表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/54

繋がれた世界

「ようこそお出でくださいました異界のお客人。儂はトリスティアバイン王国国王ザナン・サナル・ウェルサルドゥエル・ドラスティック・サンタルス24世だ」


 翌日俺とドリームズホールディング社のお歴々はあの屋敷から世界を越えてグローリア大陸のトリスティアバイン王国の王城にやって来ていた。


 幸広に連絡して地球の屋敷の持ち主を連れていくと連絡してあるので、ザナン国王陛下が準備を整えていてくれたのだ。


「この度は急の来訪となり申し訳有りません。御初に拝謁致します。私は如月隆盛きさらぎたかもりと申します。後ろの二人は私の孫の如月琢磨きさらぎたくま、そして秘書の柏木那奈かしわぎななと申します」


 堂々と対応する会長に感心する。伊達に一社の命運を握ってきた御仁じゃないようだ。


 それから琢磨社長はお孫さんだったんだな。孫が社長なら実子は一体どこのお偉いさんなんだろう。


 屋敷への移動中リムジンの中で大体の事情は説明したが、琢磨社長は半信半疑というよりもこちらを精神異常者でも見るような目で見ていたが、真面目に俺の話を聞いている隆盛会長の手前反論は出来ないでいるようだったが、実際に蛍光ピンクのドラゴンのどらちゃんに王城まで乗せてもらった事で現実だと信じていただけたようだ。


「これはこれはご丁寧に、既にオキタ殿からこの世界が抱える一通りの事情はお聞き届きかと思いますが、我が世界では深刻な魔素不足の、そして貴殿の世界は魔素の異常濃縮で天変地異が多発しており、世界の滅亡は双方の世界が抱える問題と言っても差し支え有りません」


 幸広を通して国王陛下には隆盛会長は今後両世界の交流をしていく上で重要人物だと伝えてある。


「えぇ、初めて聞かされた時は驚きました」


「今は細い絆ですが、オキタ殿の御助力で少しずつ交易の準備を進めております。オキタ殿からタカモリ殿は今回の交易の要となるお方だとお聞きしました。どうか御助力をお願い致す」


「私にできうる限りご協力させて頂きます」


 淀みなく答えた隆盛会長の言葉に俺はこれであの屋敷への出入りに関しては心配する必要が無くなった。


 後日、俺の会社はドリームズホールディング社の子会社として吸収合併されることになった。


 なんとドリームズホールディング社の元締めは世界を又に掛けて事業を展開する財閥、それも世界の富豪ランキングにも名前が上がる如月財閥の傘下だったのだ。


 それからと言うもの二つの世界は急速に近付いていくことになった。


 隆盛会長は日本の総理大臣やアメリカの現在の大統領、各国の首脳とも面識があるらしく、ホットラインで異世界の存在が伝えられルなり、数ヵ月後にはテレビで見たことがある集団が隆盛会長と屋敷を訪れた時には我が目を疑った。


 彼らの訪問は非公式だから気にするなと言われて、はいそうですかと頷く事が出来る人材が一体どれだけいるのか……。


 一年後には世界中で異世界の存在が各国のトップの口から合同で発表されることになった。


 俺の仕事内容は各国の首相陣より依頼でドリームズホールディング社の助力を貰いあちらとこちら関所のような仕事をしている。


 各国からあの不思議なエレベーターの研究チームが組まれ、あのエレベーターはこちらのエレベーターに使用されている精密な機械技術とあちらの物と思わしき魔石の力で稼働していることがわかった。


 まだ双方の世界の魔素濃度が近かった頃にあちらから地球へ持ち込まれていた物ではないかとの仮説が立っている。


 実用化に向けての実験や試作も行われているので、あちらへの出入り手段が増えるのも時間の問題だろう。


 また高濃度の魔素の影響で絶滅した多くの種が異世界で繁栄している事にも驚いた。そしてあちらの世界で絶滅した種が地球で生き残っている。


 目まぐるしい日々の中で変わったことと言えば、わが社の幸広とミアさんがめでたくゴールインしたことだろうか。


 ミアさんと幸広、彰吾夫婦がトリティアバイン王国で挙式を上げて、幸広は世界初のトリティアバイン王国移住者となった。


 嬉しい事があれば勿論、哀しい事も起きる。


 我が家の愛犬フェンリルのポチが産み落とした一匹だけの仔犬が突然姿を消した。


 そしてタマ様の愛竜のどらちゃんの卵も同時期に消失した。


 方々探したのだが手掛かりはまだ無い。一体どこへ行ってしまったのか。


 地球産の米や馬鈴薯などの植物は魔素を多量に生産してくれるらしく、トリティアバイン王国から徐々に広がったお陰で自然界の魔素の総量が少しずつ回復した。


 また地球から多くの魔素を体内に持つ人々が、厳しい審査を受けて通訳機能がついた腕輪を受け取り、観光や高濃度魔素によって健康被害を受けていた希望者の移住を進めた。


 魔素の濃度差が緩和されたことで日本側へ来ることが出来るトリティアバイン王国の住人が増え、現在では異世界へ繋がる屋敷近辺のみと場所は限定されているが異世界からの移住者も増えてきた。


