第四十三話
秀樹と栄二と恒夫が円陣を組む、
「能力は不死身で決まりだな、後はアイテムだ」
「今回は二つだから楽だぜ、俺はイカサマサイコロと無敵札でも貰うぜ」
ニヤッと含み笑いをする恒夫を栄二が止める。
「簡単に決めちゃダメだよ、二つだからこそ慎重に決めようよ、個人じゃなくてチームの戦力になるように考えようよ」
「俺も栄二に賛成だ。前回の30マスと違い今回は120マスだ。単純に4倍のゲームだぜ、前が二週間だったから今回は八週間、二ヶ月程の旅になる。じっくり考えて選ぼうぜ」
マジ顔で話す秀樹の隣で栄二が恒夫の肩に手を置いた。
「イカサマサイコロは賛成だよ、稼いでくれれば装備も揃えられるし、僕も秀樹も恒夫より旨く使えないだろうからね」
「だな、イカサマサイコロはお前のためにあるようなアイテムだからな」
秀樹もにやっと口元を歪めて賛成した。
「でも無敵札は反対だよ、3回しか使えないんだよ、長いゲームでそれは不利だよ、回数制限の無いものを選ぼうよ」
「そうだな、幾ら強力でも3回しか使えないんじゃダメだぜ」
恒夫がニヘッと悪い顔で続ける。
「必殺技だ。アニメや漫画の何度も使える必殺技じゃないぜ、バーゲンの必殺技じゃなくて本当の必殺技だ。ここぞという時だけ使えればいい」
引かない恒夫を見て秀樹と栄二が『どうする』というように顔を見合わせる。
恒夫が顎をクイッと動かして向こうを見ろと合図する。
「もしあの二人と戦う事になったらどうする? その場で棄権するか? でもどうしてもクリアしなくちゃならないイベントだったらどうする? 」
「魔族の二人か…… 」
呟く秀樹の隣で栄二も思案顔だ。
「そういう時に必要だ。無敵札かクリア札があれば魔族も怖くはない、前のゲームの時と同じように戦いは基本お前らに任せる。囮くらいはやってやるが俺は資金稼ぎが仕事だ。だから無敵札を選ばせてくれ」
マジ顔の恒夫を二人が見つめる。
「なるほどな」
「恒夫の言う事も一理あるね」
「じゃあ恒夫はイカサマサイコロと無敵札だね、僕たちはどうする? 」
自分の要求が通って恒夫は一安心だ。
秀樹と栄二が考えているのを余所に恒夫が辺りを見回した。
「チームねぇ~~ 」
周りにいる他種族の中には既にチームを作っているものたちもいた。
肩をポンッと叩かれて恒夫が振り返ると秀樹が楽しそうに話を始めた。
「前と同じ魔法の銃を武器にしようぜ、それで俺は魔法の杖と魔法のペンダントを貰って中級魔法使いになる」
「んん? ああ、いいんじゃないか」
考え事をしていた恒夫が適当に頷いた。
「僕は影マントと空気玉を貰う事にしたよ」
笑顔で言う栄二を見て恒夫が顔を曇らせる。
「影マントはわかる。気配と姿を消せば有利だからな、鼻の利く獣人には薬草か何か匂いのきついものを使えば対処できるだろうから俺も賛成だ。でも空気玉なんて何に使うんだ? 水中戦か? あるかわからない水中対策なんて無駄だぞ」
待っていましたとばかりに秀樹が横から顔を出す。
「俺が使うんだよ、中級魔法で周りを火の海にして酸欠状態にして敵を倒すんだ。前に中津と戦った時に俺が倒された方法を使うんだ」
「普通は自分も酸欠になるから炎を使うっていっても加減するだろ、でも空気玉があれば気にせずに全て炎で埋め尽くせる。不死身と空気玉を組み合わせて使えば凄い威力だよ」
栄二が得意気に付け足した。
「そう旨く行くかね、相手が上級魔法使いだと使えないぜ、飛んで避けられる事もあるぜ」
「上級魔法使いはともかく飛ぶ相手には有効だよ、炎のケージで囲めば上も塞げるからね」
自信満々の栄二の隣で秀樹が恒夫を見つめる。
「反対なのか? 他にいいアイデアがあれば言ってくれ」
「そうだよ、空気玉と影マントを使えば姿も気配も息遣いも止めて隠れて相手に近付く事もできるんだよ、匂いさえどうにかすれば絶対に見つからないよ」
難しい顔の恒夫に秀樹と栄二が詰め寄った。
「別に反対じゃないぜ……他に何もなければ俺も賛成でいいよ」
「じゃあ何でそんな顔してんだ? 不服そうだぜ」
突っ慳貪に言う恒夫を見て秀樹が顔を顰める。
「チームの事を考えてたんだ。六人まで組めるんだ。俺たちの他に誰か誘えないかなって思ってさ…… 」
