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Life 夢の軌跡  作者: 伊藤ヲカシ
第1章
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1話 始まりの出会い

連載よろしくお願いします

 3月の上旬まだ外は寒く着込まなければとても外を出歩く気にもならない程の寒い夜の街を、ボロボロの薄いコンのパーカーとクロのカーゴンパンツという服装でよろよろと歩く。


 向かってる先は正直自分でもよくわかってない。ただあの家にいたら自分は死ぬという事実が、自分の足を動かしているというのはわかる。


 今まで漠然と14年生きてきて、生と死の実感を持たずに生きてきた。そんな自分でも死ぬのは怖いらしくまだ生きていたいと、訴える本能に従い歩き続けた。


 だが、既に限界に近い身体に力が入らず道路の端に座り込んでしまう。少し此処で休憩して、体力が戻ったら動き出そう。そう決めてからもう何十分もの間近くを通り過ぎていく人通りを眺める。


 日本人は優しいし親切というイメージをテレビではよく売り出してるが、明らかな面倒ごとの匂いしかしない自分に関わる気がある人はおらず、横目にチラ見しては見なかった事にして通り過ぎていく。


 1ミリも動く気がしない身体をなんとか丸めて体温が下がっていくのを食い止めようと体を丸める。視線が下がり自身の灰色の前髪と足元を眺めながら自分の人生を振り返る。


 先ず俺狼原 灰(カミハラ カイ)が物心ついた頃には父親はいなかった。仲間と共にアビスに挑む凄い冒険者だったらしいけどアビスの魔物には勝てず死んだらしい。なんでらしいかというと母さんがそれしか教えてくれなかったから、本当の所は良くわかってない。


 碌な思い出もなく勝手に死んだ父親の事はどうでもいいが、母親は優しい人だったがいつも泣いていた。


 この髪色から察する事が出来るように俺の父親は外国人で日本人の母親は結婚を反対する実家とは縁を切り駆け落ち同然で結婚した為、物心ついた時には母親1人で育てられていた。


 家は貧しかったし、父親譲りの灰色髪と金の瞳の外見、極め付けは、父親がいないという事実によく周りから虐められたが別に辛くは無かった、唯一自分を肯定してくれ存在(おかあさん)がいたからだ。

 でも母さんは違ったらしい。母さんは俺が成長するにつれておかしくなっていった。小6になる頃には家に帰らなくなる日が出てきたり、急に帰ってきては暴れたりもした。俺も家事をやったり、勉強を頑張ったりしたが、母親の心には焼け石に水だったのだろう。

 今日の夜、母さんはいつも通りに発狂し枕を殴りまくった後、「ごめんねカイ、もうお母さんお仕事頑張れないの」と啜り泣きながら言った。


 此処数年は2、3ヶ月に1度は似たような事を言っていたし、根本的な解決が出来ない俺は、その時何も言えず黙って晩御飯を用意するしか無かった。それがあの人なりのSOSのサインだなんて気付きもし無いで。


 今日の晩ご飯を食べた後俺の意識は暗転した。起きれたのは奇跡か、俺の生物としての本能が優れていたかのどちらかだろう。


 目が覚ますと視界は煙で満ちていた。抜けてる俺でもこの状況を見れば一瞬で事態が分かった。母親は俺に薬をもって無理心中をしようとしたのだ。

 

 かなりの煙を吸った俺は朦朧な意識の中でも生きる事に必死だった。兎に角此処から出ないと死ぬという突然湧いてきた死の恐怖がなんとか地べたを這わせてボロアパートを脱出させた。


 新鮮な空気にを何度も息を吐いては吸うを繰り返している内に気づく。倒れた母親がまだ中にいる事に。俺は母親を外に連れ出す気にはなれなかった。ああする他、あの人は休めないって思ってしまったんだからもう休ませてやらないと。自然と頬を伝う涙を放置して、夜の街を裸足で歩き始めた。


 今に至るまでの過程を振り返ってみて過去を思い出して、これからに思いも馳せる。


 どうみてもやばい状況だ。此処からどうすればいいのだろう。というか、先ず何をするべきなんだろう。纏まらない思考を延々と続けていると、視界の上に自分の前髪と爪先以外の物が入ってくる。


 ブーツだ、正直見覚えはない。瞬きを何度しても靴が視界から消える事は無い。ゆっくり顔を上げる。


 目の前にはサングラスを片手で持ち上げてその黒曜石の様な黒い瞳で瞬き1つせずにこちらを眺める黒髪の美女と目が合う。


 背は俺より高く170近くあり大きめのグレーのコートを着こなしている事から手脚が長く相当スタイルがいい事が街灯のお陰でわかる。


「ケホッ…ケホッ…なんだあんた」

「なに、いい奴がいたらスカウトしようと夜の街を徘徊してたら、薄着のガキが裸足で蹲ってるもんだから警察でも呼ぼうと思って近づいたら、私のスキルに反応すんだもんなぁ。どうしたもんか悩んでたんだ」

「ケホッ…何言ってんのかわかんねぇ」

「ハハッ、威勢の良いガキだな。取り敢えずお前の話を聞かせろ面接だ」


 意味わかんない美女と話していると段々と意識が遠のき始めた。このヤバい女に変な事された上で死ぬ。でも最期に変な人でも喋ってくれる人がいたんだから良かったか。


 もし夢が叶うなら大金持ちになって、母さんと2人で暮らせる家と豪華な飯を手に入れ、


「家と…飯」


それだけ声に漏らして俺の意識は再び飛んだ。





取り敢えず毎日投稿頑張ります

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