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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
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間話1 お見舞いニコちゃん

 行きつけの業務スーパーから出た私は、上機嫌で鼻歌まじえながら早歩きで近くの駐輪場に向かって歩き出す。


 何故上機嫌なのかと言うと、御見舞い用のリンゴが安く買えたのもあるけど1番はお兄ちゃんをスカウトしに来たときに知り合った同い年の男の子、カイくんと久しぶり会えるからだ。


 カイ君の方は4月に入って2回目の入院らしい。本当は1回目の入院の時にも御見舞いに行きたかったけど、学校の委員会やの末っ子のヨウコのお世話や家事があって忙しくお見舞いに行けなかった。だけど今日はゴールデンウィークだ!!前回と同じ轍は踏まないのである。


勿論お兄ちゃんの事も忘れてはいない。今でこそ偉大な兄だが、何せ小中高と喧嘩ばかりしていたあの兄が入院したのだ。何処かうちのお兄ちゃん達なら大丈夫と楽観視していた私は、家に掛かってきた社長の凛さんからの電話で凄く動揺した。


 あの時ばかりはあたふたしてしまい、無事との連絡が来るまで、姉としての威厳が薄れてしまったものだ。

全く冒険者歴1ヶ月で死にかけるなんて…ちゃんと安全に気を遣って欲しいものだ。


 兄にきついお説教する事を誓いつつ、自転車に跨り病院の駐輪場まで自転車のペダルを漕ぐ事約2時間、移動中の風で乱れた髪や服を化粧室で治す事数十分。全ての準備が完了した私は、流行る思いを抑えつつもやや早歩きで、カイ君とお兄ちゃんがいる病室に向かう。


 受付の看護師さんから聞いた病室の中に入ると、中には先客が既におり、お兄ちゃん達と楽しく談笑していた。


 先客の女の人は可愛い感じで柔らかい雰囲気を纏ったとても綺麗人だった。顔立ちはガーリータイプの可愛い感じで髪は綺麗なショートボブのブラウンの髪が、可愛さを引き立たせている。服は肌面積が少ない清楚な感じのカジュアルコーデだ。


な、何この可愛いOLは?!ふ、2人とど、どうゆう関係なの?!、あっ、あの小物可愛い!!じゃなくて…


私の様な家計が毎度火の車な貧乏中学生では決して持てない装備を全身に纏う彼女から私は、とてつもない強者の気配を感じ取った。


「あっ、ニコー来たのか」

私が謎の強者に戸惑って入り口で、突っ立ているとベットの上にいたお兄ちゃんが、私に気付き手を振る。

取り敢えずお兄ちゃんが、元気そうで良かった。


「もぉー、お兄ちゃん!!声が大きい!!他の人の迷惑になるでしょ!!」

「ごめんごめん。ってそうだった胡桃さん紹介しますうちの妹のニコです。ニコこの方は会社の先輩の森下胡桃さんだ」


えっ、会社の先輩?!まぁ、そういえば私も含めて家ではカイ君との冒険話ばかり聞いてたから知らなかったけど、当然事務方の社員もいるよね。後なんだろう?今日のお兄ちゃんなんだか声トーンがいつもより高い様な?


「は、初めまして葉山ハジメの妹で葉山ニコです。いつも兄がお世話になっています」

「ふふっ、どうも葉山君と同僚の森下胡桃です。葉山君から話は良く聞いてるよ。よろしくねニコちゃん」


え、笑顔が眩しい。っていうかお兄ちゃん何言ったの?!今すぐ兄を尋問したいが、今はちゃんとしなければ!!私はテンパリつつも会話を続けるべく口を開く。


「はい、よろしくお願いします。えっと森下さんもお見舞いにですか?」

「うん。今日はお休みだったし、カイ君には渡す物があったから、ちょっと寄ったの」

「渡したい物ですか?」


えっ?何だろ?まっ、まさか着替えとかタオルとか諸々のお世話をしに?!カイ君と森下さんはそ、そんな関係性?!


