15.『綺麗』
読む自己。
朝から眞子さんの美味しいご飯を食べさせて貰って大体9時くらいに家をあとにした。
今日の集合場所はあの喫茶店。……結局凪とはまともにいられていないあの場所。
あたしが着いた頃には翆が既にそこにいて中に入った。
相変わらず落ち着ける空間だ。……これから言うことがマイナスでなければ本当に心の底からそう思える。
「それで告白の返事を今日してくれるんだよね?」
「あ、ああ……」
こういう時に長引かせる方が余計にダメージを与えてしまう。
だから、
「ごめん、受け入れることはできない」
ここではっきりとぶつけて、どうなるのかと身構えた。
怒るかな、泣いちゃうかな、できれば普通の友達としてこの後もいられればいいんだけど。
「言ってくれてありがとっ、ふぅ~やっと落ち着けるよー!」
「む、無理してない?」
「してないよっ?」
「そ、そっか。……ありがとね」
偽っている可能性は0ではないだろうけど、目の前の明るさは彼女本来のものだった。
「これでやっと凪ちゃんに専念できるよ~」
……ん? あれ、それってあたしが言うセリフではなかっただろうか。
もしかして……区切りをつけたかったからあたしに告白をしてきたということなのか?
「ま、待って! 凪に専念ってどういうこと?」
「京子ちゃんに申し訳ないんだけどさ、実はあの壁ドンされた時から……きゃっ!」
「えぇ……あんた怯えてたじゃん……」
「こ、怖かったけど優しかったしお弁当も美味しかったしさ~」
「言っておくけど、凪がご飯作ってるわけじゃないからね? あの子のお母さんが作ってるんだから」
眞子さんは本当に素敵な人だ。
少なくとも自分の母親より母親してくれているし、ご飯も美味しく作ることができる。
なにより笑った顔や喋り方が凪に似ていて(逆なんだけど)、魅力的なのは確かだと言えた。
「それに凪ちゃんは最初助けてくれたしね」
「その割にはあんたあの子傷つけてたけどね」
……人のことは言えないけど。
「だからだよっ、だからこそ返していきたいんだよ! それであわよくばあの子を……うへへっ」
「だめ! 凪はあげないよっ」
「む、もしかして泊まってるとかしてないよね?」
「してないよ?」
「……すんすん……あ、これは凪ちゃんの匂い!」
もう迷惑なので喫茶店を出て歩き始めた。
決して逃げるわけではない。……凪とベタベタしていたことがやましかったからではない。
単純に騒がしくするのは申し訳なかっただけだ。
「待ってよー!」
「あたしはもう家に帰るよ、考えてみれば目的は達成したわけだしね」
断って泣いたりとかしなくて良かった。
いや、帰ってからどうかは分からないけど、少なくとも今は笑っていてくれて良かった。
ただ、凪を狙っているとなれば話は別だ。
邪魔をされかねないから撒かなければならない。
最後まで一緒に過ごすんだ。いくら広くても、眞子さんが優しくても、ふたりも増えたら大変だろう。
「うーん、気のせいだったのかなあ?」
「そうだよ、気をつけて帰りなよ」
「はーい、後で凪ちゃんにいっぱいメッセージ送ろっ」
「適度にしてあげなよ……」
「はーい! それじゃあねー!」
ふぅ……なんとか成功したようだ。
翆は可愛い女の子だし凪だって揺らぐと思うんだ。
あたしみたいな可愛気のないやつよりよっぽど好むかもしれない。
考えたくもないけどそれもあるのが現実ってやつだ。
「ただいま……」
「おかえりっ!」
あ……やっぱりこの顔、体、声音、笑顔が好きだ。
あたしは靴を脱いで段差を上って、にこにこと笑顔を浮かべている彼女をそのまま抱きしめた。
「うぇ!?」
困惑している彼女は無視して『好き』に触れていく。
少しだけ緊張していた体がほぐされていくような感じがした。
「凪、ちゃんと言ってきたよ」
「あ、そうなんだ……勿体ないなー」
いやいや、勿体ないのは君の魅力にこれまで真っ直ぐ向き合えなかったことだよ。
……人間性というか自分のキャラに似合わないけど、一切関係ないしどうでもいい。
「京子、膝枕して!」
「了解、あんたのベットの上でいい?」
「うん、いいよ!」
どうせならとこのまま抱き上げて運んで、彼女のベットの上に下ろして。
「はい」
「えへへ、お邪魔しま~す!」
あたしも座って彼女を誘った。
預けてくれた頭をそのまま撫でる。
「ねえ京子、翆は泣いてなかった?」
「うん、寧ろにこにこしてたよ」
「えぇ? うーん、どうしたんだろ。私だったら……耐えられそうにないな」
彼女はそこで少しだけ頭を、体を震わせた。
「もしかしてあたしに振られたらとか思ってる?」
「そ、そんなことっ……」
あーだめだなー誕生日の時までに取っておこうと思ったけどもう言いたい。
大丈夫、しっかりと不安のタネは潰してきた。しっかりと翆とのことは終わらせた。
「あ、でも……京子は翆のを断ったんだよね? あ、ちが――――」
不安そうに見上げてきた彼女の唇を優しく奪って笑ってみせる。
「ふふ、伝わった?」
「なっ……に、やってるの?」
「えー……伝わらなかったの?」
「いや……先にキスとか……」
「ごめんごめん、ふぅ……凪、あたしあんたが好きだよ」
またまた彼女の頭を抱いて言わせてもらう。
いや、恥ずかしくて仕方がなかった。
とことん自分のキャラじゃない。
「あ……お誕生日の時に……って思ってたのに」
「いーよ、貰ったよ今ので。それでどうかな?」
「……いーの?」
「ああ、2度と凪を悲しませない、そして守るって決めたんだ」
矛盾しているようだけど、それすらどうでもいい。
「私も……京子のこと好き」
「ありがと」
今にして思えばずっと最初からそうだったんだ。
手を握ったり抱きしめたり壁ドンしたりってのは全部その証拠だった。
何故踏み込まなかったのかは、単純に彼女の傷が大きかったのと、恐らくあたしも翆のことが引っかかっていたからだろう。
それでも今回こうして全てを綺麗にすることができた。
凪だけじゃない。眞子さんの存在も大きい。
「ねえ、京子ちょっと汗かいてる?」
「……ま、外出てきたし告白だって勇気いるしね」
「あはは、京子でも緊張するんだ?」
「当たり前でしょ、しないわけがないよ」
普通の人間だよあたしは。
それに凪の方がよっぽど強い、あたしは弱い。
今だって泣きそうになってるんだ。
いや、実際泣いているせいで「汗かいてる?」なんて言われる羽目になった。
「凪ー! あ……どうぞごゆっくりー……」
「お、お母さ――――」
眞子さんに苦笑して抱きしめるのをやめた。
「凪、あの時みたいに抱きしめてよ」
「あ……京子泣いてるの?」
「うん……あたしは弱いから」
「……分かった、ぎゅー!」
「いや……普通に起き上がってから抱きしめてほしかったけど……」
ま、これもらしくていいかもしれない。
「ありがとね、凪」
「ううん、京子が喜んでくれるならなんでもいいよ?」
「そっか」
「うん!」
……とりあえず後でしっかり眞子さんには説明しておこう。
それでも今はただこの色々な意味で柔らかい子に集中しておけばそれでいいだろう。
次は決して離さないとあたしは決めたのだった。
もう5万文字でいいや。
バンバン書いていこう。
内容がないよう、だからね。
読んでくれてありがとう!




