表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一夫多妻制の許されたこの社会で俺は銀髪少女に唯一無二の愛を貫く 最終章《一夫多妻エンドVer.》  作者: 東音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/38

儚く逞しき花

 病院の会計を終え、駐車場近くのベンチで、迎えの権田さんを待っている間、まだ呆けている俺に、隣のさくらは困ったように笑いかけた。


「良二さん。今日はすごく心配かけてしまってごめんなさい。最近異常に食欲が湧いてしまって、今日の夕食は家族全員分に作ったスープとパンを食べ尽くしてしまったんですよ。食べ過ぎでお腹苦しかったなんて恥ずかしくて、良二さんに黙ってて頂くよう香織さんにお願いしていたんですが、まさか、こんな事になるとは……」


「そ、そうだったのか……。まぁ、何にせよ、大事がないならよかった……」


 今回、食べ過ぎによる腹痛で、大した事はなかった事に取り敢えずはほっと胸をなでおろした。


「俺が心労かけたばっかりに、君が君のお母さんのようになってしまったらどうしようってずっと思っていたから……」

「良二さん……」


 さくらに万一の事があったら、とても生きていけないと思った。彼女が倒れた時の絶望感を思い出し、俺は身震いをする。


「お母様が早くに亡くなったのは元々持病があったからですよ。お父様は、ご自分が苦労をかけたせいと思ってらっしゃるようですけど……。

 私は持病もなく、この通りピンピンしておりますので……!」


 笑顔で力こぶを作るさくらだったが、俺は完全に安心し切る事はできなかった。


「けれど、今はもう一人の命を宿した大事な体なんだから、無理はしないでくれ。本当に……」


「良二さん……」


 さくらは、真剣に詰め寄る俺を戸惑ったように見上げて来た。


 さらっとした煌めく銀髪。澄んだ青色の瞳。透き通るような白い肌。ほのかな桜色の頬と唇。


 常人離れしたさくらの美しさは、まさしく彼女の名前の花のようにどこか儚げで、俺は華奢な彼女の体を壊さないようにそっと抱き寄せた。


「あっ。良二さん……!////」

「さくらは俺の全てだ。君にもしもの事があったら、俺は生きていけない。約束してくれ。俺を置いて先にいなくなったりしないと……」


「……!」


 ギュッ……。


 泣きそうになりながら、情けなく縋る俺の背に、さくらは両手を回し、俺達はぴったりと身を寄せ合い一つになった。


「良二さん、大丈夫ですよ……」


 彼女の確かな温もりと鼓動を感じながら、俺の耳元で甘やかな声が響いた。


「桜は儚い花に思えるかもしれませんが、実は、逞しい花なのです。


 毎年花を咲かせ、葉を茂らせ、実をつけ、枝だけになっても接ぎ木で増え、寿命が数百年から千年を越えるものもある程……。


 その名を取った私はきっと長生きしますよ?

 約束します。絶対にあなたを先に置いて行ったりしないと……!」


「さくら……!」


 力強い言葉にハッとして、さくらの顔を見ると、儚いと思っていた彼女の瞳には強い意志の光が宿り、そこから零れる雫でその頬は濡れていた。


「ああ、しまった。また泣いちゃった……。ぐすっ……」


 彼女は、困ったように笑い、その涙を小指の先で拭った。


「この前、私が泣いてしまったせいで良二さんに心配かけてしまっていたというのに……。


 でも、これは、幸せの涙です。良二さんが、私を大事に思って下さるのが嬉しくて切なくなってしまって……」


「さくら……」


「これから、私も香織さんも愛おしいあなたとの二つの小さな命を胎内で守り育てていく幸せが待っています。

 良二さんも、出来れば笑顔で見守って下さると嬉しいな」


「さ、さくら……!そうだったな。俺、勝手に一人で悩んでいて、さくらも香織も気遣ってやれていなかった。

 俺、これからは、本当に頑張るから!」


「はい!頼りにしてますよ?旦那様……!」


 さくらが満面の桜を思わせる笑顔を浮かべた時…。


「ずずっ……!ぐしゅっ……。ふぐうっ……!!」

「「?!」」


 突然男性の鼻をすする音と、嗚咽が聞こえ、俺とさくらは体をビクつかせた。


 見れば近くの垣根の枝が、ふるふると震えて、そこから、透明の雫が地面にポトポトと落ちている。


「(これは、権田さん……)」

「(ですね……?)」


「ううっ……。うくっ……。(美しき夫婦愛……!権田、感動で……ございますぅっっ……)」


 俺とさくらは顔を見合わせて笑うと、嗚咽を漏らす垣根に近付いて行ったのだった……。



✽あとがき✽


 ここまで読んで下さりありがとうございます。

 今回のお話「一夫多妻制」で一番書きたいシーンでありまして、作者的には感無量であります(;_;)


 時代やその場の状況を見定めて、例え痛みを伴っても好きな人の為に新しい道を選んでいける。さくらちゃんとは、そういう強いヒロインでありました。


 あまりに聖人過ぎちゃうのもどうかと思い、(あと、主人公お尻を狙われるエピソードを書いてみたいのもあり)BL好き要素入れましたが、他サイトに投稿しました時、最初はかなりの不評でしたね(;´∀`)


 も、もうそのネタはやらないと思いますよ。多分……。


 次話で最終章の本編が一段落しますので、見守って下さると嬉しいです。


 今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