慌ててカイ君の方に目を向ける。相変わらず日本人離れした整った容姿に面食らいそうになるが、彼のムスッとした顔で、一向に此方を見ようとしない。やはり下着などの着替えなのだろうか?!


取り乱す限界の所まで来て若干冷や汗が流れ始めているとお兄ちゃんが、ニヤニヤしながら私の知的好奇心を煽って来る。

「へッ気になるかニコ?まぁ、お前ならコイツの手助けが出来るかもな」

「おい辞めろハジメ」

「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇし」

「そうそう、不貞腐れる事じゃ無いぞー」

「そ、そうだけど、でも恥ずかしいからやだ」


 カイ君恥ずかしがってるの超可愛いけど、仲良くなるチャンスなんだし歩み寄らねば!!今日の私は積極的なのだ。


「えっと久しぶりカイ君」

「久しぶり、いつもオニギリありがとう」

「どういたしまて、シャケオニギリが好きって聞いたからまた作るね。後私に出来る事なら手伝うよ?」


 カイ君は、暫く悩む感じで唸った後顔を赤面させながらボソボソと小さな声で悩みを打ち明ける。


「…勉強教えて下さい」

「へっ?!勉強?!」


 私が素っ頓狂な声を上げるとカイ君はべットの横に大量に積まれた凶悪なプリントの数々と教科書の山を取り出す。


「そ、それにしてもどうしてこんな量になるまで放置したの?」

「くっ…」


どうしてこんな凶悪な量になるまで溜めてしまったのか疑問に口に出してしまう。答えは、俯いてしまったカイ君の代わりにお兄ちゃんが、どうしてこうなってしまったの経緯を説明してくれた。


「ゴールデンウィークと平日入院で休んだ分の補填込みでこの量なんだと」

「私も昨日社長にお見舞いに行くならついでに渡してくれって頼まれたんだよー重かったー」


一先ずこの量は凶悪だが、森下さんがカイ君に持って来た物が判明したので私的にはオッケーだ。


「じゃあ、地道に英語からやっていこうか」

「よろしく頼む」


 お兄ちゃんと森下さんに弄られながらカイ君は膨れっ面だったけど可愛いかった。後、私としては接点が持てたからお兄ちゃん達ナイス!!


「それじゃ、私はこの後用事があるから行くね」

「いえいえ、わざわざ来て下さりありがとうございました。ほらカイお前なんなかあるだろ?」

「持って来てくれてありがとうな」

「いーえー、それじゃあニコちゃんもまたね。」

「はい。兄をよろしくお願いします」

心の中で親指を立てていると森下さんが用事があるらしく席を立った為、私も席を立ち頭を下げる。


「勿論だよー。()()()


そこまで言うと森下さんは私の右耳に顔を寄せてお兄ちゃん達に聞こえない声量で話し始める。


「カイ君は、あんまりグイグイ来られるのは好きじゃないタイプだから、注意しなよ」


鏡が無いから自分の顔がどんな表情を浮かべているのか分からないが、多分引き攣っていると思う。社長の凛さんも凄い人だと思っていたが、森下さんも只者ではない。


お兄ちゃんが勤める探索会社パキラの女性は凄い人で一杯だ。私は、森下さんが出て行った後も暫く病室の扉を眺めていると、お兄ちゃんとんでもない事を言い始める。


「はぁー胡桃さん今日も最高に可愛かったなー」

「え?!お兄ちゃん?!」

「ん?どうしたニコ?」

「…いや、なんでもない」


お兄ちゃんの恋の相手レベル高すぎでしょ。無謀に近いこの恋を応援するべきか迷う私だったが、カイ君を好きになった私が言える立場でも無い。兄の恋を密かにだが応援しよう、そして振られた時は優しくしてあげようと決めたのだった。


そうしてパキラの美人社員さんとの出会いを果たした私は、我関せずと宿題と睨めっこしている事から既に兄の恋心を知っているのだろう彼に買ってきたリンゴを振る舞うべく歩き出すのだった。

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