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【完結】大阪のおばちゃん占い師、異世界に転生しギャルとなる ―運命は変わってへんで―  作者: 川原 源明
第13章:未開のジャングルと荒野の魔族! 大自然の特大クレーム対応

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第187話 神速の連携と、オカン流・トラバサミの解除

 猛吹雪が吹き荒れる、万年雪を抱く険しい山脈。

 狂暴化した巨大な『精霊狼スピリット・ウルフ』が放つ赤黒い瘴気と、無差別に放たれる氷の魔法が、うちらの視界と体温を容赦なく削り取っていく。

 だが、その猛吹雪のド真ん中を、うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担いで、ズンズンと歩き出しとった。


「アレン! あんたの神速で、うちをあのワンちゃんの右足のところまで、一瞬で放り投げなはれ!」


「なっ……本気ですか!? 牙も爪も、凄まじい威力ですよ!」


「ええねん! 痛い場所が分かってるのに、放っとけるかいな! 迷ってる暇があったら、さっさと投げぇ!」


 うちの無茶苦茶なオーダーに、アレンは一瞬だけ躊躇した。

 だが、すぐに「……分かりました。僕が必ず、道を切り拓きます!」と覚悟を決め、西の大陸の長剣を鞘に納め、代わりにうちの腰をガシッと抱え込んだ。


「行きます! 風の精霊よ、我が脚に極限の推進力を! 『刹那の跳躍』!」


 ドゴォォォッ!


 アレンが雪面を蹴り飛ばした瞬間、うちらの身体はまるで大砲の弾のように、猛烈なスピードで吹雪の中をすっ飛んでいった。


『ガアアアアッ!!』


 こちらに向かって真っ直ぐ飛んでくる人間うちとアレンを見て、精霊狼が怒り狂って巨大な氷の爪を振り下ろしてくる。

 その速度は、野生の獣と魔力が組み合わさった、回避不能の神速の一撃や。


「静江さんには、指一本触れさせないッ!」


 空中でアレンが抜剣し、迫り来る氷の爪の軌道を『刹那の観測』で見切り、下から上へと強烈な斬り上げを放った。

 ガキィィィィンッ!!

 アレンの剣と精霊狼の爪が激突し、凄まじい衝撃波が雪を吹き飛ばす。

 その反動を利用して、アレンはうちの身体を、精霊狼の無防備になった『右の後ろ足』へ向かって、さらに一直線に放り投げたんや!


===========


「よっしゃ、ナイスパスやアレン!」


 うちは空中でクルリと身を翻し、精霊狼の太い右の後ろ足の毛皮に、ガシッと勢いよくしがみついた。


「うわっ、毛がフサフサすぎて滑るわ!」


『グルルルゥッ!?』


 足に張り付いた異物に気づいた精霊狼が、暴れてうちを振り落とそうとする。

 だが、うちはそんな揺れに耐えながら、分厚い氷の毛皮の奥に隠されていた「痛みの原因」を、しっかりと見つけ出した。


「……うっわ。こらエグいわ」

 そこにあったのは、帝国軍が仕掛けたであろう、無機質で残酷な『魔鋼のトラバサミ』やった。


 ただの鉄の罠やない。獲物が暴れれば暴れるほど、刃に仕込まれた魔力回路が作動して、さらに深く肉に食い込んでいくという、タチの悪い悪魔の設計や。

 精霊狼の美しい銀色の毛皮は赤黒く染まり、肉が深く抉られとる。


「こんなもん仕掛けるなんて、帝国の連中、ホンマに血も涙もないブラック企業やな! ちょっと待っときや、ワンちゃん! 今、おばちゃんが外し……って、痛ったぁ!」


 うちがトラバサミに手をかけた瞬間、罠からビリビリとした高圧電流のような魔力が走り、うちの指先を焼いた。

 人間が素手で外そうとすれば、感電して気絶するようにできとるんや。


『ガアアアアアッ!!』


 精霊狼が痛みに耐えかねて、うちに向かって巨大な牙を剥き出しにして噛み付こうと首を曲げてきた。


「静江さん!!」

 アレンが悲痛な声を上げるが、うちは一歩も退かへん。


「……アホか! おばちゃんの『お節介』は、こんな安物の電流くらいで止められるもんやないわ!」


 うちはアイテムボックスから取り出した『特大のゴミ拾いトング』を、トラバサミの硬い金属の隙間に、強引にガチン! とねじ込んだ。

 そして、テコの原理を利用して、全身の体重をトングの柄に思いっきり乗せた。


「開けぇぇぇぇッ!!」


 ミシミシッ……! ギギギギギィィッ!!

 帝国の最新技術で作られた魔鋼の罠が、大阪のオカンの「意地」と「テコの原理」の前に、悲鳴を上げてゆっくりと口を開き始めた。


===========


 バキィィィンッ!!!

