5人目の転校生
次の日の朝のホームルーム。
担任が教室に入ってきた。
「今日は転校生を紹介する」
教室がざわつく。
蓮も顔を上げた。
「白石美月さんだ」
扉が開いた。
少女が入ってくる。
黒い髪。
白い肌。
少し緊張した表情。
「白石美月です。よろしくお願いします」
小さく頭を下げる。
担任が黒板を指した。
「白石さんの席は……」
教師が一瞬、止まった。
「……佐伯の後ろだな」
白石が歩いてくる。
蓮の横を通った瞬間。
白石が立ち止まった。
そして。
「……蓮」
小さく呟いた。
「え?」
美月は驚いた顔をした。
「……ごめん」
「今、俺の名前呼んだ?」
「呼んでない」
即答だった。
蓮は首を傾げた。
担任が言う。
「白石さんは県外から来たばかりだから、みんな仲良くするように」
美月が席につく。
蓮が後ろを振り返った時、
美月はぎこちない笑みをした。
その笑顔を見た瞬間。
なぜか蓮の胸が痛んだ。
知らないはずなのに。
初めて会ったはずなのに。
ずっと前から知っているような。
そんな気がした。
___________________
白石が転校してきてからの昼休み。
蓮は弁当を持って立ち上がった。
「白石」
美月が顔を上げる。
「……何?」
「一緒に食わない?」
美月は目を丸くした。
「え?」
「俺らと」
後ろを見る。
紗季。
悠真。
神谷。
三人とも蓮を見ていた。
紗季が苦笑する。
「また始まった」
「何が?」
「蓮の誰でも仲間にするやつ」
「いいじゃん」
悠真が椅子を引く。
「白石さん、どうぞ」
「……いいの?」
「もちろん」
美月は少し迷った。
「じゃあ……」
小さく笑った。
「お邪魔します」
それが五人の始まりだった。
最初は、会話が続かなかった。
美月は質問されると答える。
でも自分からはあまり話さない。
「前の学校どこ?」
「県外の公立高校」
「部活は?」
「まだ決めてない」
「好きな食べ物は?」
「……カレー」
「俺も」
「聞いてない」
紗季が蓮の頭を叩いた。
「痛っ」
美月が笑う。
「ふふ」
「今笑った?」
「笑ってない」
「いや笑っただろ」
「ちょっとだけ」
その日。
初めて。
美月が自然に笑った。
その笑顔を見ながら、神谷だけは笑わずに美月の弁当を見ていた。
「……それ」
美月が顔を上げる。
「何?」
「その弁当箱」
「これ?」
「どこで買った?」
「……分からない」
「分からない?」
美月は弁当箱を見つめた。
「昔から使ってるから」
神谷の表情が変わった。
「そう」
それ以上は何も言わなかった。




