有名店の店長は相棒と話す
よお、トニック。
明日、城行くんだって?
しつこいよな、こないだお断りしたってのに。
で、どうするんだ。
………そうか、やっぱりな。
ははっ、ほぼ間違いなく断ると思ってたからな。
言っておくが、俺はお前がどんな処罰を受けたって、手放す気ないからな。
はっ、解雇する気になったらその時に捨てるけど、まだトニックが作るケーキを隣りで見てたいからな。田舎に追い出されても、営業許可が下りなくなったとしても、まぁ、なんとかなるだろ。昔だって、なんとかやれてたんだ。
………そうだな。
夢みたいだよ。
こんな立派な店の店長できて、天才パティシエがいて、有望な部下を抱えて。
ちょっと前まで、あんなクソ小さい店をなんとか経営してたのにな。
別に環境が一からになってもいいだろ。
あの頃にちょっとばかし戻るだけだ。
あの大会が、俺らの大勝負だったな。
…あー、実は今まで隠してたことがあるんだ。
はっ!そんなわけないだろ!俺は世の中で賄賂が一番嫌いなんだよ。……あぁ、賄賂をどれだけ恨んだことか。王家御用達なんかクソくらえだ。
……黙ってたけど、あの当時……大会の時だ。
金が無かったから、とりあえずトニックが必要としてる材料を買っといて、そのあとに残った金で俺はテキトーにケーキ作ってたんだよ。
……いや、当たり前だろ。練習だのしてて、材料費はかさばるし、そん時は店を閉めてたんだぞ?どこに収入源あるんだよ。
だろ?だから、お前にバレないようにアルバイトしてた。日雇いのやつ。
なんでって………。
トニックに言ったら、トニックもアルバイトしただろ?練習時間少なくして。
それが嫌だったんだ。
言っておくけど、お前天才だからな。
専門学校通ってる頃は、周りから理解されてなかったけど、超絶美味くて、斬新で、有り得ないくらい繊細。
凡人じゃあ、作れないケーキばっかだ。ただ、周りの想像を越えたもんを作っちまうから、理解されなかっただけだ。
そんな天才に、アルバイトなんかさせるかよ。
まぁ、限られた金から作ったケーキで、審査を通った俺も、わりと凄いけどな。…………いや、なんか言えよ。
とにかく、トニックなら優勝できるんじゃねぇかなって思ってたから、金を優先的に使ってた。足りないなら、俺が稼ぐ。それだけだ。
つまり、トニックが天才なことを一番分かってるのは俺だ。
明日何かしらの罰を課せられて、俺から逃げられると思ったら大間違いだからな。俺達は共同経営者だ。落ちる時は二人とも落ちる。
…あ、死刑だったら即距離おくから。
まぁ、とりあえず明日城行って断ってこいよ。
俺は俺で、準備でもしておく。




