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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
第二章 神様のゲーム
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第十五話「イベント成功」

 秀樹とチャラ男が村の近くで担当天使にイベントクリアの報告をする。


 今回のイベント期間は四日間である。

 早く終われば残りの時間が休みとなる。

 秀樹たちは二日目にイベントをクリアしたので今日この後と残りの二日を入れて三日の休みだ。


 チャラ男がゴブリン退治の礼に村から貰った宝玉を担当天使に預けている。

 少し離れた所で秀樹も天使ヘカロにゴブリンから奪った宝玉を預けていた。

 宝玉は無くさないように天使に預ける決まりになっている。


 恒夫がチラッとチャラ男たちを見た後で手招きするように天使ヘカロを呼んだ。


「他のグループのアイテムを貰うことは出来るのかな? 奪うんじゃなくて双方納得して譲り受ける事は出来ますか? 」

「それは……想定してなかったな、少し待っていてくれ大天使様に聞いてくる」


 恒夫が訊くと天使ヘカロが大天使キケロの元へと飛んで行った。


「何を考えてるんだ? 教えろよ」


 秀樹の隣で栄二も興味深そうに見ている。


「あいつらからゴーレムを譲ってもらおうと思ってさ、金に困ってる今がチャンスだぜ、旨くいけば三百万ギギルでゴーレムが手に入る」

「ちょっとダメだよ、そのお金は獣人を買うんだよ」


 慌てて栄二が止める。

 可愛い獣人女を買うための大事なお金だ。


「だから二百万ギギルは残すって、二百万あればカジノに行って二日で5倍の一千万に増やしてやるから心配無いって、それよりも売ってないゴーレムを手に入れるチャンスなんだよ、獣人が命令をきかなかった時の保険だよ」

「カジノがある保証も無いだろ、僕は反対だよ…… 」


 もう決めたという様子の恒夫の前で栄二が助けを求めるように秀樹を見つめた。


「ゴーレムか……手に入るなら欲しいな、俺は恒夫の意見に賛成だ。でかい町ならカジノは絶対にあるから心配するなよ栄二」


 賛成する秀樹を栄二が恨めしそうに睨む、可愛い獣人娘が欲しくて冷静な判断ができていない、恒夫が苦笑いしながら口を開いた。


「その代わりに獣人女は栄二に選ばせてやるよ、本当は荷物運びの出来る筋肉ムキムキの戦士タイプを選ぶつもりだったんだがゴーレムが手に入ったら荷物運びは任せられるからな、可愛いロリタイプの獣人でもなんでも好きなように選んでいいぜ」


「そうだな、獣人は栄二のペットでいいぜ、せっかく夢がかなう世界に来たんだからな楽しまなくちゃ損だぜ、俺も巨乳のエルフとか狐の姉ちゃん欲しいぜ」


 栄二の顔がパッと明るくなる。


「本当? 約束だよ、僕のペットだからね、秀樹も恒夫も手を出したらダメだからね」


 恒夫が栄二の肩をポンッと叩いた。


「俺は年上にしか興味無いから心配するなよ、どうせ可愛い年下タイプを選ぶんだろ」

「親友の女寝取るような真似しないから安心しろ、金余ったら俺も買うからさ」

「じゃあ約束だからね、それならゴーレム買うことも反対しないよ」


 ニコニコ笑顔で栄二が賛成した。現金なものである。

 そこへ天使ヘカロが戻ってきた。


「お互いの担当天使を証人としてその場に立ち合わせた上で双方納得してならアイテムの交換もしくは譲り受ける事は可能との事だ。もちろん天使は口出ししない、質問にはこたえるが全ての判断はゲーム参加者自身が決めることがルールだからね」


 話しを聞いて恒夫の口元がニヤりと企むように歪んだ。



 恒夫がチャラ男三人組の元へと向かう、もちろん秀樹や栄二も一緒だ。


「お前ら金盗られたんだってな、半分取られて残りは十五万ギギルってところだろ」

「なんだよハゲ、何が言いたい」


 気安く声をかけるなという様子でチャラ男が睨む、秀樹や栄二なら怯むところだが不良と付き合いのある恒夫はこれくらい平気である。


「そう怒るなよ、いい話しを持ってきたんだぜ」

「いい話? なんだよ? 」


 チャラ男たちが怪訝な顔で恒夫を見つめる。


「お前たちゴーレム持ってるだろ、そのゴーレムを売ってくれよ、今俺が持ってる全財産の三百万ギギルで買うぜ」

「ゴーレムを? ダメに決まってるだろ、それに何で三百万も持ってるんだよ」


 顰めっ面のチャラ男を前に恒夫がいつものとぼけ顔で続ける。


「初めの町のカジノで大勝ちしてな、三十万が四百万になった。百万は魔法の銃を買うのに使ったから残りの三百万が俺の全財産だ。魔法の銃はいいぜ、今回の戦いでもこれがあったからどうにか勝てたんだ。金があればお前たちも買えるぜ」


