21話 お姉様の独り言
お姉様がまた、分からない言語で話し始めました。
先程から眼の前でずっと何かに一喜一憂し、少し恥じらったり?もしているようですが
(また、私の事を見てくれません)
念話に夢中だと誰にも止められない。ソレは今の私なら分かりますが
(やっぱり淋しいですよ?お姉様?)
そう思いながら、私は姉の部屋を出る。
「せめて伝声管や魔導通信のように音が漏れてたら違うのですが」
「あっ...」「あらぁ♪⤴カーウィンじゃない♫」「お久しぶりです、エマ様」
そこで独り言を呟いていたら、ばったりとカーウィンに出会ってしまいました。
彼は私を見て気まずそうな表情を浮かべましたが、次の獲物を見つけた私は
「どうしてお姉様の部屋に?」「少し報告がありまして」
彼に何をしに来たのか尋ねると姉に報告があるというので、今は取り込み中で多分返事をする事は出来ないでしょうと告げる。
「だから私は(姉の部屋から)退室してきたのです」「そうですか」
するとカーウィンは踵を返し立ち去ろうとするので、私は「待って下さい」と声をかけ横に並んだ。そうして彼の顔を見上げながら
「何処に向かうのですか?」「それは...そうですね、機体の整備でもしようかと」「嘘ですね?」「何故そう思われたのですか?」「女の勘です♪」「成る程...」
懐かしいやり取りを交わす。すると観念したのか彼は「分かりました」「宜しい♪」臣下の礼を取ったので、私は久方ぶりに甘える事にしました。勿論節度を持って...
「エマ様?」「何?」「セシル様は?」「お姉様なら自室で一人芝居中ですわ」「はぁ?」「ごめんなさい、三歳様たちとお話ししてますわ」「あぁ!そうですか!」
ヨーマンがお姉様の居所を聞いてきたので答えましたが...彼は何の事か分からない様子だったので仕方なく私が言い直すと、ニッコリ笑って立ち去って行きました。そんな彼の背中を見ながら
(久しぶりなんだし、もう少し私に興味を持っても良いのではないでしょうか?)
私は内心、皆の素っ気なさに呆れ始める。
結局カーウィンは本当に戦甲翔の格納庫に行ってしまい、暇を持て余した私はロン爺と食堂でお茶をしていました。ソコに水筒を持って入ってきたクレアが話しかけてきたので、私は次の散策場所を聞こうとしたら
「そんなにお暇でしたら私たちと一緒に「えぇ?!そうなの?今行きますわ」...行ってらっしゃいませ」
危うく彼女に仕事を押し付けられそうになったので、私は慌ててサミーに念話する。
クレアにお茶の片付けもお願いし、見送られながら食堂を出ると
『何が〝えぇ?!そうなの?〟ですか...』『良いでしょ別に。今何処?』『寝てましたし、コレからも『却下』理不尽!』
サミーから連絡が入ったので、私は彼女の居場所を聞き出し私たちの部屋へ向かった。すると
「アレ?サミーは?」
ソコは無人だった。後でクレアに言い訳も立たないので
『ちょっと?!何処に居るのよ?』「後ろです」「うわぁ!?」
直接聞いたら、後ろから声をかけられた。
「(精神世界から)驚かさないでよ!」「そんな事してません」
私が文句を言うと、彼女はクローゼットを指差した。ちょっと隙間が開いている。彼女はその扉を閉め直すと
「それで?何も考えていませんよね?どうするんです?」「ソレは...」
サミーは圧をかけてきた。正直逃げ出す事しか考えてなかったので「知ってます!」「分かったから...」とりあえずロン爺を「居ますじゃ」呼ぼうとしたら、付いて来てくれていたようです。
「三人寄れば文殊の知恵...でしたわね」「私たちは人じゃないですけどね」「フォッフォッフォ♪」
そんな二柱に話を振ったが、イキナリ戦線離脱です。まぁサミーは元々怠惰ですし、ロン爺も死神の異名を持ちますが...基本見守り爺でした。
「どうしましょう?」
ベッドに座り私が一人でゴチると
ドサッ...(すぅ...すぅ...)
コクリ...コクリ...
速攻で二柱が寝始める。内心イラッとしつつも
(起きていても役に立たないなら、寝てても同じね)
そう思い直し、再び何をしようか考え始めた。
「あらエーやん?今暇なん?」「叔母様?!」
するとマルヴェラ叔母様が通りかかり
「暇ならちょっと遊ばへん?」「遊びますわ♪」
誘われるがまま着いて行く。すると
「あら?ご用事は済みましたか?」
ソコにはクレアが居て...横を見ると、叔母様がニヤリと笑っていた。そこで私はハメられた事に気付き観念する。
「えぇ、大した事ありませんでしたわ」
結局...逃げ出した意味など、ありませんでした。
「ソレはエマ様も同じですよぉ〜」「あらそう?」「本当やでぇ〜」
女が三人寄れば姦しいと言いますが、本当にその通りです。
お姉様の一人芝居がより酷くなったと言えば、私もそんなに変わらないと言われました。
(そうかなぁ?お姉様、隠す素振りが全くありませんけど)
「ソレはエマ様も同じですよ?」「はい?」「確かになぁ」「ソレって五十歩百歩って言うんですよね?」
私の内心にクレアが答えた事で叔母様にも伝わり、お姉様と比べられ大差ないと言われてしまう。
「さて...今日はこんなモンでえぇ〜かもね」「そうしますかぁ〜」
お話ししながら作業をしていた所為か、時間が経つのが思いの外早かったようです。
「コレでどれくらい保つんですか?」「一日」「は?」「一日やで」
私たちはこの閉ざされた戦艇内で過ごさないといけないので、その為に人力で空気の成分調整をしているのですが
「一日...って事は、毎日コレを同じだけやらないといけないのですか?!」
「そうやで」「まぁ多少の閉塞感に耐える覚悟があるなら、サボれますが...」
私が驚くと叔母様は仕方ないよね〜って感じで笑ってたけど、クレアは無理に続けなくてもと言う。だが
「サボったらその分翌日以降にサボった分だけヤラんといけんのやで?しかも急激な変化は体調不良を招くかもしれへん。それでもえぇ〜んか?」
「うっ...良くないですぅ〜」「でしょうね」「せやろ?」
叔母様はその怠慢が招く危険性をクレアに伝えると、彼女は首を竦め小さくなった。
「さて、そろそろ夕飯の支度でもしよか」「はぁ〜い」
そんなクレアを見ながら叔母様は立ち上がり食堂へと向かうと、遅れて彼女も付いて行く。
そんな二人を見送った後私は部屋へと戻ると
「ぐぅ〜」「お腹いっぱ〜い」「なら夕ご飯は要らないわね?」「!?食べます!」
ロン爺とサミーがまだ寝ていた。そんな彼女の耳元で私が囁くと、飛び起きてヨダレを垂らす。
「アナタ一応侍女なのよ?」「一応なんですね」「...」「行ってきまぁ〜す」
「?!もう飯なんかのぅ?」「まだですよ?ロン爺」
改めて私が彼女に自身の在り方を口にすると、悪びれもしないので思わず魔力が溢れてしまった。すると彼女は身を震わせながら、逃げるようにして部屋を出て行く。
因みにロン爺は...二度寝しました。
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