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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
24/31

1月26日 - 解放感 -

 学年末テストは終わった。願書も出して、残るは受験だけだ。

 だが、今日は一休みとする。


 解放感を充分に満喫するために、「勉強してくる」と方便を使って家を出た。

 母はいつも通り図書館に行ったものと思っているだろう。半分は正解で半分は不正解だ。図書館には来てはいるが、勉強の為ではない。

 久しぶりにDVDコーナーに足を運ぶ。このご時世にブルーレイでないのは、この図書館がそれほど新しくないからだろう。

 パッケージがすっかり日焼けしてしまった古いアニメーション映画のDVDを手に取り、そのまま視聴覚用カウンターに行って、視聴覚コーナー利用の手続きをする。古めかしいヘッドフォンを受け取り、予約したブースに入ってイヤホンジャックにプラグを刺した。暫く待つと、見慣れた配給会社のロゴが流れて、本編が始まった。

 このDVDを初めて観たのは小学校高学年の時だ。それまで、この有名な配給会社の映画にはさほど興味を惹かれなかった。絵柄があまり好みではないのと、滑らか過ぎるキャラクターの動きが何故か苦手だったからだ。それなのに何故観ようと思ったかというと、ただタイトルに惹かれたからだ。

 単純明快なタイトルから、ラブストーリーだろうとは想像がついた。普段はあまりラブストーリーに興味惹かれることはないのだが、不思議と手に取ってしまったのだ。

 後々知ったことだが、元は神話のエピソードに着想を得て語られていたものが、幾多の時を重ね、18世紀に小説となったものらしいので、神話やファンタジーを好む自分が惹かれたのは、そういう何かを嗅ぎ取ったからなのかもしれない。

 知っている展開、知っている結末。それでも、何度も繰り返し観ているのはこの物語が好きなのだろう。原作があると知って、すぐに探して読んだくらいだ。

 あと、ハッピーエンドなのも繰り返し観る理由の1つだろう。幸せな結末の物語を読んだり見たりすると、気分が浮上する。


 そう。きっと今も、直前に迫った受験に向けて、明るい気分になりたいのだろう。


 エンドロールが終わり、軽く伸びをしてから、ヘッドフォンのプラグを抜いて席を立った。

 まだ固まっている身体をさりげなく動かしながら、カウンターへ行きヘッドフォンを返す。もう1本観ようか迷ったが、観たいものが見つからず、諦めて図書館を出た。

 閲覧室によっても良かったが、今借りて帰っても母に見つかったらお小言をもらうだけだ。

 受験まで1週間弱。

 本当の解放感に浸れるまで、あと一息。


××× ××× ×××


 現実は、目論見を看破されて母と姉のダブル説教に終わったけどね。

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