 恒夫が魔法の銃を取り出してチャラ男たちに見せる。

 チャラ男たちが興味のある顔をしたのを恒夫は見逃さない、続けて畳み掛ける。


「ゴーレムは役に立ったか? 金があれば魔法の銃だけじゃなくて魔剣も買えるぜ、金の心配する事無くゲームに余裕も出来る。俺は見た通りチビだからボディガードが欲しくてな、だからゴーレム売ってくれよ、お前たちは金が必要だろ? 」


「確かに金は欲しいけどゴーレムを売るつもりは無い、お前らだってアイテム貰っただろ人のアイテムを買うような真似するなよな」


 チャラ男のリーダーが疑うような顔で恒夫を睨み付けた。


「もちろんアイテムは持ってるぜ、秀樹が魔法の杖で栄二がゴーレムで俺がサトリ眼鏡だ。役に立つと思ったんだがサトリ眼鏡は戦いじゃまったく役に立たない、だからボディガードが欲しいんだ。俺はチビで喧嘩も弱いからさ、お前らならゴーレムなど無くても魔法の銃や魔剣を買えば充分戦えるだろう、あの村でもゴブリンなんて簡単に倒してたじゃないか、だからゴーレム売ってくれよ三百万ギギルなら損しないだろ」


 ケロっとした顔で恒夫が嘘をつく、堂々とした態度にチャラ男は嘘と気がつかない。

 チャラ男三人組がヒソヒソと話しを始める。

 様子を見ていると二人は売るのに賛成らしいがリーダーが反対して残りは渋々従ったのが分かった。


「ゴーレムは単純な命令しかきかないから使いにくいし三百万ギギルなら妥当だと思うけど今は売るつもりは無い、魔法の銃が便利ならそれで戦えばいいだろ」


 チャラ男のリーダーがこたえた。後ろの二人は物欲しそうな顔をしている。

 恒夫はそれ以上無理強いはしない、残念そうな顔を見せて帰ろうとした。


「別にいいぜ、三百万あれば獣人やエルフの戦士が雇えるんだ。この世界での戦い方を知っているから獣人たちを雇った方がいいに決まってる。お前らが困ってるからゴーレムを買ってやろうと思ったんだけどな……じゃあこの話は忘れてくれ」


 恒夫が背を向けて歩き出す。

 相手に考える時間を与えるようにゆっくりと歩いた。


 リーダーの後ろにいたゴーレム使いのチャラ男が慌てて口を開く、


「待ってくれ、分かった三百万ギギルで売る。お前の言う通りゴーレムが無くても戦えそうだしな、金が無いとゲームも続けられないからな」

「おい、何言ってんだ…… 」


 慌てて止めようとしたリーダーをゴーレム使いが睨み付ける。


「金は必要だろ、この先貧乏で遊べないなんてゴメンだぞ、だいたいお前があんな所に泊まろうなんて言うから金盗まれたんだろ、三百万あったら二百万で武器買っても残りの百万で遊べるぜ、せっかくこんな楽しい世界に来たんだからな遊ばなきゃ損だ」

「お前ら……わかったよ、でも俺は止めたからな」


 言い訳をするように言うとリーダーが折れてゴーレムを売ることを承諾した。


 恒夫が背を向けたまま立ち止まった。


「お前たちはいい判断をした。金が無くてまた安宿に止まったら次は泥棒だけじゃなくて強盗に遭うかもしれないからな、この金があれば安全な宿に泊まることが出来る。何も心配しないでゆっくり休める。結局そのほうがゲームを有利に進められるからな」


 しばらくして振り向いた恒夫は優しい微笑みをした善人に見えた。


「商談成立だな、宝玉もあと二つだし余裕でクリアできそうだぜ」


 ゴーレムの持ち主のチャラ男が前に出てきた。

 ゴルフボール程の小石状態になっているゴーレムと金貨が詰まった袋を交換する恒夫を見守る秀樹と栄二の顔が引き攣っている。

 チャラ男が止めた時の恒夫の顔が今まで見た事も無いくらいに悪い笑みをしているのを見た。

 まるで悪魔のような笑みだと秀樹は思った。


「あははは……お金はあったほうがいいよね」


 恒夫だけは敵に回したくない……、

 栄二が乾いた笑いを上げる。


 お互いの天使たちが見守る中で三百万ギギルとゴーレムの交換が終わった。

 恒夫は取引の間中ずっとポーカーフェイスでまさにギャンブラーといった様子である。


「にへへへへっ、旨くいったろ、栄二お前が持ってろ、獣人のペットを守ってやれよ」


 三人だけになると恒夫は満面の笑みをしてゴーレムの小石を栄二に渡した。


「恒夫が持ってなくていいの? 」

「元の大きさ以外に自由に変化できるから普段は人間サイズにして荷物運びに使うからな、戦闘の時は臨機応変に戦わせる。それ以外は栄二が持ってろよ」


 恒夫の代わりに秀樹がこたえた。


「俺は逃げ回るからな、戦いはお前らに任せたぜ」


 恒夫がニヤッと笑った。

 秀樹も栄二も何も言わない、恒夫はヘンタイだが仲間を見捨てる奴じゃないのを知っている。

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