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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
第二章 神様のゲーム
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第七話「初めの町」

 ゲームを仕切る大天使キケロが参加者全員を魔法の国へと瞬間移動させる。

 辺りを鬱蒼とした暗い森が囲みジメッとして湿度の高いジャングルにやってきた。


「今にもモンスターが出てきそうだな」

「珍しい虫とかいそうだな、夢の世界じゃなきゃ捕まえて持って帰るのに…… 」


 不快な表情で森を睨む秀樹の隣で恒夫が興味深そうに辺りをキョロキョロ見ている。


「静かに、始まるよ」


 天使ヘカロの言葉で秀樹たちは前に居る大天使に注目した。


 ふわっとカールしたパーマをかけたイケメンの大天使キケロ・パラテネスが参加者全員を見回す。

 先ほどまで騒がしかった参加者たちが静まり返って注目だ。


「今からゲームのマップを各自に配ります。1グループに一枚だけです。再発行は致しませんので大切に扱ってください、ゲームに使うサイコロは各担当天使が持っているので安心してください」


 地図が配られた。

 水に濡れてもいいように紙ではなく布で出来ている。

 体の前で広げられるくらいの横50センチ縦30センチほどの大きさの地図だ。

 地図には大きな大陸が一つと中くらいの大陸が一つに後は小さな島がいくつか描いてある。


 双六のルートは大きな大陸の上に白色でS字を書くようにマスがありS字の何箇所かに近道を繋ぐように色の付いた細い道がある。

 そのマスに止まりイベントの結果次第で近道が出来たり逆に戻されたりするのだろう、イベントで移動するのか中くらいの大陸や小島に繋がる道もある。

 双六のマス目はスタートからゴールまで30個だ。つまりサイコロを二つ回して10以上が3回続けて出ればゴールまでたどり着ける。


 だが宝玉を三つ集めなければゴールできない、宝玉が三つ揃っていればきっちりゴールで止まらなくともサイコロを振って通り過ぎるくらいに大きい数字が出ればゴールできる。

 宝玉が三つ揃っていなければ普通の双六のようにサイコロの出た目の数を引き返す事になる。

 下手をすればスタートまで戻るなどというイベントがゴール付近にある事も考えられるのだ。

 つまりゲームマップの長さではなく、あくまで止まったマスで起こるイベントをこなすのが目的という事である。


 地図には山と森と川や湖の他に町もいくつか描かれていた。

 双六のルート上にある町もあれば遠く離れた場所にぽつんとある町まで全部で10箇所ほどある。

 多くは双六のルート上にあるのでそこに止まれば町で寝る事が出来るだろう、その他に止まれば野宿だ。

 始めに渡された毛布や寝袋などは野宿のために使うものだ。



 大天使キケロから再度注意事項を説明された後で激励されてゲームが始まった。


 初日はサイコロは振らずに全グループがスタート地点にある町で休みとなる。

 この世界に慣れるために二日の休みが与えられた。

 だが呑気にしてはいられない二日の間にこの世界の事に関する情報集めをしなければならないのだ。

 それが分かっているグループは直ぐに動いたが何も考えていないグループは観光気分で遊んでいた。


 秀才だけあって中津は休みをどう使うかを理解したらしく情報集めに回っていた。

 秀樹たちも情報集めに動いている。

 ゲーム慣れした秀樹や栄二がRPGと同じだと理解して行動していた。

 残りの4グループのうちDQN男女三人組のグループと如何にも頭の悪そうなチャラ男三人組のグループは、はしゃいで遊びまわっていた。


 秀樹たちが今日泊まる宿は民宿のような所だ。

 中の上くらいの宿屋だ。

 恒夫の意見である。

 秀樹や栄二はもっと安い宿にしようと言ったのだが初めてきた場所の宿は信頼できるところがいいと恒夫が押し切った。

 安宿には様々な人がやってくる。

 その国や町に住んでいる人たちの民度によるが盗難の被害が多いのを恒夫は知っていた。



 時刻は昼過ぎ、秀樹と栄二が情報集めに二人で町を回っている。

