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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
第二章 神様のゲーム
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第九話「武器屋」

「ご馳走様、んじゃ町案内するか」


 ニコッと微笑むナナハの隣でジェシーがペコッと頭を下げた。


「一寸待ってくれ」


 歩き出そうとした二人を秀樹が止める。


「約束の三千ギギルだ」


 気持ちよく案内して貰おうと秀樹が先に金を渡そうとした。


「ん~っと、そうだな……けどいらないよ」


 ナナハがいらないと手を振った。


「これから先何があるかわからないんだろ? それにお前らのこと気に入ったからな、案内は只でしてやるよ」

「そうか……ありがとうな、でも受け取ってくれ、俺と栄二からの気持ちだ。俺たちもナナハさんとジェシーさんが気に入ったからさ」


 金を差し出す秀樹の隣で栄二が大丈夫と胸を張った。


「遠慮しなくていいよ、バイト代だと思ってさ、僕たちは大丈夫、これでも神様に選ばれたんだからね」


 互いの世界のことを話し合った所為か初めて会った時のような照れは無い。


「んじゃ遠慮無く受け取っておくよ、来月にもランファンに行ってグラングラン食べるよ」


 ニッと笑うとナナハが金を受け取った。


「じゃあ何処か見たい所はある? なければ大通りの端から見て回るよ」

「そうだな…… 」


 考え込む秀樹の隣で栄二が口を開いた。


「この世界のことはだいたい把握したから売っている物や物価などを調べるために色々な店を回りたいけど先ずは武器を見に行きたい、話したように神様のゲームの中で戦うこともあるんだ。今はお金が無くて買えないけどどんな武器が幾らなのか知っておきたいんだ」

「流石栄二だ。魔法の杖だけじゃ頼りないからな」


 二人の前でナナハが考え込む、


「武器屋か……入ったことはないけど場所は知ってるよ」

「私は何度か行った事あるよ、父が村へ戻る時に自衛用の武器がいるって買いに行くのによくついていくから、私は何が何だかわからなくて楽しくなかったけど父と兄がはしゃいでたから男の人には面白いんじゃないかな」


