閑話3 増える楽しみ
過酷な生存競争を強いられる場所であるアビス。より深い層域を探索する彼等は、自身の生存率を少しでも上げる為、自己鍛錬を欠かさない。
そう最近大遠征から地上に帰還した探索業界のトップを走る探索会社エクスに属する彼等、彼女等であっも例外ではない。
帰還した探索員はゴールデンウィークと相まって長期休暇を貰っているのだが、社内に備え付けられた高位階者用のジムで自主的にトレーニングする者達が少なからずいた。
何故わざわざ会社で鍛錬するかと言うと、ここ日本では規制が厳しく人外の域へ達した高位階者が、全力で鍛錬やスポーツ出来る場所は少ないないのだ。
談笑しながら組手をする者達や黙々と器具を持ち上げる者、開けた場所で1人淡々と獲物を振るう者。皆のそれぞれトレーニングをしているが、何処か自主トレーニングな事もあってか弛緩気味な空気だ。
だが、次の瞬間自動扉から入ってきた思わぬ来訪者のせいでその空気が一気に張り詰める。無理もない、誰だって上司や、部活で顧問の先生が来たら空気が張り詰めるだろう?それと同じである。
この場で、トレーニングする物立ちなら忘れるはずもない顔、自分達のリーダーであり、支柱であり目指すべき存在である人。アーサー・ガルシアの登場に皆訓練する手が止まる。
「おー、休日だったのに結構いるなー」
「「「?!、おはようございます!!」」」
「ん、おはよ」
個々人と軽い挨拶交わしながらアーサーは、誰よりも早く訓練を再開させた少女の元へ赴く。
「よう、アリス精が出るな」
「…アーサー、どうして来たの?」
「えっ?!いきなり辛辣?!俺なんか悪い事した?!」
口下手なアリスは、首を横に何度か振った後話始める。
「アーサー書類仕事終わったらいつもクリフ誘って居酒屋にに行くから、心境の変化に驚いただけ」
「あー、そういうことね!!なんだよかったー。知らぬ間になんかしらハラスメントしたんじゃ無いかと、冷や冷やしたぜ」
「…そう、だね」
「待って?!今の間、なに?!俺なんかした?!もしかしてあれか?スメハラってやつか?!やつなのか?!」
「…アビスの時だけ…」
「…今度…香水買ってきます。」
「匂いキツく無いのにしてね」
「…うん」
かなりメンタルを抉られたアーサーだったが、アリスの質問に答えら為、下のスエットのポケットからスマホを取り出す。
「これを見ろよ」
「この前のデージーの事件?」
「そうそう。で此処の分みろよ」
記事の殆どはデージーの偽装による事関連についての言及であったが、アーサーがアリスに読めという部分は違った。
「…『最後に傷を負いながらも第3位階を倒し、今回の恐ろしい巨悪を倒してくれたれた第2位階第1位階の2人の感謝したい。』…確かに凄いけどこれがどうしたの?」
「この事件首謀者の花垣トオルの実力は知っている。第3位階の身体能力に乗っかるだけじゃない確かな技と力の持ち主だ。だから気になってちょっと知り合いに掛け合ってこの花垣を倒したこの名もしれぬ2人を調べたんだよ」
「…それで?」
「聞いておどろくなよーなんとな俺達がちょっと前に病院に連れてったあの2人だったんだよー」
「?!」
アリスは、アーサーに全幅の信頼を置いているが、今回ばかりは耳を疑った。何故ならとてもじゃ無いが、ついこの間ジャイアントスパイダーとの戦いで死に掛けていたあの2人が、曲がりなりにもアーサーも認める第3位階の人間に勝てるとは、考えられなかったからだ。
「油断してたのかな?」
「してたと思うが、それでもあのレベルに勝てるなら凄い成長を遂げたんだろうなー」
(未だ信じられないけど、もし本当にこの短期間にそれ程までに強くなったならそれは成長という飛躍だ。)
アリスは、記憶の中にいる満身創痍2人の姿を思い出しながら、どうやったらそこまで成長出来るのか思考の海に潜っていく
(対人戦用の会社独自の訓練方法とかあるのかな?それとも、新種のスキルや魔法?いや、そんな都合の良いものあるわけがー)
「アリス」
「?!…なに?」
「負けられないよな」
「…うん」
折角真剣に考えていたのにそれを邪魔させられた事で若干不機嫌になったが、真っ直ぐなアーサーの表情に毒気を抜かれてしまう。そして、彼の真意に気づく、そうこのままでは、そう遠く無い未来新世代に追い抜かれしまうだろう。
そうなれば彼女の彼岸は果たせない弱肉強食のこの世界に負けない為に、目指すべき物の為にアリスは、訓練を再開させる。
訓練再開させたアリスを笑顔で見守りながらアーサーは、彼女を含めた多くの新世代が、人物達を追い落とそうと飛躍し台頭してくるのを楽しみにし、その上でそれ等に負けないようにと自身もトレーニングを始めるのだった。
次は2章です




