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第41話 セスナ172

 翌朝、宿の主とセレス、ベルに挨拶して、波高達5人はインガスを出発した。離陸できそうな平らな土地は、ボンネヒルにしかなさそうだったので、再びボンネヒルに向かっている。途中、オーガとオークが2匹ずつ現れたので、今後の食料としてロックのアイテムボックスに収まった。

『貯肉OK~♪』

ロックは何故かご機嫌である。


・・・


ボンネヒルについて、周りを見回し、他の冒険者や魔物がいないことを確かめた後、セインにセスナ172を出してもらう。1070kgの物体が何もないところ出てくるのは圧巻であった。

 波高は早速、機体の外部点検を始める。他の4人は周辺の警戒に当たってもらう。

『エンジンテストをするので、騒音が出るのと、飛行機の後方に風が発生するので注意してね』

そういうと

波高は操縦席に座った。飛行機の後方にいたシャールカとプレーンは左右に避難してもらう。波高は、アビオニクスパワーを入れた後、計器の電源を入れてみる。交信する先がないので無線の状態は解らないが、見た目には正常である。周囲を確認して安全を確かめると、イグニッションキーを回す。プロペラが回転した後、エンジンが無事掛かった。

ものすごい騒音が周辺に発生する。幸い、近くに冒険者はいないようだ。

エンジンのランナップをするため、しばらくパーキングブレーキをかけたまま、ふと、外を見ると、セインが飛行機の後方を指さして何か言っている。波高が後ろを見ると、1匹のミツツノが飛行機に向かって突進していた・・・。

(やばい・・・一か八かやってみるか・・・)

フットブレーキを踏んたのち、ミクスチャーをフルリッチにする。エンジンの回転数が上がった結果・・・ミツツノは予想していなかった強風に煽られ、飛んで行ってしまった。

(作戦成功!!)

その後、オイルの温度がグリーンのゲージ内に入っていることを確認してエンジンを停止させる。

セインたち4人に乗るように指示する。魔物がくると厄介なので急いでもらう。

結局、プレーンが貨物室に座ることになった。


・・・


再びエンジンをスタートさせ、ブレーキを解除、セスナ172は速度を上げていく、波高は、セスナ172を阿蘇場外飛行場で離発着させた経験があるので、その経験を生かしてフラップを10°の状態で機体が浮くのを待つ。50㏏を超えたところでわずかに浮いたところで、そのまま水平飛行をして速度を上げていく。牧場など舗装されていないところでの離陸の基本である。そうしないと、草の抵抗で速度が上がっていかないからだ。70㏏を超えたところで上昇を始める。ここまでくれば、上昇しても大丈夫。5人乗っているので、明らかに重量オーバーな気がするが・・・。地球ではないので気にしないことにする。


・・・


進路を南西にとりながら、ひたすら高度を上げていく、これは、大山脈を超えるために9000ftまで上がらないといけないためと、地上から見つけにくくするためである。

何せ、飛行機はこの世界にはないはずのもの(のはず)なので・・・。


・・・


5人乗って9000ftに上がるのは大変であった。それでも約20分の格闘の末、大山脈を越せる高度になったところで、VORを中央基地(112.8MHz)にセットする。万一を考え、VOR1とVOR2共同じ周波数にセットすると、2つのVORは210°を示した。ラダーを踏んでゆっくり方位を合わせる。この世界では、風が穏やかなので、ホーミングで進んでもほとんどロスがない。上空は快適であった。

セイン、ロック、シャールカの3人は3回目の搭乗なので、既に驚きもしない

『この飛行機は狭いね』

などとセインが言っている。

『でも、下はよく見えるでしょ』

波高はセインに答える。セイン、ロックシャールカは下を覗き込んでいる。

『この飛行機は翼が上についているから下が見やすいんだよ』

波高は操縦しながら説明するが、あまりよくわかっていないようだ。そして、貨物室のプレーンはさっきから一言も話さない。

『プレーン大丈夫?』

シャールカが覗き込むと、顔を真っ青にして震えているプレーンがいた・・・。

『なんで、みんな平気なんですか~!!』

プレーンが叫んだ。

『慣れだね』

『慣れたんだよ~』

『慣れれば平気』

とセイン、ロック、シャールカが返答する。

『外を見ていた方が、落ち着くよ』

波高はとどめを刺した・・・。


・・・


3時間後、ハイム村とその先の中央基地が見えてきた。大山脈を超えたとこから、波高は高度を下げ、5000ft付近で飛行していた。これ以上下げると、地上から目立つと思われたからだが・・・。

『Ceesna172 こちら中央基地・・・』

突然、無線機から声が聞こえた。念のためCOM1を122.6MHzに、COM2を118.7MHzにセットしていたのだが、どちらかの周波数で呼びかけてきた。

5人とも驚いたが、波高は操縦席のマイクを持ち、プレストークスイッチを押した後、

『こちらセスナ172 中央基地への着陸を要求します』

と返したところ、

『中央基地への着陸を許可します』

との応答があった。

<<初代 アンクス王!!>>

5人がほぼ同時に叫んだ。

無線で会話するのも面倒なので、早く着陸することにした。中央基地の少し北にいたので、そのまま、ベースレグに入り、フラップを降ろし、降下姿勢をとる。滑走路に正対したところで、フラップを30°まで降ろし、60㏏をキープしながら降りていく。久々のセスナ172での着陸であったが、無事接地した。セイン、ロック、シャールカは平然としていたが、プレーンはかなり怖がっていた。

『もう着いたよ』

接地したところで、シャールカがプレーンに呼びかける。プレーンは、顔を上げ、周囲を見渡すと、安心したのか気絶してしまった。

『やれやれ・・・』

『あれまあ~♪』

とセイン、ロックが反応する。

(そんなに怖いかな)

波高は、格納庫前に飛行機を移動させながら思っていた・・・。


Cessna172で山を越えるのは大変です。

2022/3/16 誤記修正

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