39 会議
長い説明会が終わり、先ほどの出来事を話し終えた。説明は、途中からイースとリンが引き継いだ。果たしてクロに説明する気はあったのだろうか。
ほとんどが私も知っている内容であったが、
知らない情報もいくつかあった。
例えば、リンに丸焦げにされた男。
クロが拾って地下牢へ送ったらしい。
今も幽閉中で、あまり情報には期待はしていないが、この後尋問に行くとのことだ。
なぜ男のことを知っていたかを聞くと、尾行していたからだ。とだけ言って、ロンのほうを指さし、それ以上の説明はなかった。
それから、一旦説明役が交代され、私たち視点の話をリンが伝え、今に至る。
現在クロは、説明の途中から地蔵のように固まるジェイルに対して契約書のような紙を突きだしてサインを無言で求めていた。
深く考え込むジェイルと、無言のクロをおいて、残ったメンツで情報を整理する。そこでイースは、ロンを追っていた理由をはじめから説明した。
「私、院で掃除の手伝いをしていたの。そしたらロンと仲のいい子たちが帰ってきて、
ロンが殺されちゃう!
って泣きながら教えてくれたの。
それで男二人に追いかけられてるって話を聞いて…その後はリンたちと会って…今って感じかな。」
説明を終えて一息ついたイースは、そういえば、とロンに対して質問した。
「ロン、あなたが追いかけられることになった原因とか、クロに指をさされていたことに心当たりってある?」
「え、えっとね!ずっと話したかったんだけど、皆真剣に話しててタイミングを逃してたんだけど!多分あの人に会ってるの!」
クロを指差しながらロンは待っていたとばかりに話しだした。
「僕、皆といつもみたいに路地の空き地で遊んでたんだ。そしたら急に地面から男の人が出てきて、僕のこと掴まえて、それで、必死に逃げようとしたけど逃げられなくて、そしたら急に男の人が消えたの。」
たどたどしくも必死に自分の言葉で、頑張って説明を説明してくれている。
ロンは続けて話す。
「捕まれた背中をみたら、変な模様がついてるって言われて、それで怖いから孤児院に帰ろうってなって、そしたら黒い男の人、多分あの人が出てきたの。」
そう言ってクロの方をみる。彼は相変わらず書類をジェイルに押し付けていた。
「それでね、僕に近づいて、背中をみて、お前は今爆弾だって、お前が帰ったら皆死ぬ。皆を殺したくなかったらできるだけ離れろって言われて、それで一人で逃げたの。
そしたら別の男の人に追われて、イースお姉ちゃんが助けに来てくれて…それで…爆弾だから離れて!っていって………それで…。」
そこまで言って泣きそうなってしまったロンはイースに抱きしめられ、とうとう涙に歯止めがきかなくなって崩壊した。
しゃくり上げて泣くロンを宥めながら、イースは鋭い目つきでクロを睨み問い質す。
「クロさん。どういうことですか?最初から説明、お願いできますか」
クロは、一度書類を机に置いて、イースに向き直り、一言告げた。
「任務に必要だったからだ。」
「っ!…。っ私は!説明を求めたんです!彼は、ロンは!小さいながらに皆の為に一人で頑張ったんです!それを!あなたが最初から知っていたなら何とかできたでしょう!私は聞きました!あなたの身分を。それが国に仕える者のあり方ですか!説明ぐらいきちんとしろ!」
イースは怒りのままクロに感情をぶつける。
最後の方は地の口調に戻ってしまっていた。
場は静まり返り、
ロンの涙を流す声だけが小さく響く。
そんな沈黙を破ったのは、先ほどまで動かなかったジェイルだった。
「…状況は、把握した。イースは一度落ち着け。敵はコイツじゃないんだ。
そしてクロ。
オレもお前の説明には言いたいことが山程あるんだ。どんな理由であれ、そんな説明しかできなかったら誤解されても仕方ないぞ…。
改善を期待している。
最後に、魔女のお嬢ちゃんも話の限り悪いやつではないようだ。もちろん戦力としても十分。彼女らを任務に同行させるのは構わんが、任務に関しての説明はお前がしろ。全員納得しないと許可はださん。」
「私は嫌です!まだ理由を説明してもらえていませんから!」
イースは強い否定を示した。
それに対してクロが呟くように言った。
「…お前はいらん。そこの2人だけで充分だ。それ以外はどうでもいい」
イースが怒声をあげる。エイルが落ち着くように説得するが効果はなさそうだ。いつの間にか泣いていたロンもイースを宥めるのに必死になっていた。
今にもクロに殴りかかろうとするイースをガルンとエイルが二人がかりで止める。
頭を抱えるジェイルに、
何も気にしてなさそうなクロ。
壁際に座り我関せずの姿勢を貫くリン。
…話合いはもうしばらくかかりそうだ。




