第30話 カスパーからアンクス ペイへ
セインたち4人は、東峠を下り、昼一(午後3時)にはカスパーの城門にきていた。4人もと、セインとロックは冒険者登録をしてあったので何も問題がなかったが、波高とシャールカは何も持っていなかった。
『お前たち2名は冒険者の連れということか?』
『はい』
『どこから来た』
『ハイム村です』
『ハイム村?』
シャールカと門番の問答が続く。
とその時、門番の後ろから声がかかった。
『ちょっと待て』
明かに高位の軍人と思われる人物は、そういうと何故かセインのところにひざまずき、
『ローマン王国のセイン王子とお見受けします。私、ビスマルク閣下親衛隊のアルターと申します』
ビスマルクと言えば、アンクス王国の宰相のことである。その親衛隊というからには、それなりの人物なのだろう。
『ビスマルク様から丁重にお迎えするように命を受けております』
そういうと、あっけにとられている門番を無視してセインたち4人を用意した馬車に乗せ街の中に宿に移動した。
・・・
宿についたところで、アルターは事情を4人に説明してくれた。
『昨日、キニシアから使者が来まして、セイン王子の偽物が国外逃亡を計っているので協力してほしいと言ってきました。なので、王子たちがそろそろ来る頃だと思った次第です』
『ええええ~』
セインが声を上げる。
『アルバンがセイン様を捕えようとしていることは、把握しておりました。』
『はあ~』
セインはうなだれた。これではアンクス王国に内輪の恥が筒抜けではないか・・・。
『ローマン王国に入っていくわけにもいかなかったので・・・』
アルターは申し訳なさそうに話すが、これは当然のことであった。
『ここからは、アルターが責任をもって、アンクス ペイまで皆さまをお連れさせていただきます』
アルターは胸をはった。
(随分扱いが・・・)
・・・
翌日、アンクス王国の馬車で移動となった。さすがに襲ってくるものはいない。但し、馬車は時々止まる。
『魔物が出てまいりましたので、しばらくお待ちください』
とアルターに言われ、しばらくすると、何事もなかったように動き出す。
その繰り返しであった。
・・・
4日目の昼過ぎに大きな街が見えてきた。
『あれがアンクス ペイだ♪』
ロックが他3人に伝える。街の大きさはローマン王国を上回るのではないかと思われる大きさである。
『おそらく、この大陸最大の街だ♪』
ロックはいう。セインがちょっと悔しそうな顔をする。シャールカは、田舎から出てきた観光客のような感じで、街をただ見ていた。
『でかいな』
波高は何故か見覚えがあるような、不思議な感覚であった。
・・・
城門はスルーパスであった。アルターの一言で済んでしまったらしい。
いかにも高級そうな宿の前で馬車は止まり、1人ずつ部屋の鍵を渡された。
『本日は、宿にお泊りください。明日、お迎えに参ります』
そう言ってアルターはいなくなってしまった。
『こんな高級な宿に泊まったことがないんだけど・・・』
シャールカがいうと、
『この宿は、国外からの外交使節専用の宿だ。確か、アンクス ペイにも1軒しかないはず・・・』
セインが説明を始める。
『詳しいのですね』
波高がセインに言うと、
『以前、一度来たことがあります』
(なるほどね。)
波高はセインがこの宿のことを知っている理由に納得したのだった。
・・・
キニシアで、外交用の礼服は失われてしまったので、そのまま冒険者の服装でアンクス王と会うつもりであったが、翌朝には、4人分の礼服が用意されていた。シャールカなどは、初めて着るとか言って大騒ぎ・・・。迎えの馬車でやってきたのは、アルターだった。
『慌てて用意させていただいた礼服なので、お気に召さないかもしれませんが、お許しください』
(いえいえ、十分です)
『大変ありがたいです。お気遣いありがとうございます』
さすが、セインである。王子は言うことが違う・・・。
そのまま、迎えの馬車に乗り込みアンクス王国の王宮へ行くことになった。
・・・
王宮の控え室に案内された後、その部屋に来たのは、1人の老人であった。
『ようこそ、アンクス王国へ』
老人は一言いうと4人が座るソファーの反対に座った。
『セイン王子。ご無事ななによりでした』
『ビスマルク卿。久しぶりです』
セインの言葉に、他の3人は驚いた。
<<この人が 宰相ビスマルク!!>>
アンクス王国の宰相にして、事実上の国王代行者ともいわれる実力者である。実際には、アンクス王より15歳も年上であるため、今のアンクス王が遠慮してしまっているだけなのだが・・・。
