1章 最終話 危機一髪?そして迎える新たな展開は...
「逃げて!お姉様!今はお引き下さい!」
補給物資を取りに行こうと、三歳の掌に握られて、元の世界に来た私と三歳(の右腕)...
「エライ時に来たわね」
『その意地悪な顔、止めな?モニターとかあるんだろ?』「うっ!?」
三歳に言われ私は慌てて顔を擦ると...
「お姉様!」「大丈夫!私の指示に従って!」「分かりました!コード、送ります!」
あっ...ランシェだけで良かったんだけどなぁ...
思った時にはもう遅い。ランシェは私に指揮権を譲渡し、司令待ち体制に移行したようだ。私は仕方なく軍用回線を利用して全軍に指示を出す。
「全軍に告ぐ!今直ぐ敵側に全弾放出!!当たらなくて良い!その後、今上空にある巨大な腕の後方に全速力で後退しなさい!守りは考えなくて良い!この私、セシル=リア=クランドールの名に賭けて、敵を一掃してみせよう!繰り返す!全軍全弾放出後、全力後退!急いで!!」
私の指示を聴くなり(ランシェは上空に舞い上がってから一斉掃射後、食い気味に後退し始めていたが)
全軍射線が重ならないよう一部左右に展開しながら、飛べるものはランシェ同様飛翔後一斉掃射してから後退し始めている。
「流石ランシェの率いる部隊ね。そつがないわ」
私は敵軍に舞い上がる爆炎と砂埃を見据えながら、味方の軍が私の意図した撤退位置に収まるのを待った。すると...
一機、爆炎と砂埃を切り裂いてコチラに向かって来る機体が視えた。あれは...
「|Aurora-Sol 《アウローラ・ゾル》!暁の太陽じゃない!?」
『げっ!?それって敵の大エースじゃねぇか?!』
今三歳が言った通りマルプロイヒ帝国の重鎮にして『最大尉』【Erz-Hauptmann】と呼ばれ、救国の英雄とも噂される人物...
「ヴィンツェンツ=フェリックス=シュヴァイツァー...戦場では絶対に会いたくない相手だわ...今日でさえ、なければね!」
『セ、セシル...顔、顔っ!』「...失礼」
三歳に再度突っ込まれ、私はニヤけた顔を揉みほぐす。そんな事よりも...
公国では戦場の不死王と呼ばれた帝国の英雄、彼を今日は...
「一方的に蹂躙して差し上げてよ!おーほっほっほっ!」
「こんなノリノリのお姉様、久しぶりに見ました♪」「まっかせなさぁ〜い♪」
ランシェは私がこれから何をするのか分かってない筈なのに、何故かもう勝ったつもりになっているようだ。
『いや、お前さんがそこまで余裕かましてれば、流石に気付くだろ』
(それもそうね)と思いもしたが、そろそろ真剣に構えなくてはいけない。
向かってくる最強の敵に気付かれないよう少しずつ後退しながら、攻撃を開始する。
「良い?タイミングを合わせてよ?バレたら...逃げられちゃうんだからね!」
『分かってるよ、っつーか...えげつない作戦だよな?』
そんな念話をしながら戦況を見ていると、暁の太陽に遅れて敵軍も追撃行動に出たようだ。
「狙い通りよ。そのまま、三歳の掌の下まで来なさい」
『改めて思うが、危機感ねぇのかな?』「大きさが違いすぎて、現実味が無いのよ」
三歳からは見れないから仕方無いでしょうけど、これだけサイズが違うと腕って気がしないのよね。
ちゃんと見れば、考えれば分かるんでしょうけど...
「戦場で戦う事に意識がいっている時、山のような腕を見ても理解なんて出来ないわ」
『ソレどころじゃ無いって事か』「空に浮かぶ雲くらいにしか思ってないんじゃない?」
(雲にしては、あり得ない形と色をしているけどね)
そんな益体の無い事を考えているうちにも、敵の進軍は止まらない。
しかも...
「ちゃんと私に気付いてるわね」
『もう少し引き付けるのか?そろそろやばくないか?』
私が敵に自身の存在がバレているのと...
三歳が私の身を案じたのと...
敵の一斉掃射が...
重なった!!!
ズドム!
ゴゴゴゴゴ………
「ちょっと!何してるの?!」『すまん!当たると思って』
三歳の攻撃までが重なり...
「くぅ〜…やっぱり勢いがあると風圧で飛んでっちゃてるぅ〜」
『そうだな...でも、それで良かったよ』「なんで!...ってそうね、ごめんなさい」
三歳が私に危機が迫ったと思い、咄嗟に手を振り下ろした。これは迫りこようとする弾丸から私を守ろうとしたからだ。考えて動いた訳じゃない。そして...彼は今、人殺しにならずに済んだと...胸を撫で下ろしている。その想いを感じた私は...
「作戦変更ね」『良いのか?』「(攻撃)出来ないでしょ?」『...スマン』
私と三歳、そうやって次に何をするか思案していると...
〘気を抜いたな!公国の女狐が!!〙「しまった!?」『セシル?!』
ズドゥム!
拡声器で暁の太陽が勝利宣言を放った瞬間、三歳は私を包むように、手の平を閉じ包んだ。そのおかげで敵の攻撃は届かなかったのか、私に被害は出なかった(三歳の手の平が覆い被さった為、真っ暗で何も視えない)だが、味方の通信は活きており...
「どうやら、敵は撤退を始めたようね」『そうみたいだな。でも、どうして?』
「考えないほうが『スマン。(セシルの気配りを)感じてしまった』...そう」
私は味方の通信内容から、帝国軍が撤退し始めたことを知る。その事を三歳に伝えようと思った訳では無く、単に独り言のように言ってしまっただけだったのだが...
さっきのやり取りを思い出し言葉を濁そうとするも、その想いは徒労に終わった。
「お姉様、ご無事ですか?信号は活きてますが...無事なら声を聞かせて下さい!」
「三歳?ゆっくりと、手を上げてもらっても?」『了解だ』「ありがとう」
私は妹の声に応えるべく三歳に腕を上げてもらい、ついでに補給物資を乗せれるよう手の平を上にしてもらった。そして...動かした三歳の手の下から出て来た機体に、私は気付くも直ぐに目を逸らす。そうこうしていると、妹が私の近くに機体を寄せて降りてきた。
プシュー…
「ランシェ」「お姉様!」「ちょっと!?」
私も機体を降りランシェと久しぶりに直接話そうと地面に降り立とうとしたら、先に下で待っていたランシェが飛びついて来た。私は倒れないようにする為にも、離そうとした昇降桿を強く握り直す。
「お姉様...ご無事で何よりでした」「ランシェ...」
『やっぱ似てるな〜』「三歳?」「...ミトセ?」
久しぶりに合うランシェとの包容で、ほんの少しだけ郷愁を感じていたのに...
三歳の空気を読まない感想に、思わず私は怒気を漏らす。そんな私を不思議そうに見るランシェに
「今、時間取れるかしら?」「勿論です!だって私は...」
三歳の事を話そうと思ったら、ランシェの口から、とんでもない事を知らされた。
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