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光の戦士 ~殺人犯と同じチート能力を持ってますが悪用しません~  作者: 池田大陸


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第70話 さらば……

 

 ――今は一秒でも時間が惜しい。デヴォンシャーを飛び出した俺とジャンタンはハムの潜伏しているセラム山の麓へと急いでいた。

 ハムの能力の性質を考えると、大人数で行こうとも全滅の可能性があるから二人だけで向かっている。


「しっかしアグライアって女神は凄えよな。上級魔法の『索敵』でこんな遠くのハムの現在地まで特定できるんだからよ」

「うん。あの人の話じゃ古代魔法以外のこっちの魔法は全部魔界の下位互換って話だし……魔界ってヤバイよな」


 俺はジャンタンと会話しながらも、ハムを警戒していた。香織に逃げられて何をしてくるか分からないからだ。


 実は香織の居場所もまだこのセラム山の近くらしい。

 まだ香織が脱走してそれほど時間が経っていないから運が良ければ香織を発見できるかもしれない。逆に香織がハムに見つかれば殺されるかも知れない……こういう時香織が『通信』を使えてたら本当に便利なんだが。


 ――そもそもなんでハムは幻影魔法まで使って香織が死んだと思わせたんだろう?俺の苦しむ顔が見たいだけならそんな回りくどい方法を取らずに普通に香織を殺しても俺は同じように地獄を味わっただろう。

 そんな疑問を胸に残し俺とジャンタンは目的地へと向かった。



 ――それからしばらく経って、セラム山に近づくにつれ霧が出できた。


「ジャンタン、この霧いいんじゃね?俺らの姿をハムから隠してくれるぞ!」

 俺は少し笑顔になってジャンタンに話した。

「おう。後は俺が科学魔法さえ使わなかったらハムにも気づかれねーな!」


 ――「ぎゃああああああああ!」


 と、そこで誰かの悲鳴が聞こえた!

 俺とジャンタンに緊張が走ったが、その声は少なくとも香織のものではなかった。


「あーイラつくわー。お前らマジ使えねーな!」


 聞き間違えるはずもなくハムの声だ!


 小屋の裏で立っているらしいハムの姿が見えた。誰かを叩っ斬ったらしくハムの足元までその血が広がっていた。


「いくら境界人とはいえ、あんな女一人拘束出来ねーのか……クソがっ!お陰で余計な手間が増えただろーがよ!!」


 香織の事だ……という事は香織はまだ逃げおおせてる!やったぜ!!


「――ん!?おい誰だ?」


 突如ハムはこちらに気付いたように風魔法で周囲の霧を吹き飛ばした。

 突然の事だったので身を隠す場所もなく俺とジャンタンの姿があらわになる。しまった!


「うわー。ここでタイチが出てくんのかよ……なんて間の悪いヤツなんだ。ああ?」


 ハムが悪態をついてなんか言ってる……いや、会いたくなかったのはこっちだぞ。


「……ハム、俺に香織を殺した幻覚まで見せて何がしたいんだお前?」


「ははっ。幻影魔法の事は先生にでも聞いたのか?言っただろ。俺はお前が気に入ったって。だからお前の絶望する顔をできるだけ長く見物したくてよ。そのために最初はあの女が死んだと思わせる。んで、後から今みたいに真実を知ったお前が復讐しに来たその時――!」

 ハムの顔がグニャッと歪み狂気の笑顔を見せた。


「今度は本当にカオリを殺す!お前は二度目の絶望を味わい再び地獄に落ちる!一粒で二度美味しいってワケだ!!ふはははははっ」


 俺はもう、ハムが何を考えようと驚きは少なかった。どうやってコイツを殺すか、考えることはそれだけだ。幸いなことにそのための条件は今の所クリアしている。


「……趣味の悪い奴だ……」


 俺は表情を変えずに言った。


「ふはは、だがタイチ。俺ァがっかりしたぜ?お前……地球に帰っちまったよなあ?流石に俺も魔法の使えない地球まで追いかけて行けねーからちょっとイラついたぜ?あ、そうそう……」

 ハムは何か思い出したような素振りを見せた。


「カオリって結構いい女だな。脱走されるまでにちょっと摘んだが中々良い体してたぜ?もう女なんて興味も無くなってたけど久々に猛っちまったわ!ふはははっ」


 それを聞いて俺は湧き上がる怒りを必死に押さえた。


「……ハム、お前はやっぱり……死んだほうがいい」


「ああ?タイチィ。お前なんか勘違いしてねーか?お前がどうあがこうと俺には勝てねえんだが!?ちょっとお仕置きが必要らしいなァ!」


 そう言うなりハムはその姿を消した。


 コレだ。完全なハイド。コイツだけのチートな能力……しかし穴がないわけじゃない。

 それはコイツの性格。ハムは自分が負けるとか窮地に陥る事は全く考えていない。

 慢心の塊のような人間だ。まあ、こんな能力を身につけてしまったらそうもなるだろう、現に今コイツは俺に読心を使っていない、俺の企みに気付いていない、今回はこの弱点を突く!