これから、国王に会っていただきますが、面倒な謁見の間は省略したいと陛下が言われております。なので、今から国王の執務室にご案内させていただきます。
『こちらはかまいませんが、他国のものを執務室に入れてしまってよいのですか?』
セインが気になって問うと、
『陛下がどうしても、ウェブハイト様に見ていただく必要があるところがあると言われております。それと、合わせたいものがいるそうで・・・』
・・・
ビスマルクの先導によって、アンクス王の執務室に4人は通された。そこには、初老の老人と、見覚えのある女性がいた。
『ようこそ、アンクス王国へ!!』
初老の老人が叫んだ。
『陛下、大声を出されては、近衛兵が驚きます』
ビスマルクがたしなめる。
『そうじゃった。わしが、アンクス=フォン=ミクスだ。アンクス王国の国王をしている』
なんと、自ら先に名乗り出した。
『そして、隣の娘が世話になったそうで・・・礼をいう』
といって頭を下げた。もう大変なことである。
『アンクス王。このたびは手厚く歓迎していただき大変ありがたい』
と言って、セインは、ローマン国王である父の書状を手渡した。
『書状は守り通されたのか。立派ですぞ。』
アンクス王はセインをほめた。
波高は、あまり王宮の事情に詳しくないので、何事もなかったかのように話し出した。
『私は、ウェブハイトと言いまして・・・』
波高が話始めた途端、アンクス国王が話を遮る。
『話はシルダに聞いておる。面倒な話はあとだ。召喚者殿には見てもらわなければならないものがある』
アンクス王はいきなり核心をついてきた。回りくどいのは好きではないらしい。
『ウェブハイト殿。そなたには、アンクス王の伝承をお伝えしなければならないのだ。』
波高は、アンクス王にも、伝承があるとみていた、まずはその情報を知りたいと思っていたが、いきなり話始めるという・・・。
『伺わせていただきます』
波高は答えた。
・・・というわけじゃ。
『つまり、瘴気の発生個所は5か所、封印するには同時に封印する必要があると・・・』
『そうじゃ』
波高の内容を確認する発言に、答えるアンクス王。
(ローマン王国にあった資料と内容は一致する。確か、アンクス王国にはその場所を示した情報があるはず・・・)
『瘴気の発生場所については、この奥にある部屋で確認してほしいのじゃ』
『ここにも召喚者しか入れない部屋が・・・』
と言いかけた波高に対して、
『あるのじゃ。初代アンクス王が作られたらしい・・・』
・・・
アンクス王は暖炉を指さした。使用された形跡の暖炉を見ながら、
『あの先に我々では入ることができない部屋がある』
よく見ると小部屋が見える。
『あそこには、瘴気の発生場所に関する資料があると伝えられている。』
(ローマン王国の隠し部屋にあった情報と一致する)
波高は、暖炉の先の小部屋に向かった。無論、一人である。入ってみると、長年誰も入っていないはずなのに、ピカピカに磨かれた床に壁、そして机の上に書と地図、そして波高であれば知っているものがあった。
地図には5か所に印があった。内1つはこの大陸の北の森の中。残りは、大山脈の山の頂上付近らしかった。本を開いてみると、そこには、日本語でいろいろ書かれていたが、波高は見出しを確認するとその本をたたんだ。そして目のまえにあるものを発見した。
(もしかして・・・)
波高が手を触れると、それは消えた。そして、波高が念じた瞬間、机の上にあった物が消えた。
(やっぱり・・・)
そう、波高が手にしたのは、ロックが持っているアイテムボックスであった。
(この本はこの世界の人に見せてはいけないという意味らしい・・・)
波高は他に何もないことを確認して、部屋を出た。
・・・
波高が戻ってくると、アンクス王はじめ、そこにいた全員が波高の方を見ていた。
波高は、ポケットから出すふりをして、地図を出して見せた。
『これが部屋にありました』
それは、アンクス王家に伝わる、瘴気の発生個所を示した地図であった・・・。
『言い伝えは誠であった・・・』
アンクス王はつぶやいた。
『初代 アンクス王からのメッセージがあるようです』
皆の顔が引き攣った。
『なんと・・・』
アンクス王が何か言おうとしたが、途中で黙ってしまった。波高がポケットから出すふりをして取り出した物をみたからである。
『それはなんですか?』
セインが聞いてきた。
『これは、ICレコーダーというものです』
波高が答えた。
(???)
