ドア越しの人物
数回部屋の扉がたたかれた。
御者の人か、宿の人か、それとも……別の誰かか。
そう私は思いながらも警戒してしまう。
妙な魔力を感じる。
普通の人間のものとは違う奇妙なものだ。
だが、ここの宿の主人もそんな魔力の気配はしなかった。
誰だ。
そう私は思う。
けれど、この奇妙な魔力は覚えがある。
私はハルト王子の方を見ると、彼は頷いた。
気づいたらしい。
その危険な兆候に私は警戒しながら小声でロジェンに、
「ロジェン、戦闘の準備だけはしておいて」
「……もちろん。“彼ら”の気配がするからね」
「……ロジェンがこれまで追っていた、“彼ら”というのは、この気配だった? もしそうなら、ロジェンと入れ替わったあの偽“聖女”と同じ者たちのような気がするわ」
「だったら……倒す」
ロジェンがそう呟き、瞳に好戦的な光が宿る。
けれど私はそれを止めた。
「待って。まずは気づかれていないと油断させてから攻撃を仕掛けましょう。彼らは、正面からやりあうのはきついわ。それに、本命に逃げられてしまってはそうしようもない」
「本命?」
「ええ、偽“聖女”がどうやら組んでいて指示を出しているようだから」
「偽“聖女”……ボクがおっているのもそういえばそんなようなことを言っている女だった気がするけれど……」
それを聞きながら私はあることを思いつく。
つまり、先ほどの魔物との戦いでの因縁の相手。
それがもしかしたなら……。
だから推論でしかないけれど、
「ロジェンには面識があるかもしれないのね」
「それはそうだけれど」
「油断を誘うならまだあなたと私達が関係があるとは思わせないほうがいいわ。大人しくこの部屋のベッドの下にでも隠れていて」
「でも……」
「いきなり攻撃するのも駄目よ。この宿の人に迷惑をかけるわ。それにみすみす重要な手掛かりを手放す事になりかねないわ」
「うう……わかった」
呻くようにロジェンが呟いて、ベッドの下に入り込む。
隠れてはいるけれどすぐに攻撃に出られる準備はしているらしかった。
そして私は警戒しながら部屋の扉の方に向かおうとすると、
「俺が出る。リリーは下がっていろ」
「この程度大丈夫よ。心配しなくてもなんとかできるし」
「いいから下がっていろ」
そういって勝手にハルト王子はいってしまう。
別にそこまで警戒しなくても、私だって自分の身ぐらい守れるしと私が思っているとハルト王子が、
「どちら様ですか」
「……隣の部屋に泊まっている者の従者です。高貴な方がいらしているようでご挨拶をと私の主人が申していたのですが、あいにく、熱を出してしまったがために私だけでこちらにご挨拶に参りました」
「そうですか。あなたのご主人とはどのような方ですか?」
「とある貴族の妻となる女性で、今はお忍びで旅をしております」
「こちらもお忍びでの旅行ですので身分は明かせませんが、お互いさまということでよろしいですか」
「はい、ご挨拶なしでいるのは失礼とのことでこうして参りました。……それでは失礼いたします」
そう言って従者と名乗った人物は、ドアの向こうでそう話して去っていったのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。




