僕の2番目に好きな色
まぶたを閉じる。
けれどあるのは暗闇だけではない。
鮮烈な赤。
彼女の色。
僕の2番目に好きな色。
彼女は全くひどい人だ。憎しみさえ抱きそうな程。
死ぬのは怖くなかった。最初から分かっていた。自分はいつか、人が生きるよりずっと短い時間で消えてなくなってしまうこと。欠片も残らないこと。
死について、僕はぼんやりとそこにあるものだと思っていたんだ。焦りや不安、恐怖などは感じず、遠くにいる他人よりかよっぽど身近で、親近感さえあった。
それが変わったのはいつだったろう。それははっきり分からない。けれどきっかけは分かっている。
彼女だ。
僕は彼女に出会ってしまった。
彼女は僕に、いろんなものを与えて、その代わり死への親近感とか、僕の今までの人生とも言える思想みたいなものを奪っていった。
まるで普通の人みたいに扱ってくる。なんてモノを知らないんだと呆れる彼女に、君こそ僕たちの種族について何にも知らないんじゃないかと思った。それは口にすることはなかったけれど。
彼女と過ごす時間はいつも短い。どんなに一緒にいても短い。
もっと、もっとと、まるで麻薬みたいに僕を駆り立てる。
もっとなんて、バカなことを。
求めたところでたかが知れる。僕はもうすぐ居なくなるのに。
手に入れることなんて出来やしない。まるでガラス越しに彼女を見ているように。
彼女がほしい。
一緒にいたい。
僕の大切なものすべて腕に抱いて君を連れていきたい。
バカな考え。
与えて、僕にもっとと思わせて、彼女はこれからも生きていく。僕の知らない誰かと生きていく。
その、好奇心にあふれたキラキラした瞳で君はこれから何を見て何を感じ生きていくんだろう。
君の憧れの赤い糸の相手が僕だったらよかった、なんてね。
君には絶対言わないけど。
君は今からも生きて、赤い糸の相手とどうか幸せに。
僕はただ、頭に浮かぶこの色だけを持っていく。




