継承権第九位王子の死6
「なぜだろう、今日のお前は魅惑的な香りがする。その上になぜか豊満な身体になっているな」
ランドルフ様の視線が胸元に向かうので、私は手で隠した。
「正当な婚約者がいらっしゃるのに、随分とお元気ですね」
皮肉を述べて私はランドルフ様から距離を取る。
シュルリアン公国にルーツをお持ちのご令嬢のメアリ様がランドルフ様の第一妃候補だ。
「痩せっぽちの小娘もそれなりに熟したならば食してみたいものだ。幸い婚約者は不在のようだしな?」
ランドルフ様は赤茶色の瞳でこちらを見つめ、私の顎先に指をあてがい自分へと向かせる。
「もし今のお言葉が婚約者を失った私へのお慰みであるなら、不要です」
私が視線を逸らすことなくそう言ったら、ランドルフ様は乾いた笑い声をあげる。
「それにそのお言葉、メアリ様のお耳に入ったらどうなるか分かりませんよ?」
頭をふってランドルフ様の手を払うのに成功した。
「正室には謀略を求め、その他の妻や遊び相手には戯れが欲しい。妻たちもまた後継者を産めば自由です。我々の婚姻はそのようなものですよ」
さらにリドムンド様がおっしゃる。赤裸々な物言いに私は思わず眉をひそめてしまう。立場上純愛なんて望めないのは重々承知だ。けれど、お二人の物言いはあまりに露骨すぎると思う。
一つ気になる発言があった。ベアラル様が私を近衛兵にしたいとおっしゃっていた?
その発言は私に耳には届いていない。
「お二人には煌びやかな交友関係がお似合いです。私などはお捨て置きくださいませ」
頭をさげ、私は葬儀を行う教会へと向かう。神官でもない私のような者まで駆り出さなければいけない現状は異常だ。




