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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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24/55

24 衣装


しばらく大通りを歩いて、何回か道を曲がったあたりでリンは立ち止まり店の看板に指をさした。


「到着。わたしの行きつけ」

なかなか大きい店だ。周りの店と比べても一回りは大きい。繁盛しているようで外から見える一階は、客人が何人も見えた。


看板には『ファッションジジ』と大きく書かれており、奇抜な色合いで目を引くデザインだ。躊躇いもなく店に入るリンの後ろを追うようにして入店した。


「いらっしゃいませ」

入店後すぐに声をかけられる。初めてお店に入った緊張からか、丁寧な接客に身体が跳ねるように反応してしまった。


「ジジさんはいる?」

リンが慣れた様子で店員に質問する。


「こちらに掛けて少々お待ちください。」

店員はそう言って店の奥にある椅子に案内して、店の奥に消えていった。


ふわふわの椅子に腰を掛けてリンと待つ。


数分もしないうちにきらびやかなドレスを着た女性が、店の奥から出てくる。彼女は、私たちの方を見たとたん、コツコツとヒールを鳴らして、驚くべき速度で近づいてきた。


「リンちゃん!今日はモデルのお仕事手伝ってくれるの!?こちらの子はお友達?!!まぁ!!きれいな子!黒曜石のように輝く黒髪!!ルビーより煌めく真っ赤な瞳!!絹のように透き通った肌!!まるでお人形さんみたい!!あら失礼!はじめましてわたくしこの店のオーナーをさせていただいてるビビですわどうぞよろしくおねがいします!ところであなた!モデルはやってみませんこと?」


目の前の大嵐に声が出ない。あまりの衝撃に固まってしまったわたしをよそにリンは何事もなかったように続けた。


「そう。アイリと今日モデルやるからこの子の服ちょうだい。」


「あら!ホント!リンちゃん!素晴らしい子を連れてきてくれたわ、逸材よ。この子。背丈も完璧!そうと決まれば早速始めましょ!誰か!お姫様方を案内して!私は最高の衣装選びをしてくるから!あぁ!この子のお洋服も任せといて!今日着た中で欲しかったものがあったらそれをもらってちょーだい!なかったら私が責任を持って最高の衣装を選んであげる!」



「ハッ…!」


嵐が目の前を通り過ぎる衝撃に意識が飛んでいた。意識が戻ったときには、大きなソファに腰掛け、ふかふかのバスローブに身を包む私とリンがいた。


ぼんやりと身体中を洗われた記憶があるような気がするが衝撃で何も覚えていない。

隣のリンはというと、ストローでフルーツの香りがするジュースをズルズルと啜っていた。そんな彼女に質問する。

「何が、起きた?」


「ただで身体を綺麗にしてジュースも貰った。この後アイリの服も貰う予定。」


ストローから口を外し、何でもないような顔をしてリンは答えた。


「お待たせして申し訳ないわぁプリンセスちゃんたち!さ!あなたたち!彼女たちを最高に輝かせるの!成長を見せてちょうだい!」


ジジがヒールを高らかに鳴らしながら入ってくる。その後ろには、店員の格好をした人や、普段着のような人までもが、何かを持ってきてぞろぞろと列をなして入ってきた。


そこからは再度、嵐のように目まぐるしい時間の再会だった。


一人一人が自己紹介して、持ち寄った衣装を渡されるので、それを受け取ると、カーテンでできた仕切りの裏に連れて行かれ、

着替えさせられる。

その後、ライトに照らされたステージに立ち言われた通りのポーズを撮影する。

何枚か撮ると自己紹介と共に服を渡される。

着る。撮影する。あいさつする。着る。撮る。着る。リンと横に並びポーズをとる。

受け取る。着る。撮る。受け取る。着る。撮る。受け取る。着る。撮る…………



「………はっ!」

 意識が戻った時、

私が着ていたものは黒を基調に赤のフリルをあしらったドレスだった。

髪形もいつの間にかツインテールにされ、腕の中にはクマのぬいぐるみが収まっていた。


今日、すでにここで2回も意識を飛ばしていることに恐怖を覚えた。しかも、気がつくたびに服装が変わっている。


「こちらはある花畑で見かけた一匹の蝶をモチーフとしており…」


恐らくこの服の製作者であろう彼は、大げさに身体を使って、ジジに対しこだわりのポイントや、詰め込まれた技術について熱弁している。一通り語り尽くしたあと、ジジが評価を下す。

「うん!素晴らしいじゃない!彼女の雰囲気にぴったり合っているわ!黒髪の子には完璧よぉ。ただ、このデザインは今回だとなしね。今年の魔法学院のパーティ。参加者に黒髪の子は居ないもの。」


ジジの批評聞いた彼は、悔しそうに肩を落として部屋を後にした。


「では次はわた「ちょっと待って!」


次の服を持って来た人の腕を抑えて声を上げた。このままでは終わりそうもない。まだまだ順番待ちをしている長い列を見て、私は声を上げずには居られなかったのだ。


皆、服を持って盛り上がっていた全員がキョトンとした顔を浮かべ口を閉じる。ファッションショー会場がスッ…と静まり返った。


その沈黙をジジが破る。

「あら、お声も綺麗でかわいいのね!」

そう言って私の声を褒めてくれたジジに提案をする。

「ありがとう。ただそろそろ夜も遅いからね。一度休憩にするのはどうだろうか?」


そう言って今もなお、ポーズをしっかりと決めるリンの方をむく。


「疲れたの?」




リンにとってはこれが天職のようだ。












  

 

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