第23話 罪悪感と受け入れの中で、止まらない六皇子殿下
僕は数日前、馬から落ちてしまい、
毎日薬を塗り替えて体を拭く必要がある。
梓談は宮女では細かく世話が行き届かないと思い、
御医から処方をもらってきた。
毎日、宮女に湯を沸かしてもらい、梓談がその処方を湯に入れる。
すると、没薬の香りがふわりと立ちのぼった。
「妾と結ばれてまだ一か月も経っていないのに、
駕部へ行って侑儀と馬槍の勝負をしたの?
侑乾は郎中なのよ。
殿下が落馬したせいで、あの人まで責任を問われるのよ。」
「本当に申し訳ない、妻君。
あの戦馬をうまく御せなかった」
「はぁ……まさか殿下まで、
翼鷹殿下と同じように馬槍が得意だったなんて。
妾だって殿下と同じくらいつらいわ。
だけど、どうか無茶はしないで。
妾をそんなに早く未亡人にしたいの?」
「えっ?
どうか妻君、
僕を嫌わないでくれ……。
ちゃんと反省している。
今すぐに!」
僕は心臓が止まりそうになって、
慌てて笑ってごまかした。
梓談の左手には、
没薬の香りが移った絹の布が握られていた。
少し赤く腫れた目元。
体を拭くたび、薬指の金の指輪が僕の目にちらついた。
「まだぼんやりしてるの?こっちを向いて!」
僕はぼんやりしたまま梓談の方を向き、
胸から腹、それに太腿まで拭かれた。
そのあと、彼女は僕の両腕を軽く押した。
「妻君!
本当にすまない!」
「殿下に大事がなくてよかったです。
妾は先ほど、玉石の紹介に関する新しい典籍を加筆修正していましたの。
児墨も来て、妾を手伝ってくれました。
ひとまず第一稿は直し終えましたので、
このあともう一度見て、
補足するところがないか確認してまいります。」
「児墨!
っ、ああっ!」
僕が慌てて立ち上がると、梓談はすぐに僕の太腿をぱしんと叩いた。
僕は痛みに顔をしかめ、そのまま座り直す。
「殿下、どうしてそんな大声を出すのですか。
妾、びっくりしました......。」
「妻君!
本当にすまない!
ただ……妻君には、児墨に近づかないでほしいんだ!」
梓談は少し妙な顔をして、じっと僕を見つめてきた。
まるで、
僕の中身まで全部見透かそうとしているみたいだった。
「妾は殿下って、
もっと大雑把なお方だと思っていました。
まさか、そんなふうに考えすぎるなんて。
妾と児墨の間に、そのような想いはありませんよ。」
梓談は小さくため息をつき、
絹の布をたらいの中へ戻した。
それからゆっくり立ち上がって体を伸ばし、
米白色の裾を整えて、部屋を出ようとする。
「で......殿下?」
僕はすぐに、目の前の梓談を強く抱きしめた。
僕の体はほとんど白い短衫に触れるほど密着し、
熱が僕たちの間をそのまま伝っていく。
慌てていたせいで、
身につけていた唯一の黒い絹の布が床に落ちたことにすら、
僕は気づかなかった。
「妻君、僕の名を呼んでくれないか?
ここに残って、僕のそばにいてくれないか?」
「いいですよ!でも妾、殿......錦崇、
あなたの傷に触れたら、
すごく痛いと思いますよ!」
僕はふと、嘘にも善い意味はあるのかもしれないと思った。
何のためであれ、そう思って軽くうなずく。
「僕は構わない!
妻君がそばにいてくれるなら、それだけで嬉しい!」
僕が黒い絹の布を巻き直すと、
梓談はすぐに扉の外へ向かって声を張った。
「宮女はいる?」
扉の外から、すぐに返事が返ってくる。
さっきまで落ち着いていた梓談の顔に、
少し笑みが浮かんだ。
そのままゆっくり外へ出ていく。
「梓談殿下?」
「此方は今、沐浴して着替えたいの!」
「かしこまりました!
ただちに準備いたします!」
数人の宮女が慌てて湯殿の方へ走っていくのを見て、
梓談は振り返り、僕の目を見た。
それからまた部屋に戻ってきて、
両手で僕の顎の横をそっと包む。
「妾は約束を守りますよ。
ただ沐浴しに行くだけです。
一刻ほどしたら戻ってきます。
そんなに悲しそうな目をしないでください......。」
僕は部屋の中を、静かに行ったり来たりしていた。
こんな時間ですら、あの日、
先帝の遺訓を半日かけて読みながら、
ゆっくり書き写していた時には及ばない。
あの典籍は部屋の外へ持ち出せなかったからだ。
だが......どうして、
あの時よりもずっと長く感じるのだろう。
再び扉を叩く音が聞こえると、
梓談が薄紗をまとって入ってきた。
玉のような肌は、
まるで白雪を一枚かぶせたように見える。
四、五人の宮女が車輪つきの移動椅子を押していた。
梓談はそこに腰掛け、後ろでは薄紗を持つ者もいれば、
扇で涼しい風を送る者もいる。
僕の鼻先に、白松香の香りが届いた。
「妻君、それは白松香か?」
梓談が部屋に入ると、宮女たちはすぐに殿門を閉めた。
白松香の香りは、むせるほど濃く漂っていた。




