとり、僕は部屋に戻る。

僕らの為に貸し切り状態となった宿屋の一室で、ここもなかなかの豪華さを誇っていると思う。

たいして疲れていないが、明日からは少しだけど命の危険がある可能性がある。


明日のスケジュールは、昼飯を持った状態でダンジョンに挑むだけだ。

ダンジョンは、魔物の巣窟で冒険者とかがよく挑む場所だと聞いた。何層かに分かれていて、いまだに最奥までは調べつくされてはいないようだ。現在の攻略階層は70階だそうで、そこから特殊な能力を持つ魔物がわんさかでて攻略が難航しているという話だ。

明日の攻略は、一階の完全探索と、ボスの撃破。

一応、30階と60階にゲートという名のワープ装置がダンジョンには設置されているそうだが、いきなり30階は厳しいという配慮から1階から順繰りに攻略していくという流れを踏むことになっている。


思考を一度止めて、僕はベットに飛び込んだ。


……寝れない。

疲れていないとはいえ、睡魔という物がまったく襲ってこない状況にいらいらする。


「はぁ……やるしかないか……」


僕はベットに飛び込んだ状態の体を動かして、まだまだ元気な状態の足を使って地面に立つ。

そのまま、ベットの横に立てかけられている黒い鞘の剣を持つ。ずっしりとした感覚と共に、心地よい鞘の冷たさが手の平を伝わって頭にとんでくる。

この剣の名前は、『魔剣ヘルシャァ』。禍々しいフォルムに、闇魔法を強化する力を持つ名前の通りの悪堕ちした勇者が持ちそうな剣だ。これを使っているとどう見ても悪者に見えるかなと思いながらも、僕は気に行っている。


慎太は、『聖剣ジャスティス』という、そのまんま勇者の剣という感じの剣を国からもらっている。僕の魔剣と同じように光魔法を強化する力を持っていて慎太にぴったりな剣だと自分でも思う。


とりあえず、宿屋の外にある庭に出て魔剣を鞘から抜く。黒く鈍く輝く剣を見て、背中にゾクリとした感覚を抱きながらも構えて素振りを始める。

剣には既に魔法陣がいくつか刻んであり、魔法の練習もしてある。魔法が今のところ上達しているので筋力を上げる方に集中するべきだろうと考えた結果だ。


「ふぅ!とりゃ!」


体力が体神薬のおかげで相当上昇しているから、疲れもあまり出ずに振ることができる。この地道な訓練でも、ほんの少しずつ筋力が上がっていく事がステータスプレートで確認できるので、俄然やる気が出る。

腕の筋肉が遠心力で引っ張られ、少しずつ強くなるような感覚が出てくる。


「とりあえず、もう少し難易度を上げるべきかな」


僕は体の中の新しくできた回路の様な物を圧迫して、手の先に送り込む『イメージ』を頭の中で起こす。

そのまま、魔力を魔法陣に注ぎながら……


「ここに万物を飲み込む漆黒の闇の力を生み出し、剣の元に集わせ万物を切り裂く剣を生み出せ。破壊の波を巻き起こせ、『漆黒剣』」


手から魔法陣に流し込まれた魔力が黒く輝き、僕が握る剣に黒い霧がかかる。

『武器付与』の能力……漆黒剣。漆黒の霧を操り、時には剣をさらに硬く鋭くし、時には大剣のように大きくし、時には斧の様な感じにし、時には剣を振る事で霧を飛ばして射線上の物を切り裂くことまでできる。

俗に言う万能の能力という物だ。代償と言ったら、霧を飛ばすと、魔力を補充しないと魔法の効果が下がる事と、武器を動かすと共に霧をまとわせるという『イメージ』を常に頭の中に置かなければいけないというところだろう。


「ふっ!ふっ!」


僕は頭の中でイメージを抱きながら剣を振り続ける。

剣の形の霧が歪んだりすることなくしっかりと剣を覆う事ができているのは、訓練の成果というべきか。最初のころは全くと言っていいほどうまく扱えずに霧が飛んで行ってしまっていた。

このまま……あと100回!


