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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
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1月28日 - 返却 -

 定期テスト明けの授業は憂鬱だ。戻ってくる結果が良いとは限らないからだ。解答用紙が返却されるまで、バクバクと鳴る心臓で疲れるのもよろしくない。

 他の生徒も同じように感じているのか、硬い表情が多い。平然としているのは、いつもそこそこの成績を修めている者か結果を諦めている者かのどちらかだろう。過去の自分の成績を顧みるに、諦めて平然としてればいいと毎回思うものの、結果如何によっては母の説教があることを思えば、身構えてしまうのも致し方ない。


「学年末の結果を返す。名前を呼ばれた者から取りに来いー」

 授業が始まって早々、教科担任が解答用紙の束を手に、生徒の名を読みあげていく。

 用紙を受け取ったそばから落胆する者もいれば、ホっとした表情を浮かべる者もいる。特に一喜一憂もせず何事もなかったかのように、解答用紙を折りたたんで席に戻る者や、満足そうに解答用紙を胸に抱く者が、少し羨ましい。

 いつ名前が呼ばれるのを、兢々としながら待つ。

「望月りや子ー」

 間ののびた数学教師の声に、心臓が跳ねる。

 ガタっと勢いよく立ち上がり、足早に教壇に向かう。無造作に差し出された解答用紙を、ひったくるようにして受け取る。紙面を見ることなく胸に抱き、そのまま席へと戻った。

 ゆっくりと腰を落ち着け、1回、2回と深呼吸をして気合を入れてから、胸に抱え込んだ解答用紙をそろっと机の上に広げる。

(おお――――……セーフ?)

 良くもないが、悪くもなさそうな点数に、肩の力が抜けた。そそくさと半分に折り、とりあえず全員の解答用紙の返却が終わるのを待つ。テスト後の授業は解答用紙の返却と答えの解説で終わりなので、結果が分かった後は少し気が楽だ。

 全員に解答用紙が返され、教師の解説が始まった。

 後ろの方から見ていると、解説を聞く姿勢から、何となく明暗が分かれた生徒が察せられる。

(……これは、案外平均点が高いかもしれないな)

 ぬか喜びの危機を感じながら、板書された解答を問題用紙に書き写していく。採点間違いによる点数アップもダウンもなく、答え合わせは平和に終わった。

 授業の締め括りに告げられた平均点が、かろうじて自分の点数を下回っていたことに安堵する。

 チャイムが鳴り、日直の号令が終わると、とたんに教室がざわめく。

 問題用紙と解答用紙を素早くクリアファイルにしまい、次の科目の問題用紙を取り出す。教科書とノートも形だけ用意して一息ついた時、声をかけられた。

「望月ー、お前何点だった?」

 顔を上げると、斜め前の席の彼が嬉しそうな顔で立っている。

(点数良かったんだ、おめでとう)

 心の中で祝いの言葉を返し、半眼で見つめながらなんと返してやろうかと思案する。


××× ××× ×××


 今日戻ってきた分の結果は、悲喜交交。

 いつも通りと言えば、いつも通り。

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