表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/5

第17話。「大自然の罠と、男たちのリベンジ」

第17話「大自然の罠と、男たちのリベンジ」


我が名はポチ。茶色のスピッツ。


サクラちゃんの『かんさつ日記』に書かれた「深夜の奇行」のせいで、お父さんはお母さんから本気で心配されていた。


「あなた、最近仕事が忙しすぎて疲れてるのよ。今度の日曜日は、家族みんなでポチの散歩を兼ねて、緑豊かな公園へピクニックに行きましょう。リフレッシュが必要よ」


お母さんの優しい提案に、お父さんは

「あ、あぁ、そうだね……」と弱々しく頷いた。


だが、僕は見逃さなかった。

お父さんと高校生のカケルが、背後でガシッと熱い握手を交わし、不敵な笑みを浮かべたのを。


彼らはこのお出かけを利用して、僕たちを家から連れ出し、大自然の中でボロを出させようと企んでいたのだ。


そして日曜日。


青空の下、僕たちは大きな芝生広場のある公園へとやってきた。


サクラちゃんは「わあ、ピクニック楽しいね!」とノートを片手に大はしゃぎだ。


タマ(茶トラ)とミケ(三毛)は、お出かけ用のケージから出され、リードに繋がれて芝生の上に座っている。


「(おいポチ、ミケ……。外は開放感がハンパねえからって、絶対に油断するんじゃねえぞ。あの二人の目が完全にハンターのそれだ)」


「(分かってるわよ。こんなところで喋ったら、周りの人間大騒ぎで即・ニュース行きだものね)」


二匹が警戒度を最大に高めたその時、カケルがニヤニヤしながら僕の前にやってきた。


手にはスマホ、そしてなぜか一本の「フランクフルト」を持っている。


「ほーらポチ、美味しそうなフランクフルトだぞ〜。お前が『黒幕』だって認めれば、これをまるごと一本やろう。それとも、あっちにいる可愛いプードルちゃんに話しかけて、犬のナンパのやり方でも見せてくれるか?」


相変わらず直球でくだらない罠だ。

僕はフランクフルトをガン無視し、ただの犬らしく芝生の匂いを激しくクンクンと嗅ぎ回るフリをした。


カケルは

「チッ、また犬のフリを……!」

と悔しがっている。


本番はここからだった。


今度はお父さんが、タマとミケが座っているベンチの近くへ移動した。


お父さんのポケットからは、小さくカサカサという音が聞こえる。


昨日カケルがネットで買ったという


『最高級・無添加またたび粉』の予備だ。


「(カケル、私に任せろ。外の風に乗せて、このマタタビ粉を奴らの鼻先に送り込んでやる……。理性を失って、絶対に本音で喋り出すはずだ……!)」


お父さんはお母さんとサクラちゃんがレジャーシートを広げている隙に、ポケットの中で小瓶のキャップを開け、風上からこっそり粉を撒こうとした。


その時だ。どこからともなく、この公園のボスらしき、体格のいい凶暴そうな野良の黒猫がノコノコと現れた。


黒猫は、お父さんが持っているマタタビの強烈な香りに引き寄せられ、お父さんの足元にズサッと突撃したのだ。


黒猫


「ナァァーーーオ!!!(マタタビよこせやコノヤロー!!!)」


お「うわあああ!? なんだこの化け物猫は! パジャマの裾を噛むな! カケル、助けてくれ!」


「うわっ、お父さん! 別の猫が釣れてるって!」


お父さんとカケルが凶暴な野良猫に襲われ、大パニックになって芝生の上を転げ回る。


その拍子に、お父さんのポケットからマタタビの小瓶が飛び出し、芝生の上に転がった。


タマはそれを見逃さなかった。


お父さんたちが黒猫と格闘している隙に、タマはリードに繋がれたまま、ものすごい俊敏な動きでその小瓶を前足でキックし、遠くの池の中へとホールインワンさせたのだ。


実に見事なシュートだった。


「(ナイス、タマ! これで証拠隠滅ね!)」


「(ケッ、親父の自爆だ。美味い引き際を知らねえからこうなるんだよ)」


ようやくお母さんが


「ちょっと、朝から何騒いでるの!」



と野良猫を追い払いにやってきた。


お父さんとカケルくんは服が草だらけになり、疲れ果ててレジャーシートに倒れ込んだ。


リフレッシュどころか満身創痍である。


サクラちゃんは、その様子をじっとノートに書き留めていた。


「お父さん、お兄ちゃん、お疲れ様。日記、ちゃんと書いたよ!」


サクラちゃんが広げたノートには、こう書かれていた。


『きょうはぴくにっくにいきました。おとうさん と おにいちゃん が、のらねこ と すもう を とって まけていました。ポチ と タマ と ミケ は、あきれて それを みていました。おとうさんたちは、やっぱり もう だめだと おもいます』


お父さんとカケルは、サクラちゃんの日記を見て同時に白目を剥いた。


僕は持参したドッグフードの水をペロペロと舐めながら、そっとため息をついた。


外の世界に飛び出しても、木村家のカオスからは逃れられない。


我が名はポチ。茶色のスピッツ。

僕たちのたたかいは、大自然の罠を乗り越えて、まだまだ続くらしい――。(第17話・終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