第40話 出発前夜
インガスの街に戻った一行は、商人ギルドで、魔物を買い取ってもらい、少なくないかねを手にしていた。
『このまま冒険者をしていても、暮らしていけそうな感じだね~』
受け取った金貨をアイテムボックスにしまったロックはご機嫌である。
『さて、宿に戻ってから事情を説明するよ』
波高は4人に話しかけた。
・・・
何故か、まっすぐ宿にはいかず、武器屋に寄った
『いらっしゃ・・・』
出迎えたのはスキンヘッドのクローネである。
『あの、何か不都合でも・・・』
波高に恐る恐る聞くクローネに
『長年、剣や槍先を預かってもらってありがとうございました』
といって、あるものを出す。それは、先ほどの洞窟の床にあった金属の塊であった。車輪止めに使われていたこの金属の塊を波高はこっそり自分のアイテムボックスに回収していたのだった。
『これは・・・』
『あなたなら、これが何だかわかりますよね』
クローネが言いかけた言葉を遮る波高。クローネはただ頷いている。
『差し上げます』
とだけいうと、店を出て行った。慌てて後を追う4人。
『このことも宿で説明します』
とだけ波高はいった。
・・・
(とんでもないものを受け取っちまった・・・)
クローネは金属の塊を見ていた。これは、この世界では存在しない金属、ジュラルミンだったのである。ただ、クローネにはその使い道が解らなかった。
(これは、うちのご先祖様が言っていた飛行機の材料に違いない・・・)
とりあえず、新たな家宝として保管するべく、奥の部屋に持って行った。
・・・
宿に戻った波高達であったが、次のポテトフライの材料ができるまで休憩していたセレスとベルを呼び、明日、出発することを告げた。と同時に、波高は、ロックの預けておいた道具をベルに渡す。
『これはなに?』
ベルの問いに生の芋も1つセレスに持ってきてもらうと、波高は使って見せた。
『すごい』
そう、これは、芋を簡単に薄切りできる道具だったのである。
『これがあれば、作業も楽になるはず・・・』
『明日出発するけど、頑張ってね。』
そういうと、波高は部屋に戻ろうとしたが、
『そういうことなら、今日は送別会をしてやる!!』
なんと、宿の主であった。
『この2人のおかげで、俺ももう少し頑張ろうと思うようになった。おかげで店も繁盛している。ちゃんと礼をさせてくれ!!』
・・・
部屋に戻った波高は、セイン、ロック、シャールカ、プレーンを部屋に呼び、事情を説明し始めた。
『まず、あの洞窟は、討伐基地や中央基地と同じように作られている。つまり、初代アンクス王との関りがあるものだということ』
よく意味の解らないまま、4人は頷いている。
『あの中にあった飛行機はセスナ172という飛行機で恐らく飛行可能だろう』
『ウェブハイトさんは、あれを操れるのか?』
プレーンの問いに
『もちろん』
『アンクス王宮の部屋には、私にしか読めない文字で書いたものがあった』
そう言って、袋から出したように見せかけて、アイテムボックスから本を取り出し、挟まっていた紙を見せる。日本語で書いてある文章なので、4人にはわからない文字であった。
『この紙には、洞窟にセスナ172を置いておいたこと、そして初代 アンクス王が中央基地で待っていると書いてある』
波高がここまで言ったところで、
<<ええええええええええええええええ~~>>
と今までの中で最大の声が4人から発せられた・・・。
・・・
なんとか4人に落ち着いてもらい、先を続ける波高。
『初代 アンクス王は生きていると・・・』
セインは半信半疑といった感じで波高に聞いてくる
『おそらくは・・・』
波高も疑問に思いながら答える。
『いままでの出来事から、初代 アンクス王は、何等か意図的な思惑を持っていると思う』
頷いている4人。本当に理解しているのかはわからない・・・。
『セスナ172で中央基地に戻り、初代 アンクス王にあってみる必要があると思っている』
またまた頷く4人。
『明日、再びボンネヒルに行って、そこから中央基地まで飛行しようと思う』
『ウェブハイトさんが乗ってきた鳥より小さい気がするけど大丈夫なの?』
シャールカが聞いてくる。
『うん。この飛行機は160馬力しかないけど、なんとか行けるはず』
(・・・)
結局意味の解らない4人であった。
・・・
夜は、宿の主の宣言どおり、宴会が開かれた。なんと、この日の宿泊客も無料招待となり、大騒ぎである。
『こんなにしていただいていいのですか』
波高は宿の主に聞くと、
『いや、あの芋料理は参考になった。これくらいしないと罰が当たる』
宿の主はご機嫌である。ここ数日で相当儲かったらしい・・・。
『セレスとベルをよろしくお願いします』
波高は宿の主にいうと
『責任もってここから嫁に出すから安心しろ!!』
といった。その声が大きかったせいで、声が聞こえたセレスとベルは顔を真っ赤にしている。
(セレスとベルは大丈夫そうだ・・・)
沢山並べられた料理の数々。その中にポテトチップスとポテトフライ(もどき)がうず高く盛られていた。セイン、ロック、シャールカ、プレーンも満足そうに食べている。その食べ方はただ豪快としか言いようがなく・・・王子であるセインを含め、完全に冒険者の姿であった。セレスとベルは、追加で何か作っているらしく、厨房との間を行ったり来たりしている。
『実をいうと、オーガやオークの肉がかなり安くなっていてな。こんなに沢山作れたという訳なんだ・・・』
宿の主はご機嫌である。
(その原因はたぶん・・・)
きっと、街の人も、安く肉が買えていいんじゃないかなあ・・・と勝手に思う波高であった。
・・・
参加者のお腹が膨れて皆の動きが鈍くなったころ、波高のところに、セレスとベルがやってきた。
『本当にありがとうございました。何とか生きて行けそうです』
セレスとベルは口をそろえて言う。そう、あの村にいたままでは、おそらく無事ではなかっただろう・・・。家族や村の人がなくなって見捨てられて・・・。街で村の人と会ったらどう思うのだろうと心配になり、
『村の人あったりした?』
と聞いてみると・・・。
『会ってない』
と2人声をそろえた。
『襲われた村の人達がインガスに向かう途中で魔物に随分襲われたと聞きました』
セインが悲しそうにいう・・・。
『一人も出会わないということは・・・』
ベルが途中まで言いかけて黙ってしまう。
見捨てて行った村人と言えども、同じ村に暮らしていた元仲間だからなのだろう・・・。
『そうか・・・』
波高は何と言っていいのかわからなかった。
『ここで頑張っているから、インガスに来た時は必ず来てね』
セレスの言葉に頷く波高だった。




