なんでもありません
目の前で女体化した婚約者であり幼馴染のロジェンが男を弄んでいた。
まるで悪女のような所業と、女として私は、そういった行動をしているロジェンが許せなかった。
といった理由から私は、飲み物などを机に置き、ロジェンの前にやってきて手首をつかむ。
「どうしたのリリー、なんだか顔が怖いよ」
「……最近女の子になってしまったロジェンに詳しくお話をしようと思って。まだ女の子になって日が浅いようだから」
「えっと……リリー、顔がなんだか怖い気がする」
「それはそうよ。私はとても怒っているもの。だからいらっしゃい?」
そういって私はロジェンを連れて、部屋の端の方に来た。
それから振り返り、
「ハルト王子たちは先に食べていていいわ。おなかがすいているでしょう? それに……これからのお話は長くなりそうですもの」
「そ、そうか。リリー、ほどほどに」
「わかっているわ。でもロジェンはよく分かっていないようなの。自分の胸を触って喜んでいるようだし、それも含めて……これから、丁寧にお話ししてわかってもらおうと思うの。大丈夫よ、ロジェンがきちんとわかってくれたらやめるから」
「リリー」
「何かしら、ハルト王子」
そこで私はにっこりと微笑みながらハルト王子にそう答えると、ハルト王子は言葉に詰まったように黙ってから、
「お説教はいまではなく後でも……」
「お説教ではなく、お話よ」
「……分かった。短くお願いする」
そうハルト王子が言った。
でもそれはロジェン次第だわ、と思いながら私はようやく目の前でそこはかとなく青い顔をしているロジェンに向き直り、
「それではお話し合いをしましょうか」
「え、えっと、あの、リリー」
「何かしら」
「顔がやけに怖い気がするけれど」
「そうよ。私はとても怒っているの。だからお話し合いをしましょうね」
「……」
そういって微笑むとロジェンがびくっと震える。
それを見ながら私は、昔と同じねと思いつつも、女の子としての節度について丁寧に語ったのだった。
時間の経過については測っていないので分からないが、随分と話し込んでしまった気がする。
だがロジェンは分かってくれたようだ。
「ロジェン、これからの立ち振る舞いは分かっているわね」
「……はい、わかっています」
「胸を誰かに押し付けたりとかしてはいけませんよ? 好きな人相手出ない限り」
「……はい、わかっています」
「本当に分かったのかしら? もしもまた何かをやらかしたら、今回の倍はお話ししないといけないわ」
「……」
「そのことをよく覚えておきなさいね?」
私はそう告げるとロジェンは素直に頷いた。
ふう、これで女の子としての立ち振る舞いを覚えさせたわとおもって私が振り返ると、異世界人のミナトも含めて男三人が凍り付いたようにこちらを見ている。
「どうかしましたか?」
「「「いえ、なんでもありません」」」
三人そろって声を上げる。
まったくどうしたのかしら、と思っているとそこで助け出した過給機氏であるらしい彼が手を挙げて、
「で、では食事をしながら僕がどうしてあの白い女に操られることになったのかについてお話ししようと思います。そ、それで僕の名前はイレイズと言います」
そう彼は自己紹介したのだった。
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