頭の中でカウントをしながら、僕は一心不乱に剣を振り続ける。

だが、そこに声が飛びかかって来た。


「あれ?ソラ君ですか?」


そう、ヒェライさんだ。突然かかって来た声に、驚いてしまい霧がまっすぐ飛んで行って木の枝を何本か切断する。


「あ……邪魔してしまいましたか」

「いえ、僕が気が付かなかっただけです」


一週間の間にも、ヒェライさんとの仲は良くなり今では勇者様からソラ君へと呼び名も変わっている。


「それにしても、珍しいですね。ヒェライさんはしっかり寝るような人だと思っていましたが」


純粋な疑問をそのまま僕はぶつけてみる。


「いや……少しばかり考えごとをしていて寝れなかったんですよ……まぁ、ソラ君も同じですか?」

「そんなところですね、ちょっとばかり明日の事が気になって……」


だが、僕が明日の事を口にした瞬間、ヒェライさんの表情が少しばかり暗くなる。

なにか、心配事でもあるのだろうか。

そう思って、僕はヒェライさんに問いかけた。


「何か、あったんですか?」

「いや……なんでもない……と言いたいのですがね……」

「人生相談なら聞きますよ?」

「御冗談を。まだまだ子供でしょうに」


いつものように僕はジョークを飛ばして、少しだけ元気を回復させる。まずは、話すような場所を作らないと何も始まらない。


「まぁ、あなたになら話しても大丈夫でしょうか……」

「誰にも言いませんし、大丈夫ですよ」


僕は胸をドンと叩き、安心安全をアピールする。ヒェライさんにはいろいろと助けてもらったし、それぐらいの願いは余裕だ。


「最近悩んでいるんですよ……神を信じて本当に良いのか……」

「え……」


想像以上の重い内容に、僕は戸惑ってしまう。もう少し、ゆったりとした物が来ると思ったのに。神官が神を疑ってしまうような事態は相当大変だろう。


「まだ、大人にもなっていない子供を他の場所から強制的に連れてきて、強い能力を与えて戦わせる。いくらなんでも、やりすぎという感じが否めないですし、死のリスクがあるところに強いからという理由で未来がまだまだある若者を突っ込ませるんですよ」

「確かにそう考えると、これを起こした神は悪者みたいですよね……」


ヒェライさんの論は正しい。確かに正しい。

だけど……


「神という物だって……本当に存在するかもわかりませんし……」

「……え!?」


僕が思い浮かべた事と全く一緒の事をヒェライさんが言う。

神官が神の存在まで疑ってしまうという事態も重要だが、ヒェライさんの真剣な表情にすべてがかき消されてしまう。

ここでかけるべきであろう言葉は……


「まぁ、いなくてもいいんじゃないですか?」

「え……」


ぽかんとした表情のヒェライさん。


「神が存在するとは限らないし、勇者召喚も誰かに助けてほしいと思った人と、どこか変わったところに行きたいという人の願いが綺麗に合わさった結果、世界の法則がねじ曲がって転送されただけっていうのもあり得ますし」


神の手が介入したのではないかもしれない。ただ、現象として発生したものかもしれない。これはあくまでもたとえだという事は分かっている。


「でも、神がいると信じる事で心が楽になる人もいる。生きる目的ができる人もいる。それだけでも、神は信じる価値があるとは言えませんか?」

「……そうですね。神の有無なんてどうでもいいことですよね」


何かにふっきれたような表情のヒェライさん。

適当な事を言ったような感じがするが、まぁ、ヒェライさんが元気になったなら良しとしよう。


「そういえば、一つ伝えておきたい事がありました」

「なんですか?」


再び真剣な表情に戻るヒェライさん。だが、さっきとは決定的に変わった目つきだ。


「この国には気を付けてください……というか、国王とかですが」

「……なんでですか?」


声のトーンと大きさを落として僕は問いかける。


「最近、不穏な動きが見えるんです。嫌な予感というか……邪魔者を排除、もしくは利用しようとしている気がするんです。よくわからないんですが……一応気を付けてください。この国の王も……ただの愚かかもしれない人間ですから」

「ありがとうございます」


一応、過剰に反応するべきことではないが心の奥底にしまっておく。


「あと……絶対に死なないでください」

「分かりました、しっかり生きて帰ってきます」


その言葉と共に、僕らは別れ……僕は不思議と安眠に着く事ができた。


そして……ダンジョン攻略の日はやって来た。

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