 小さく手を上げるジェシーを見てナナハが驚く、


「行った事あるのか? んじゃその店に行こうよ」


 秀樹と栄二が顔を見合わせる。


「行きつけの店か、よろしく頼むぜ」

「何度も行ったことがあるなんてジェシーさん意外だね」


 生意気なナナハならともかく如何にもおとなしい感じのジェシーが何度も武器屋に行ったことがあるなんて思ってもいなかった。


「案内してやるけど武器についてのアドバイスは出来ないよ、あたし何も知らないからね」

「私も種類とかはちょっと…… 」


 無責任なナナハの隣で不安顔のジェシーを見て栄二と秀樹が優しい声を掛ける。


「種類とかはだいたいわかるからいいよ、案内してくれるだけでいいからね」

「だな、質問は店の人にするからいいぜ」


 ジェシーの案内で武器屋に向かった。



 町を十文字に走る大通りの右横の端にジェシー行きつけの店があった。

 他にも数軒武器屋はあるがここが一番安くて信頼できるらしい。


「んじゃ先に入れ秀樹」

「何で? 」


 先に行けと手を伸ばすナナハに秀樹が怪訝な顔を向ける。


「あたしらはあくまで付き添いだからな、先に入って武器好きの女なんて思われたら嫌だろ」

「なるほどね、でも武器好きの女って言うのもぐっと来るものがあるよな」


 振り返って同意を求める秀樹に栄二が無い無いと手を振った。


「一緒にするな、僕は興味無いからね」


 本心は武器好きの女の子もいいなと思ったがジェシーがじとーっと見ていたので慌てて否定した。


「なん!? 裏切り者め」


 言いながら秀樹が店に入っていく、その後を栄二とナナハとジェシーが続いた。



 結構広い店内のそこかしこに剣や盾に槍などが置いてあり通路まではみ出ていて店が狭く感じるくらいだ。


「凄ぇ……凄ぇな栄二」

「うん、全部本物だと思うと壮観だね」


 わくわく顔の秀樹と栄二が顔を見合わせる。


「へぇ~、刀とか盾がいっぱいだ」


 ナナハの声が一段高い、


「興味無かったんじゃないのかよ」

「実を言うと一度入ってみたかったんだよね」


 からかう秀樹を見てナナハがニッと楽しそうに笑った。


 店内をぐるっと回った後で剣や槍が置いてある棚に向かう、


「やっぱ魔剣の一つも欲しいよな」


 剣を見ていた秀樹が唸った。


「げっ!! 二百万ギギルかよ、こっちのは三百五十万だぜ、やっぱ魔剣は高いな」


 反対側の棚を見ていたナナハが秀樹の背中をツンツン突っついた。


「普通の剣なら五万ギギルからあるよ」

「魔槍も高いよ、一番安いので百八十万ギギルだよ」


 一つ離れた棚からジェシーが言った。


「普通のしか買えないか……でも魔物相手じゃ魔剣が欲しいよな」

「そうだな、普通の剣じゃゴブリンくらいしか倒せないよ、聞いた話しだけどね」


 気落ちする秀樹にナナハも同情的だ。


 そこへ栄二がやって来る。


「ダメだよ秀樹、剣や槍はいらない」

「いらないって、それじゃどうやって戦うんだ? 」

「普通の剣でも無いよりマシだよ」


 秀樹だけでなくナナハも怪訝な表情だ。


「そうだよね、普通の剣と盾か鎧でもあれば初めの一撃は防げるよね」


 ジェシーも不思議そうに栄二を見つめる。


「鎧は買うよ、でも剣とか槍はいらない、剣や槍なんて僕も秀樹も扱えない、使えない武器なんて無いのと一緒だよ」

「じゃあどうすんだよ、素手で戦うのかよ」


 ムッとする秀樹に栄二が笑いながら口を開く、


「僕たちは銃を使う、さっき見ただろ魔法の銃、あれを僕たちの武器にする。銃なら少し練習すれば扱えるようになるだろ、少なくとも剣や槍よりは頼りになるはずだよ」

「なるほどな、その意見乗ったぜ、やっぱお前と組んで正解だ。俺一人なら剣を選んでたところだ。剣道なんてやったことないくせにな」


 秀樹の顔がパッと明るくなった。


「魔法の銃なら三十万ギギルほどで買える。魔法の弾が十万ギギルするけどね、でもそれくらいならカジノで稼げると思うよ」

「恒夫か! あいつの持ってるイカサマサイコロを使うんだな」


 秀樹は武器屋に来る途中にあった大きなカジノを思い出した。


「うん、その為にイカサマサイコロ選んだって恒夫も言ってただろ、魔法の銃と弾を買うくらいは稼げるといいんだけどね」

「稼げるかな……あまり期待しないでおこう」


 秀樹と栄二が顔を見合わせて苦笑いだ。


「何か知らんけど話は纏まったみたいだな、んじゃ他の店を回るか? 」


 店を出ようとするナナハを栄二が止める。


「一寸待って魔法の銃とかボウガンみたいなのを少し見たいから」

「そうだな、鎧も見ておきたいな」


 秀樹と栄二が銃器を置いてある棚へと向かう。


「ほんと男ってこういうの好きだよね」

「ふふっ、父と兄もはしゃいでたから向こうの世界の人も同じだね」


 呆れるナナハの隣でジェシーが楽しそうに笑った。


 武器屋のオヤジに話を聞きながら金が出来たらどれを買うかと見当をつけていく、ナナハとジェシーは飽きた様子でじとーっと二人を睨んでいる。



 三十分程して店を出た。

 収穫ありといったほくほく顔の秀樹と栄二と違いナナハとジェシーはムスッとしている。


「アイスでも食べようか? 奢るぜ」


 来る前に見た屋台売りのアイスを秀樹が指差した。


「アイス? ジェラジェラの事か、奢りなら食べるよ」

「私ジェラジェラ大好き、冷たくて甘いんだよ」


 ナナハとジェシーの顔がパッと明るく変わった。


「俺のいた世界ではアイスクリームって言うんだぜ」

「ジェラジェラって言うのか、どんな味かな、早く食べに行こうよ」


 二人の機嫌が一変に直ったのを見て秀樹と栄二がほっと息をついた。



 ジェラジェラを食べ終わると二人に連れられるように彼方此方の店を冷やかして回った。

 遊んでいる秀樹と違って栄二は物の種類や値段を細かくチェックしていく、大雑把な秀樹や何に使うかわからないヘンタイの恒夫に資金の管理は任せられないと考えていた。


 日が傾いて路地に長い影が出来る頃にナナハとジェシーと別れる。


「今日はありがとう、御陰で助かったぜ」

「本当だよ、僕たちだけじゃ武器くらいしか調べられなかったよ、本当にありがとうね」


 ペコッと頭を下げる秀樹と栄二の前でナナハが照れるように口を開く、


「あたしらこそ楽しかったよ、初めはナンパと思ってたけどな」

「うん、向こうの世界の話しとか聞けて面白かったよ」


 ジェシーがはにかむように笑った。


「ナナハの御陰でナンパする自信がついたぜ」

「なに言ってんだ。まだまだだよ、秀樹のナンパじゃ誰も付いていかないよ」


 ニヤッと笑う秀樹をからかうとナナハが背を向けた。


「それじゃあな」

「栄二さんバイバイ」


 ペコッと頭を下げるとジェシーも背を向けた。


 少し歩くとナナハがバッと振り返る。


「あたしら服屋のあった通りでいつも遊んでるから何かあればそこら辺を探せばいいよ」

「おう、またこの町に来たら必ず会いに行くぜ」


 お互い手を振って笑顔で別れた。

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