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婚約破棄のその後  作者: pipi
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【番外編】ある夫婦の会話





「ねぇ、プレゼントがあるの。」


妻は夫に、にっこりと笑った。

それだけで、周りの雰囲気を変えてしまうような華やかな笑顔である。


妻の笑顔に、夫も目を和らげる。

冷たい印象を与える男性の顔が、柔らかいものとなった。


「それは楽しみだな。」

「えぇ、楽しみにして。それに、喜ぶわ。」


勿体ぶってから、はい、と手のひらを夫に向けて開いた。

その手の上には、ブレスレットが二つ。



「こないだから、私ケイティと頻繁に会っていたでしょう?」

「あぁ。」

「それは、このブレスレットを作るためだったのよ。勿論、貴方のために。」

「自分で作ったのか?」


夫は、少し驚いてブレスレットへと目を向けた。

なるほど。たしかに、二つ共にとてもシンプルな作りのブレスレットだ。

しかし、明らかに値が張るであろう材料をふんだんに使っている事から、そこらへんの安値なものとは違う輝きがある。


「驚いたな。手作りのプレゼントは初めてだ。ありがとう。」


夫からの感謝の言葉と頬へのキスに、妻は少し顔を赤らめた。



「ブレスレットの色を見て。」

「? ひとつは、黒と青だな。もうひとつは、金と水色。」

「なにか思いつかない?」

「そうだな……、なんだろう……、」

「もう!本当に鈍感なんだから!これに気がつかなかったら、女心が全く分からない人よ!」

「そう言われても……実際女心とやらは分からん。」


色を言っても、なにか分からないなんて。

妻は一気に不機嫌になり、それでも今まで自分と同じプレゼントを送った女性はいないであろう事に少し安心する。



「じゃあ、特別にヒント。私の髪と目の色を言ってみて。」

「髪は金で、目の色は……ふ、そういうことか。」


妻からのヒントの質問に答えている途中、夫はようやく理解した。

妻の髪は金色、目の色は水色。

そして、自分の髪は黒、目の色は青である。

それぞれの髪と目の色が、ブレスレットに反映されていたのである。

妻からの愛らしいプレゼントに、夫は思わず笑ってしまう。



「たしかに、気がつかないとは、鈍感だな。」

「本当にね?私の旦那様なんだから、もうちょっと早く気付いてくれないと。」

「そうだな。」


妻は、夫の手首に、金と水色のブレスレットをつけた。

そして、自分には黒と青のブレスレットをつける。


「最初はね、手作りじゃなくて、普通に買って、貴方にプレゼントしようと思ったの。でもね、なかなか色が私達に関係のあるものって見つからなくて。」

「そうか。」

「だから、いっそのこと作ってしまおうってケイティと!」

「手作りとは思えないくらい、良いブレスレットだ。」

「でしょ?お互いの色のブレスレットって、ロマンチックじゃない?」

「あぁ。」


しばらく、若い夫婦はブレスレットを見ながらキスをして、夜の時間を楽しんだ。

そして、時計の時間を見て、そろそろ眠る時間であることを確認する。



「ケイティと計画して、一緒に作ったの。元々は私が言い出したことだったんだけど、ケイティって凝り性だから、すっかり嵌まっちゃったみたい。次はもっと難しいものを作るって。」

「君は?」

「私は、このレベルが精一杯だから。ね、明日からこれ付けて?」

「男がブレスレットをするのは一般的じゃない……、…ふ、付ける。付けるから睨むな。」

「付けなかったら離婚するわよ!」




ーーーこうして、夜は更ける。


妻はブレスレットを喜んでくれた夫に満足感を感じる。

そして、ブレスレットのお返しに自分へまたプレゼントを送ることを考えているであろう夫を、愛しく感じた。


(こうして、バカみたいにプレゼントを送りあってるなんて、友人に話したら笑われてしまうわ。)


妻は、思う。


(そういえば、前の婚約者にはこんな事を考えたこともなかった。ましてや手作りだなんて……、私って、好きな人には尽くしたいタイプだったのね。)



夫と今度はどこへ出掛けようか。何をプレゼントしたら喜ぶだろうか。

幸せな計画を考えているうちに、妻はぐっすりと眠ってしまった。







…………もちろん、マリンダのこと。


ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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