 ついにトラバサミの留め具が完全にへし折れ、忌まわしい鉄の罠が精霊狼の足からボロリと外れ落ちた。


『ギャンッ!?』


 突然の解放と、傷口が開いた痛みに、精霊狼がビクンと大きく体を跳ねさせる。

 そして、そのままパニックになり、うちの頭からガブッと噛み付こうとしてきたんや!


「はいはい、痛かったな! でももう大丈夫やで!」


 うちは噛み付いてくる巨大な口めがけて、アイテムボックスから取り出しておいた、怪我を治す黄色の『レモン味』と、体力を限界まで回復させる赤の『イチゴ味』の飴ちゃんを、ポーンと二つ同時に放り込んだ。


 パクッ。

 精霊狼は、うちを食べるつもりが、見事におばちゃんの特製飴ちゃんを飲み込んでしもうた。


「んぐっ……!?」


 その瞬間やった。

 精霊狼の身体を包み込んでいた赤黒い「瘴気」が、まるで朝日に照らされた霜のように、ジュワァァッ……と音を立てて浄化され、消え去っていった。

 深く抉られていた右足の傷口も、レモン飴の強烈な回復魔力によって、瞬く間に塞がり、美しい銀色の毛皮が元通りに生え揃っていく。


『……あ……れ……?』


 痛みが完全に消え去り、空っぽだった体力ゲージが満タンになった精霊狼は、さっきまでの狂暴な殺気が嘘のように、ポカンと目を丸くした。

 吹雪を巻き起こしていた怒りの魔力も収まり、空を覆っていた分厚い雲の隙間から、一筋の温かい太陽の光が雪山に差し込んできた。


「……よしよし。ええ子や。もう痛いとこはあらへんやろ?」


 うちは、座り込んだ巨大な精霊狼の鼻面を、デコネイルの光る手で優しくポンポンと撫でてやった。


『……クゥゥ〜ン……』


 さっきまでアレンを殺そうとしていた大自然の化け物が、うちの手のひらにすりすりと頭を擦り付け、まるで大きな犬のように甘えた声を出したんや。


「……し、信じられん……」


 少し離れた場所からその様子を見ていた、荒野の魔族のリーダー『赤き鷹』が、弓を落とし、震える声で呟いた。


「あの、触れる者すべてを引き裂く大自然の怒りを、武器も使わずに……たった数分で鎮めてしまうとは……!」


===========


「……ふぅ。やれやれ、えらいド派手な怪我の治療やったわ」


 うちは、精霊狼のフサフサの背中から雪の上に飛び降り、ポンチョについた雪をパンパンと払った。

 アレンも駆け寄ってきて、心底ホッとしたように息を吐く。


「本当に……寿命が縮みましたよ、静江さん。でも、これで彼ら『荒野の魔族』との同盟の条件はクリアですね」


「せやな。……赤き鷹の兄ちゃん! 見てたか! このワンちゃんの悩み、おばちゃんがキッチリ解決したったで!」


 うちが胸を張って振り返ると、赤き鷹は雪を漕いでうちらの前に進み出た。

 そして、誇り高き荒野の魔族が、うちとアレンの前に、深く、深く頭を下げたんや。


「……疑ってすまなかった、人間の女よ。お前たちの、自然の痛みに寄り添うその『優しさと強さ』……確かに見届けた。我ら荒野の魔族は、お前たちを永遠の『家族(同盟)』として迎え入れよう!」


「よっしゃ、商談成立や!」


 うちがガハハと笑い、アレンとハイタッチを交わした、その時やった。


『……グルルゥゥゥ……ッ!』


 大人しくなっていた精霊狼が、突然立ち上がり、雪山のさらに奥、分厚い針葉樹林の方角を睨みつけて、低く唸り声を上げた。


「……ん? どないしたんや、ワンちゃん」


 赤き鷹が、精霊狼の視線の先を見て、ハッとして顔を強張らせた。

「……静江、アレン。どうやら、まだ終わっていないようだ。精霊狼が、山の奥から『鉄と油の不吉な匂い』を嗅ぎ取っている。……罠を仕掛けた帝国の連中が、まだこの山の奥で、何かを企んでいるらしい」


「……なんやて?」


 うちの額に、ピキッ! と青筋が浮かんだ。


「人の山に勝手に入り込んで、あんな痛いゴミ(トラバサミ)をポイ捨てしとるアホが、まだ居座っとるんか! 不法投棄もええ加減にせえよ!」


 うちは特大のゴミ拾いトングを肩に担ぎ直し、雪山の奥をギラリと睨みつけた。


「アレン! 赤き鷹の兄ちゃん! ワンちゃんもや! あの悪質な密猟業者(帝国軍)、全員まとめて『お掃除』しに行くで!!」


 大自然の化身を飴ちゃんとオカン力で味方につけたおばちゃん一行。

 次なる標的は、雪山を汚す帝国の不法投棄部隊。

 荒野の魔族との「真の共闘」が、いよいよこの雪山を舞台に幕を開けようとしとったんや!



読んでくれてありがとうございます!


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