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大失態の一夜目3
解任に際して、私は長らく思いを寄せていた兵長、ヴィルヘルム様に挨拶に出かけたはずだった。
近衛兵を解任されれば、職を失うのは自明のことだ。芸事の才能のない私は、この後望まない縁組により、婚姻関係を結ばされるのは分かっていた。
最後の捨て身のアプローチとして、私は兵長へと手紙を書いたのだ。
「親愛なる方へ。この任務を解任されるにあたって、あなたのおそばを離れることとなりました。私に最後の思い出をください」と。
兵長に向けて書いた手紙を、私は彼の宿舎のドアに挟んでおいたのだ。
約束の場所は、私の宿舎だった。
けれど、私の宿舎は近衛兵を解任するにあたって、前倒しで宿舎の引き払いを急かされる。屯所に簡易部屋を用意されることとなった。
私は慌てて兵長の部屋の手紙を取り戻しに出かける。既に手紙はなくなっていた。
その時点で、私はもう、その件は立ち消えたものだと思っていたのだけれど――――