 恒夫は別行動だ。

 大衆食堂で昼食をおえたあと一人の方が集められる情報もあると二人と別れた。

 旅慣れた様子の恒夫に秀樹も栄二も認めてくれた。


 天使ヘカロはいない、どこかで監視しているのは確かだが向こうから用事のある時以外はやって来ない。

 こちらから連絡する時のために耳たぶにホクロのような物をつけられた。

 耳たぶを抓んで頭の中で天使の名を呼べばテレパシーのように通話ができるのだ。

 連絡は取る事はできるがあくまで緊急用のためである。

 気軽に通信するものではない。



 物珍しげにキョロキョロ見ながら秀樹と栄二が大通りを歩いている。

 十文字に大通りが通っていてその道に沿って宿や商店などの大きな建物が並ぶ、大通りを結ぶように幾つも通っている小道の間に家々があると言った様子の小さな町だ。

 小さいと言っても端から端まで歩くのに40分以上は掛かる。

 町にある店を全て見て回るには半日以上は潰れるだろう、この世界の情報を集めるには丁度いい塩梅の町と言うことである。


「猫耳の女の子がいるよ」


 栄二が指差す先で猫耳少女が屋台でデザートらしきものを食べていた。


「エルフらしい人もいるぜ、マジで異世界に来たんだな」


 秀樹の目の前をすらっとした美女が歩いて行く、耳が横に長く伸びていて整った顔からしてエルフらしいのがわかった。


「うおぅ!! デケぇ~ 」


 鬼だろうか? 角の生えた大女を見て秀樹が思わず声に出す。

 秀樹の言うデカいは身体の事だけでは無い、通りの向こうを歩く鬼女は体もデカいがそれ以上におっぱいが凄かった。

 巨乳を越えた爆乳だ。


 隣から栄二が顔を覗き込む、


「また……秀樹はマジでおっぱい星人だよね」

「なん? いや……あんなの見たら否定しないぜ」


 緩みきった顔でこたえる秀樹を見て栄二もニヤりと悪い顔になる。


「僕も否定しない、猫耳に犬耳にエルフや鬼……可愛い娘がいっぱいだ。人外好きのケモナーの夢が叶いそうな町だよ」


 秀樹と栄二が見つめ合う、


「だよな、参加して良かったぜ、勝てなくともどうにかして女の子と仲良くなれたらいいよな」

「うん、エロゲーみたいな事になったら…… 」

「俺も考えてた。あの鬼女みたいな爆乳を好きに出来たら最高だぜ、ゲームに勝って神様にイケメンにして貰うってのは勿論だがおっぱいもどうにかしたいよな」

「僕も獣人の可愛い娘やエルフさんたちと仲良くなれたら……正直イケメンの願いよりそっちの方がいいな、僕たちの住む世界には獣人なんていないからね」


 厭らしい顔をした2人が頷き合う、


「夢の世界なんだからな、どうにかして願いを叶えようぜ」

「でも……女の子に声を掛けるなんて僕には無理だ」

「任せろ、これでもリーダーだからな……って言うか旅の恥はかき捨てだ」


 やけくそ風に言うと秀樹が辺りを見回す。


「あはは……そうだね、異世界に来てまでビビってたんじゃ仕方無いよね、情報集めをしないといけないしね」


 苦笑いしながら栄二も誰か声を掛けやすそうな人がいないかと探す。

 ふと目に付いた少女を栄二が指差した。


「あっ、あっちには角の生えた娘が……羊かな? 山羊かな? 」


 服屋の店先にくるっとカーブをした角を生やした少女がいた。


「殆ど人間らしいけど少し人外が混じってるな」

「そうだね、人間の町に獣人たちが混じってるって感じだね」


 人外好きの栄二のテンションが上がりっぱなしだ。

 通りを歩く人々は殆どが普通の人間だが10人に一人くらいの割合で獣人らしき人たちが混じっていた。


「あぁ……友達になりたいな………… 」


 物欲しそうに呟くが獣人少女に話し掛ける度胸などオタの栄二には無い。


「情報集めしないとな、夢の中だ。これは夢の中の世界なんだ。俺はリーダーなんだ」


 秀樹が自身の頬を両手で挟むようにしてパンパン叩いた。


「行くぞ! 」


 栄二の腕を取って秀樹が歩き出す。


「ちょっ、ちょっと、秀樹……何処行くんだよ」


 何処に行くも何も服屋の店先にいた羊のような角の生えた少女の元へ向かっているのは栄二にも一目でわかった。


「誰かに聞かないと情報集め出来ないだろ」


 振り向かずにこたえる秀樹に引き摺られるようにして栄二も店先へと歩いて行った。


