重々しく口を開く
ロジェンが早くいこうと言って私の手を引く。
その別の手を私はハルト王子につかまれた。
いつもロジェンに手を引かれるとこうなることがあったのを私は思い出して、懐かしい気持ちになる。
昔と同じだ。
そしてロジェンは……女の子になっているが、生きていた。
それを実感して私が機嫌をよくしているとそこでハルト王子が、
「リリー、やけに機嫌が良さそうだな。どうした?」
「昔みたいだって思って」
「なるほど、そういえばよくこうしたな」
ハルト王子も懐かしそうにそういうと今度はロジェンが、
「ハルトは微妙に諦めきれないみたいだからね~」
「……何がだ」
「まあ、僕もと近くで楽しませてもらうよ。っと、あ、ご主人~」
そこでロジェンが何かをハルト王子が言い返す前に、宿の主人に声をかけた。
丁度、新聞のようなものを読んでいたその主人に私は、
「少々お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「なんでしょう?」
主人が不思議そうに私に聞き返すので私は、
「先ほど出ていった方が、隣の部屋を借りている方でしょうか?」
「……ええ。その人物の従者、といった形ですが」
「なるほど。そしてその……先ほどの従者の主人となる方は、今は宿に戻ってきていますか?」
「……今日はまだ、見てはいませんね。風邪を引いたとかで、寝ていると聞いていますが……」
そう歯切れの悪い答えを返す宿の主人。
何かあるのだろうか、と私が思いながら、
「もし何かご存じでしたら教えていただきたいのです。もしかしたら知り合いかもしれないのですが、もしそうなら事情があってあまり外に出られないのかもしれませんので。ですから、あそこに泊まっている人物がどのような方か教えていただけませんか?」
私がそう問いかけると、主人は小さく呻いて、
「……きれいな女の人だった気がします」
「女?」
「ええ、陶器の人形のような、血の通っていない……貴方様のような人間味のある美人といった風ではなかったですね」
「それはありがとうございます」
「いえいえ。……そして全体的に白い、というイメージのある髪の短い女でしたね。あの薄く笑った感じが不気味でした」
「そう、ですか」
私はそう返しながらも、背筋がぞっとするような思いを味わう。
それは、ロジェンと入れ替わった男と一緒にいたあの、偽物の“聖女”に特徴が似ていたからだ。
あれが……あの仲間がここにいるの?
そう思いながらも私は、困ったような顔をしたふりをして、
「ありがとうございます。ですが私の知人ではないようです」
「ああ、そうですか……よかった」
「よかった?」
そこで宿の主人が安堵したようにそう言うのを聞いて、私は聞き返してしまう。
どういう意味なのだろうか?
そう思って聞くと主人は一度渋面を作ってから、けれど誰かにその不安を話したかったのかもしれない。
重々しく口を開く。
「あそこにいる客人は、よく、従者がこの近くの森の……空き家になった古い貴族の別荘のある場所に向かっていくのを見たのです。そしてその頃からでしょうか? この村で、以前よりも魔物が増えたような気がするのです」
そう言い出したのだった。
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