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湯治

 さてと、思いのほかお金が手に入ったことだし、とりあえずは腰痛の治療も兼ねて温泉宿、よね。


 なんてことを考えながら、あまり村に住んでいる人間が近寄らない繁華街の方へと歩を進めるあたし。途中、ひったくりを捕まえてお礼を貰ったりすることは忘れずに、しっかりと、ちゃっかりと。


 村でいちばん大きな旅館はたしか……亡母の友人が経営していたよーな……避けるべきよね? と思ったかどうか、といったタイミングで、大きな旅館から大きなおかみさんが大きな声を出しながら走ってくるのが見えた。


 うわわ、いちばん面倒なひとに捕まっちゃう! 慌てて身を隠すあたし。そして走り去るおかみさん。どうやら、夕食の食材を盗って逃げたなにかを追いかけて行っているようで……なんとなく視線を感じるような気もしたけれど、あまり気にせず今のうちだとばかりにそこから見えない死角にある、小さな旅館にチェックインすることにした。


「食事付きで1週間金貨1枚でどうだい?」


 そう持ちかけてきた店主に、なにか既視感を覚えるあたし。


「えーっと。1週間1枚ってことは、ひと月だいたい4枚よね。まさか、あなたまであたしをカモにする気? 冗談じゃないわ。1日銀貨1枚、それ以上は払えないわね。」

「カモだなんてそんな、人聞きの悪いこと言わないでおくれよ。ただな、払える人間から取るってのがポリシーなんだよ」

「あらそう。でもおあいにくさまね、あたしは持ってるから払える人間じゃなく、持っていても払わない人間なのよ。――わかったらさっさと宿帳作って?」

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