「あのぅ…… 」


 秀樹が声を掛けるが羊のような角を生やした少女はもちろん誰も振り返りもしない。


「くそっ! 」


 秀樹が自分の頬を思いっきり引っ叩く、


「あの、少しお話しいいですか? 」


 大声に羊娘だけでなく服屋の店員も何事かと秀樹を見ている。


「話し? 私に? 」

「何だお前? ジェシーはちゃんと許可証持ってるからな」


 きょとんとする羊娘を庇うように友人らしき人間の少女が前に出てきた。


 許可証? 首を傾げる栄二の前で秀樹が慌てて口を開く、


「俺たちは話がしたいだけだ」

「なんだナンパかよ」


 あからさまに厭そうな顔をする少女の前で秀樹が真っ赤になって首をブンブン横に振る。


「ちっ違う、俺たちはこの世界の事を知りたいんだ。ナンパじゃない、話を聞きたいだけだ」


 慌てる秀樹を見て少女が笑い出す。


「あははははっ、変なナンパだな」

「なっナンパ…… 」


 全身真っ赤になった秀樹がその場に固まる。

 秀樹もオタである。

 クラスメイトの女子ならともかく見ず知らずの女に声を掛ける度胸などは無い……無いはずであったと言ったほうがいい、それが今声を掛けている。

 夢の中だと自分に言い聞かせて勇気を絞り出したのだ。

 それをナンパと間違えられて恥ずかしさで思考停止状態だ。

 固まった秀樹の後ろから栄二が顔を覗かせる。


「違うんです。僕たちは別の世界から来たんです。それでこの世界の事を知りたくて誰かに聞こうと声を掛けたんです」


 秀樹に隠れるように顔を見せる栄二に少女が怪訝な目を向けた。


「違う世界? そういや変な服着てるな」


 恥ずかしさを吹っ切るように秀樹が自身の頬をパンパン叩いて頭を振った。


「神様のゲームに参加してこの世界に来たんだ。さっき来たばかりで何もわからない、それで誰かに聞こうとして……ジェシーさんだっけ? それとあんたも可愛いからさ、どうせなら可愛い娘に話を聞こうと思って…… 」


「あははははっ、そういうのをナンパって言うんだよ」


 楽しそうに笑った後で少女が後ろを向いた。


「ジェシーどうする? 飯ぐらい奢って貰えそうだよ」

「どうするって言われても…… 」

「飯だけじゃなくてデザートも付けるぜ、助けると思って頼むよ」


 考え込む羊娘ジェシーに向かって秀樹が手を合わせる。


「困ってるみたいだから少しならいいけど…… 」


 ジェシーが小さな声でこたえた。

 押しに弱いタイプらしい。

 少女がくるっと前に向き直る。


「じゃあ決まりだ。丁度飯にしようと思ってた所だからあたしも助かるよ、あたしはナナハ、こっちはバーンのジェシーだ」


 人間の少女ナナハは気が強くて図々しいタイプだ。


「店はあたしに任せてくれ、奢りだし普段行けない店に行こう」

「ちょっ、ナナハ悪いわよ…… 」

「遠慮しなくていいよ、情報料だと思ってくれればいいよ」


 いいところを見せようとしてか栄二が安請け合いをする。


「そうだな一人三千ギギルくらいの店ならいいぜ」


 秀樹が横から口を挟む、自分と同い年くらいの少女が食べる店だ。

 知れていると思いながらも一応限度を伝えるところは流石リーダである。


 ナナハの顔がパッと明るくなる。


「三千なら余裕だ。ランファンの店に行こう、デザート入れて千五百ギギルくらいだよ、それでも普段あたしらが行ってる店の4倍の高級店だよ」

「ランファンなんて久し振りだね、グラングランが美味しいんだよ、デザートのケーキも最高だよ、話してたらお腹減っちゃった」


 ジェシーも嬉しそうな笑顔だ。

 ナナハがニヤッと悪戯っ子のように口を開いた。


「秀樹って言ったな? たまにはナンパもいいな」

「だからナンパじゃないって言ってるだろ」


 もう慣れたのか秀樹は普段の口調に戻っている。


「ランファンならゆっくりと話しもできるよ」


 道案内をしてナナハとジェシーが歩き出す。


 可愛いなバーンのジェシーさん……、人外好きの栄二がぽーっとなって見惚れている。


「何してんだ栄二? 行くぞ」

「あっ、待ってくれよ」


 先を行く秀樹を慌てて追った。

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