 あちらの魔石を持ち出すことが出来るようになったお陰で、通訳機能の指輪を日本に持ち出せるようになったことも大きい。


 魔術の教育が始まったが、やはり素質や英才教育が要るようで、あと十数年もすれば地球生まれのリアル魔法使いも誕生することだろう。


 核爆弾につぐ兵器として魔法が戦争に悪用されない事を願うばかりだ。


そしてもうひとつ……。


「御義父様! ホタルさんを妃に下さい!」


 ホタルに習ったのか日本流の結婚の御挨拶。土下座で俺の前でふざけた事を抜かしている男はトリティアバイン王国の王太子ドミニク・サナル・ウェルサルドゥエル・ドラスティック・サンタルス様。


 おい……婚約者だと言う貴族のご令嬢はどうしたんだ。


「えへへっ、パパねぇ良いでしょ?」


 ドミニク王太子の隣に嬉しそうな笑顔で寄り添う蛍の様子に、怒りを通り越した。


「良い訳があるかぁ!」


「だって子供が出来ちゃったし! ドミニクもちゃんとプロポーズしてくれたんだよ?」


「はぁ!? 子供っていつの間に!? ザナン陛下はこの事を?」


「ご存じです……、婚約者とは先日穏便に婚約破棄を致しました。 お願いいたします! 娘さんを正妃に下さい!」


「ドミニク……!」


 ええい! 親の目の前でいちゃつくな! 


「一成さん、許してあげたら?」


 拳を握り締めて怒りに震え、今にも目の前にいるドミニクに殴りかかりそうな俺を止めたのは美枝子だった。


「出来ちゃった結婚なんて私達もそうだったでしょ? ドミニク様なら蛍を大切にしてくれるでしょ?」


「はい! 御義母様!」


 感激したように美枝子の手をドミニク様が握り締めると、美枝子は一瞬驚いた顔をしたあと、頬を染めた。


 ドミニク許すまじ。


 内心納得はしていないが、蛍が幸せになれるなら血の涙を流そう。もし蛍を泣かせたらフェンリルのポチと御礼参りすればいい。


 蛍からのカミングアウトから半年……トリティアバイン王国の大聖堂には地球の各国の首相陣やグローリア大陸の国から参列する王公貴族が一堂に会していた。


「蛍? 準備はどうだい?」


 美枝子と一緒に新婦の控え室を覗けば、美しい純白の花嫁衣装を着た蛍が輝いていた。


「パパ! ママ!」


「あっ! ホタル様まだ動かれては困ります!」


 俺の姿を見付けるなり走りより、娘が俺に抱き付いてきた。


 蛍がおねだり以外で久し振りに俺に抱き付いたのが結婚式当日とは……。


「うふふっパパ、どうかしら?」


 俺から身体を離すと、真っ白な婚礼用のドレスを摘まんで蛍がくるりと回ってみせた。


「あぁ、蛍すごく綺麗だ……」


「うふふっ! ママ、パパが綺麗だって言ってくれたわ!」


「良かったわね蛍」


 今度は美枝子抱くつく娘の花嫁衣装が、こんなにも心に来るとは思わなかった……。


「オキタ殿、ホタル様そろそろ入場じゃよ」


 艶やかな光沢を放つドレスを纏ったタマ様が蛍を呼びに来た為、急いで最後の仕上げである代々のトリティアバイン王国の習わしに従って王太子妃が付けるティアラを蛍の希望で俺が震える手を叱咤して蛍の頭に乗せてやる。


「パパ……ううん、御父様。今まで私を育ててくれてありがとう……」


 蛍の言葉に潤みかけた涙を根性で堪えて蛍へ腕を出せば、二の腕まで長さのある純白の手袋に包まれた小さな手が掛けられる。


 トリティアバイン王国の信仰する双太陽神教の讃美歌が楽団の奏でる音楽と共に流れる礼拝堂を一歩、また一歩蛍と共に進んでいく。


 祭壇の前で佇む新郎に蛍を引き渡した。


 泣くもんか、泣くもんか、泣くもんか!


「本当にもう……素直じゃないんだから」


「うるせいやい……」



改稿版のごあんない

新タイトル

『おっさん救世主はふたつの世界を救うため、両世界をまたにかけ異世界ウェディング事業を立ち上げる事にした』

https://ncode.syosetu.com/n7721en/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