第31話 ロンジンとロシジア
今回は短いです。
エミールはロンジンに帰国していた。結局、正体は掴めなかったが、ローマン王国のセイン王子が冒険者風の恰好で馬車に乗り込み、わずかな護衛と共に、東の街道に消えていったのを確認したからであった。
(あれは絶対に何かある)
彼は、馬車のあとをつけて行った。国境の街キニシアの宿に泊まったのまでは把握できていたのであるが、その夜、ローマン王国兵が宿に突撃したという情報を最後に、セイン王子の足取りがわからなくなってしまった。しかし、足取りからはアンクス王国に向かおうとしたのは違いない。それに、王子であるにもかかわらず、冒険者風の衣装を着ているというのもおかしい・・・。何等の密使、もしくは逃亡・・・。
(とにかく一度報告した方がよい)
モスビスにある元王宮、現在のモスビス=ベルミーヤの自宅兼執務室 のある建物に急いだ。
・・・
『何、ローマンに調査に出したものが帰ってきたと』
『はい。』モスビス防衛隊長は部下であるエミールの無事にほっとした後、ただちにモスビスの元に報告にいったのであった。
『とにかく、わかったことを説明させろ。面倒なので、直接聞く!』
・・・
『・・・というわけでございます』
エミールはベルミーヤにローマン王国で確認での出来事を説明した。
『つまり、謎の鳥は南から戻ってきて、ローマンの上空を北に向かったということだな』
『はい』
『更に、セイン王子が冒険者の恰好でアンクス王国に向かい、キニシアで自国の兵に襲われた・・・』
『はい』
『セイン王子が捕まったのを誰か見たのか?』
『それが、護衛の5人が捕まっていたのは確認できたのですが、冒険者風の服装をしていたセイン王子たち4人は行方不明・・・』
『の訳があるまい!!』
<<ひえ-!!>>
ベルミーヤの一喝に隊長とエミールは硬直した。
(どうやったのか知らないが、セイン王子たちはアンクス王国に脱出したのだろう・・・しかし、何故・・・。異世界からの召喚者にとって、アンクス王国に行かねばならない理由があってもおかしくないが、ローマン王国がそれを邪魔するとは思えない。)
ベルミーヤは状況を分析していた。
『それからお前は、どのルートで戻ってきたのだ。』
『はい。ローマン王国の南に出てから西峠を抜けてきました』
『つまり、ローマンにはいっていないのだな・・・』
『はい・・・あ!』
ここでエミールは重大なミスをしていたことに気が付いた。ローマン王国が、キニシアでの動きにどのように反応したか見る必要があったのを見落とし、ローマンを経由せずに帰国してしまったのだった。背中にひんやりしたものが流れたような気がした。
『もう一度ローマンに調査に行ってこい。キニシアの兵に対して、ローマン王国がどうしたのか確認してこい。そして、ローマン国の北側にあるという遺跡について確認してこい』
ベルミーヤの怒声が響き渡った。
『遺跡ですか・・・』
エミールが確認すると、
『そうだ。ハイム村というところの西にあるらしい。初代 アンクス王が関わっている遺跡だ。謎の鳥はそこにいるに違いない!!』
・・・
リシューはロシジア王国に帰国していた。王宮に帰るなり、そのままロイズ王の執務室に入るなり
『お父様!!ただいま帰りました!!』
と叫んだ。
ロイズ王は、他の予定をキャンセルして娘であるリシューの報告を聞いた。いや聞かないわけにはいかない状況であった。
『・・・ということです』
リシューは途中で見た鳥の話、ローマン王宮で会ったウェブハイトとの話をした。
『つまり、瘴気を封印するためにローマン王国はウェブハイトなるものを召喚した。鳥の正体は、ウェブハイトが異世界から持ってきた“空を飛ぶ道具”であると・・・』
『はい、お父様。今は彼らの動きを見守るしかありません』
『わかった。今は様子を見ることにしよう・・』
ロイズ王は不吉な予感がしてならなかった。
(せめてロンジン国との国境に配した兵を魔物に対策にあてれれば・・・)