波高以外の全員が一斉に“わからん”顔になった。
『これは、会話を録音しておくことが出来る装置です』
波高は言った。では、これから再生してみます。
中には、1件だけ録音記録があった。再生ボタンを押すと、ICレコーダーは、低い声の男性の声を出し始めた。
この記録を聞いているということは、再び瘴気が発生し、新たな召喚者が呼ばれたのだろう。ここや、ローマン王宮に置いた資料などで、5か所の瘴気発生個所に同時にブイを入れ、封印する必要がある。そのためには、召喚者以外に5人の協力者が必要だ。だが、この世界の人間の力では、1つ破られた状態の瘴気発生個所にたどり着くことはできまい。そこで、魔物剣を作り、この国のある一族に保管させた。そのものは、魔物が出たら、魔物の発生個所に近づいて、魔物を討伐する能力を上げるように言い伝えてある。なので、魔物発生個所に行って魔物剣を持つ協力者を探しなさい。見つけた後は、ローマン王家に残したレーダーと発煙筒を使い、日時を決め、5ヶ所の瘴気発生個所に向かわせなさい。
そして、ローマン上空9000ftで待機させた飛行機で確認し、討伐基地の装置を稼働させなさい。それ以外に瘴気を抑える方法はない。
もし、装置を稼働させる前にブイを破壊されたとき、5か所全てに設置しない状態で装置を稼働させたときは、封印出来なかった個所から瘴気が溢れる。その時どうするかは召喚者にゆだねる。以上、健闘を祈る。
ICレコーダーはここで再生を終了した。再生終了後に爆発したり、消滅したりはしなっかった・・・。
『これが、初代王の声・・・』
アンクス王が何やらぶつぶつ言っている。
『今後どうするか相談しませんか』
冷静なビスマルクが皆を会議室に導いた。
・・・
『ウェブハイト殿。どうすべきか言ってくれ』
アンクス王が口火を切った。セイン、ロック、シャールカ・・・皆の視線が波高に集まる。
波高は、深呼吸した後、
『まず、4人の協力者が必要です。そして、北の森に行ってくれる、魔物剣の所有者を見つけなければなりません』
波高は先ほど出した地図を見せながら話す。
『北の瘴気発生個所は、魔物剣の所有者にまかせるしかないでしょう。他の同行者は補助しかできないでしょうが、サポートがいたほうがよいと思います。』
一同の首が縦に振られた・・・。
『そして、残りの4ヶ所には、ここにいるセイン、ロック、シャールカに向かってもらうしかないでしょう。もう1人は・・・』
『私にさせてください』
ここまで無言であったシルダが口を開いた。
『では頼む』
『アンクス王。5か所に派遣するメンバーのサポートをする兵を出してはいただけませんか?信用できるものでないといけませんが・・・』
アンクス王がビスマルクの方を向く、ビスマルクはそれだけでアンクス王の意図を察した・・・。
『それは、ビスマルクが我が親衛隊を派遣させます』
『何人いますか』
『5分隊、各20人います。間違いなく、この国、いや、この大陸最強の手勢です』
ビスマルクの回答にアンクス王は頷いている。
『では、ビスマルク殿は軍勢の準備を』
『セイン王子はローマン王国に書状を書き、協力をしてもらうように伝えてください。その時、ロンジンとロシジアにも使者を出して、事情を説明するように伝えてください』
『それは我が国から出してもよいが・・・』
アンクス王は、ローマン王国中心に事が進みそうなのが、ちょっとおもしろくなかった。
『私がこの世界に来る前に、ローマン王国で対策会議をしたと伺っています。なので、その会議の続報として話をしてもらった方がよいでしょう』
波高は冷静であった。
『そして、セイン、ロック、シャールカは私と共に魔物剣の所有者を探す旅に出ましょう』
ここまで、波高がいったところでシャールカが、
『あてはあるんか』
と首をひねりながら言ってきた。
『おそらく、瘴気の発生地点に近いところにいるだろう』
波高の推測に
『であれば、インガスの街に行ってみるのがよいでしょう』
ビスマルクが答える。
『あの街が現在の最前線なので・・・』
やっとアンクス ペイに着いた。
2022/3/15 誤記修正




