不穏な情勢5
私は城を出て生家に向かう。
私の生家は軍神をまつる神殿だ。
神殿には罪を告解しにくるものも多い。情報収集には最適だ。
父に尋ねたところ、密売に関して何件か罪の償いの声があるらしい。誤って赤子が口にして、命を落とした例もあるようだ。
噂を頼りに何軒か尋ね歩いてみれば、幻覚剤の販路に絡んでいる人たちが浮かびあがってくる。民間での取引は作物で行われた後に、胴元へ運ばれているようだ。胴元からシュルリアン公国へと流れているらしい。東方の国、フロスティン国で栽培されている植物であると話している者もいた。
幻覚剤の元となる植物の名前は、イリュジョリス。ウィリエール様がおっしゃっていたように、生育環境を整えるのが難しいようだ。幻覚剤だとは知らずに運んでいた者も多く調味料の類だと思っていたと話す。
温室で育てて幻覚剤を持ち出しているといったウィリエール様の説が有力だ。けれど誰かが世話をして、誰かが粉を抽出しなければいけない。
花が咲いて実がなり、実を絞り液体を抽出する。その後、水分を飛ばしてから粉となるようだ。
証拠として収められた幻覚剤の粉は証拠として裁判所が保管しているらしい。
イリュジョリスの姿は図鑑で調べておいたので、知っている。百合のような形をしているけれど、茎が異様に太く香りが香辛料のような香りだと聞いていた。
温室の花々の中には百合も複数見つかるけれど、香りに違和感がない。つまりイリュジョリスではないようだ。注意深く観察しながら温室をまわっていったけれど、見つけられなかった。
先日私はランドルフ様がお忘れになったベルトに付着していた粉を採取している。
さらに、注意深く調べてみれば部屋のあちこちに粉が散布されてことに気づく。あの部屋撒かれていたのは幻覚剤のようだ。
あの日はすぐにウィリエール様にあらためていただき、たしかに以前ベアラル様の衣服からウィリエール様が採取したものと同じだと確認していた。
幻覚剤が使われており、ランドルフ様はあのお部屋に呼び出されたのかもしれない。私はあの部屋で眠ってしまっていた。
あの部屋は一体誰のお部屋なのだろう?




