即位の十夜目2
王宮の様々な人の思惑が、私達をここまで導いてきてしまったようだ。
私は下腹部を撫でる。
王座の肘当てに這いのぼって来た紫地に黒の文様の毒蜘蛛が言う。
「隙を見せれば、また取り憑いてみせるよ。ウィリエールでもいい、誰でもいいんだよ」
第一王子は中々悪運が強いようだ。
キリムド様は中々にしぶとく、ウィリエール様の身体が滅んだ瞬間に、毒蜘蛛に取り憑いたようだった。
「危なかった、まさかウィリエールの身体が滅ぶなんて思わなかったよ」
とおっしゃるキリムド様は、意外にも鷹揚だ。
ウィリエール様はお兄様が毒蜘蛛になったことを喜んでいる。当初の予定とは変わってしまったけれど、治世に協力はしてくださるようだった。
ウィリエール様は、
「蜘蛛の使い魔はいないからね。仲間が増えてラドルも喜ぶと思うよ」
とおっしゃるけれど、宰相達はまだ理解が追いつかないようだ。
ウィリエール様は麗やかな春の日を思わせる穏やかな表情をなさる。
「ミリア、大好き」
「私もお慕いしております」
「ミリアを護るよ。害する者は許さない」
時折差し込む狂気の光により、生者どころか死者をも支配する脅威の王だ。
私の君主は、この国の主になった。
私は膨らみかけた下腹部を撫でる。
この子は一体誰の子なのか?
もし、あの望まぬ一夜の子どもだとすれば、命が危ういだろう。
正当なウィリエール様の後継者であるならば、ノーストスの次期国王になるのかもしれない。
戦いの火種がある場所にこそ、軍神は必要だ。今後もきっと何か起こるに違いない。
けれど今はひとまず、我が主の即位を素直に喜ぼうと思うのだ。
Fin.