 そしてもう一つの味方はシャロに作ってもらったこの装備品だ。

 俺はカバンからあるものを取り出した。それは――「ヘルメット」


 もちろん普通のヘルメットではない。正面にカメラが内蔵されていて、シールドにモニターが設置されている。

 視野は肉眼より大分狭まるがモニターにはハイドで消えたハムの姿がハッキリと映し出されていた。


 しかし俺はあえてハムの姿が()()()()()()()()をした。

 一方ジャンタンの方は今のハムの位置は本当に見えていない。


「はーっははは!どうした太一?そんな兜を被ったぐらいで……!いや……んん?なんだ?」


 ハムはいやに落ち着いた俺の挙動に不自然さを感じ取ったらしく『読心』をするために一旦歩みを止めた。


 ――今だ、チャンスはこの一度切り!!



「ジャンタン!」


 ジャンタンは俺の方を向く。そして俺は叫んだ!


いち!!」


 ジャンタンは一瞬目を見開いてニヤリとし、腰を屈める――と同時に俺は首の高さに光輪を出し一気に超高速で拡大させた!!


「あ?」


 間近にジャンタンがいるのでいきなりこんな攻撃をするはずがない……そう思っていただろうハムは不意をつかれ全く反応出来ていない。

 そんなハムを光輪が直撃した!!


 それはメキッといった鈍い音と共にハムにのたうち回る以外の選択肢を与えないレベルのダメージを与えた。ジャンタンはもちろん屈んで回避済みだ!!見たかハム!!!!


「ぎゃあああああああああああああ!!」


 首を抑えて転げ回るハム。


 ドッ!


 そんなハムの顔面に俺は意識を失わせない程度に拳を打ち下ろした。


 魔法はおろか大声で叫ぶ余裕もなくなったのか、ハムはひゅーひゅーと口で呼吸するのがやっとのようだ。当然ハイドどころではなくジャンタンにもその姿が見えるようになった!


「よーーーーし。この野郎、やっと姿を現しやがった!やったな太一!!」


「ああ!ジャンタン、香織を探すの頼んでいいか?」

「おう、まかしとけ。アグライアさんと通信ですぐに見つけ出してやるぜ!」


 ジャンタンはそう言うと直ぐに駆け出そうしたが、思い出したようにピタッと足を止め、何か含みを持った悪そうな顔をしてこう言い放った。


「太一、そいつにゃ地獄を見せてやれ」


 俺は無言でほほえんだ。


 ――ジャンタンが走って行くのを確認すると、俺はハムの方を振り返った。


「い、いてええよおおおお!めちゃくちゃ痛えええええ!助けてくれえええ」


 涙や涎を垂れ流しながら痛がるハム。


「助けて?何を言ってるんだお前は?」


「い、今まで生きててひ、人に殴られたの、は、初めて……なんだ……痛え、めちゃくちゃ痛えよおぉぉ!なあ、太一ぃ……お願いだ、助けてくれえええお願いしますぅぅっっ!!」


 ハムはそう言いながら足をばたつかせる。


「なんだよお前、行儀悪いぞ?」


 俺はハムの両脚に光輪をはめた。


「あひっ……あっあっや、やだぁぁぁやめ――」


 バキバキッ!!


「――――っっっっ!!!」


 言葉にならない悲鳴をあげるハム。

 俺は続けて追い打ちをかけるべく様々なサイズの光輪を20個ほど出現させた。そしてそれらをハムの手、足、指の一本一本に至るまで全部にはめていく。


「あひっ……ゆ、ゆる……し、て。たの……む」


 俺は表情を変えずにハムに今の気持ちを伝えた。


「俺は自分で言うのもあれだけど、結構情け深い性格なんだ。でもお前に対してだけはどれだけ酷い事をしても足りないぐらいの怒りが溜まっている。分かるよな?」


「も、もう……人を殺したり……しないっ!魔法も封印してもらって大人しくっ……する……からた、たす……けてぇ」


 血、涙、よだれ、小便……恥も外聞もなく垂れ流しまくり最後の嘆願に出るハムだったが俺は知っている。ここで殺さねば必ずお前は復讐に来るってことを!


 俺はハムの言葉を聞いて憐れむような目を向ける。そしてこう言った。


「ハム」

「……は、はひ……」



「全てがもう、遅い」



「あ、あひ……」


 俺はハムにはめた全ての光輪を一気に縮小させた――。

 

 パシュッッッッッッ……。


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