亡き王子との関係4
そのときは錆色の前髪の下に隠れた青鈍色の瞳に、色っぽい光がさした。
ドキッとしたので、
「ヴィルヘルム様、前髪が随分とお伸びになりましたね」
と私は話を逸らす。
「ミリアもだ、髪が伸びたな」
ヴィルヘルム様は私の髪を一房手に取った。
「一応結わえているのですが、手先が不器用で横の髪が残ってしまって」
胡桃色の髪にヴィルヘルム様が口付ける真似をした。丁寧な仕草にドキッとしてしまう。
妙な誤解を受けたらミリアは困るかもしれないな、とヴィルヘルム様はおっしゃり、私から離れていく。あ、と名残惜しさを感じてしまう。
「ベアラル様はミリアを護衛としてつけて欲しい、とおっしゃってきたことがあった。どちらかと言えば、女性としてそばに置きたいといったニュアンスが強かったな」
「そ、そんなことお聞きしたことはありませんでした」
「話をミリアまで下ろすまでもないと思った。色恋を交えると、護衛がしにくい。いらぬ誤解を受けるだろうしな。例えば今のように」
ヴィルヘルム様は近衛兵を統括している。人員の配置にも関わっていた。
「困ったことがあれば言ってくれ、ミリア」
そう言ってヴィルヘルム様は去って行く。
アイビーグリーンを基調とした近衛兵服に、ヴィルヘルム様だけはマントを羽織っていた。チョコレートブラウンのマントがひらりと翻る。
私はその背中を見て、やはり素敵な方だ、と思うのだった。
その時、ラドルが視界の端を横切っていくのを見る。
ここ二日ほどは葬儀や取り調べがあり、ウィリエール様とお話をする機会はなかった。
妙に気がかりで、ラドルの後を追ってみる。