秀樹が安心したように笑みになる。
「それならいいぜ、じゃあ能力とアイテムはこれで決まりだな、そうだなチーム編成を考えないとな、中津たちと組むってのはどうだ? 」
「中津たちか…… 」
恒夫が考え込むと丁度中津たちがやって来る。
「そっちは決まったか? 」
「俺たちも不死身を貰う事にした。お前たちと同じ死なない事を最優先に考えたんだ。今回はポイント制だからな、急いでゴールする必要も無い」
ようっと手を上げる佐伯の隣で中津が話してくれた。
秀樹が前に出る。
「俺たちと手を組まないか? 」
「秀樹たちと? チームを組むって事か? そりゃいいな」
佐伯が賛成して中津を見つめる。
東條がバッと恒夫を指差した。
「何言ってんのよ、ダメに決まってるでしょ、ヘンタイと同じチームなんて御免だわ」
「俺も反対だ。言っちゃ悪いが態々荷物を背負い込む事はない」
佐伯に言った後で中津が秀樹に向き直る。
「勘違いするなよ、バカにしてるんじゃないぜ、お前たちは強いよ、強いのは認めるが組むならもっと強い相手を選ぶって言ってるんだ」
恒夫がすっと手を上げた。
「賛成だ。考えてもみろ、俺たち普通の人間が六人集まるより獣人なりトカゲなり他種族を入れたほうがいい」
「そうだね、他種族の方が能力は上だし、同じような僕たちの考えとは全く違うアイデアとか出てくるかも知れないしね」
「そういう考えもあるか…… 」
親友の栄二も反対に回ると秀樹が考えるように腕を組んだ。
「どちらか勝てば人類は救われる。他の人間たちもそうだ。一つに固まるよりばらけた方が確率も上がる。1枚の宝くじより10枚のほうがいいだろ? 」
中津の言葉に納得したのか秀樹が頷く、
「そうだな、わかった。他を当たるよ、凄い仲間をチームに入れてやるぜ」
「こっちの台詞だ。次に会う時は吃驚させてやるぜ」
「ネピアちゃんより可愛い娘を仲間にして自慢してやるからな」
中津と佐伯が爽やかに去ろうとした時、恒夫が後ろから呼び止める。
「東條は俺と組もうぜ、俺の女王様になってくれ、足の指でも何で嘗めるからさ」
「黙れヘンタイ!! お前と組むくらいなら魔族の奴隷になった方がマシだ」
振り返りもしないで怒鳴ると東條は先頭に立ってすたすたと担当天使のリーアの元へと歩いて行った。
秀樹が恒夫の肩に手を置いた。
「止めとけよ、とばっちりは御免だぜ」
「そうだよ、はっきり言って嫌われてるよ、助けて貰ったって折角見直してたのにヘンタイするから元に戻っちゃったよ」
心配する栄二の向かいで恒夫が頬を赤く染めて体をくねらせる。
「やっぱ東條はああじゃなくちゃな、あの軽蔑した目が最高なんだよな、罵られるとぞくぞくするぜ」
ヘンタイに言っても無駄だと秀樹と栄二は互いの顔を見て苦笑いするしかない。
気を取り直した秀樹が周りを見回す。
「チームか……だれか入ってくれそうな人探すとするか」
「獣人がいいよ、ドラゴニュートとか妖怪も良いね、でも可愛い娘にしようよ」
栄二も周りを探す。
二人とも可愛い娘を仲間にする事しか考えていない。
「まったく……チームか………… 」
恒夫が何とも言えない表情で呟いた。
運営の仕事は終わったのかヘカロがやって来た。
「何を貰うか決まったかい? 」
「はい、決まりました。仲間になってくれそうな人を探してるところです」
自信有りといった様子で頷く秀樹を見てヘカロも安心したように笑う、
「何人くらいが能力を貰えるんです? Dブロック200名の内、BとCクラスは何人いるんですか? 」
恒夫の質問にヘカロが少し考える。
「詳しい事は言えないな、だが3分の2が力を貰えるとだけ言っておこう」
話していい事とダメな事があるらしい、言葉を選んで教えてくれた。
「3分の2か……つまりAクラスの強敵が3分の1、六十人ほどいるってことだな」
「そうか、それが知りたくて聞いたんだな」
呟く恒夫の近くで秀樹が成る程と頷いた。
「Aクラスが何人いるかなんて教えてくれないだろうからね、こういう所は抜け目ないよね」
栄二も感心顔だ。
「フフッ、そろそろ時間だよ、決まっているなら力を貰いに並ぶといい」
楽しそうに笑いながらヘカロが能力とアイテムを渡してくれるテントを指差した。




