揺れる心1
手足の震えを感じながらようやく身体を起こしたところで、ドアが開く音がする。
床を踏みしめる靴音がした。チョコレートブラウンのマントが翻り、傍にしゃがみ込んできたヴィルヘルム様の姿を見る。
「レイナード様にはまだ、息がある。医務官を呼ぼう」
レイナード様の脈を確認してから、ご自分のマントを外し、私の上へとかけてくださる。マントの前を合わせて、私は肌を隠す。
起こった出来事を説明しなければ、と思うけれども、ヴィルヘルム様は首を横に振った。
分かっているとでも言いたげだ。
「レイナード様からは、度々お誘いをいただいていた」
お誘い?声が出ずに、視線のみで問いかける。
「かつて護衛についたのをきっかけに、恋愛関係を結んで欲しいとお声がけをいただいていた」
「れ、恋愛関係?」
ああ、とヴィルヘルム様が短く答えたところで、医務官が到着した。私の姿や惨状を見て、皆息を飲む。
「大丈夫か?」
「一体何が起こった?」
複数人から声がかかった。血を浴びた素肌が目に入るからだろうと思う。
「浴場につれていく、着替えるといい」
とヴィルヘルム様に抱えあげられた。この場に留まれば、問い質されるのは時間も問題だ。
私が無傷であると分かれば、疑いの目は私に向くに違いない。何も分からないままに、投獄される可能性があった。
私を抱えあげたヴィルヘルム様は、
「ミリアは手足を縛られていたことにする。抵抗できなかった証明になるだろう。お二人は気の毒だったが、ミリアに手をかけてはいけなかった。守護者の力は自動的に発動してしまう」
と口早に告げる。
浴場につれていかれた私には、補佐官を通して着替えが届いた。




