1‐7 光の魔法陣 ギフト
光る円陣は時計回りに回転しながらゆっくりと降りてくる。その光は色とりどりの輝きを持った巨大な魔法陣だった。光の白、水の青、草木の緑、闇の黒、土の黄、火の赤とそれぞれが魔力の煌めく紋章を形作ったまま、等間隔の距離を保って円を描いて回っているのだ。六種の魔力が世界を動かしている、その理を具現化した魔法陣は、輝きを増し辺りを覆い尽くす。
暴走していた怪鳥達の鳴き声が今はもう聞こえない。静かになって、ゆるゆると翼を動かして散り散りにどこかへと帰ってゆく。
空にとどまったままの魔法陣の回転が遅くなってきた。
俺から延びた漆黒の楔はそれを差し止めるように真直ぐ突き立ち、やがてぎりぎりと軋むように空気が震えると、ついに回転が止まった。
広がっていた円陣が縮み始める。光が凝縮して輝きが増してゆき、黄金の柱になると天に吸い込まれるように消えていく。同時に俺から延びていた楔も薄れて消えて行く。
「助かった…んだよな」マルティンが呟くように言って、弟とミミルを見る。
「何が起こったんだろう?」エルンストが、皆が俺を見る。
俺にもわからない。俺はだらりと両手を下げて立っていた。
俺には魔力は無くて、あんな魔法陣を作り出せる力もなく、あの黒い針? 槍? 楔のようなものについてだって知らない。
知らないんだ。
ミミルが急に驚いた様子で空を指した。
もう消えそうな光の柱の真上、ずっと高いところに小さな光の球が見えた。
また何か起きるのかと警戒し見上げる中、光の球はゆっくりと、どこか暖かな光を放ちながらふわふわと降りてくる。
柔らかな曲線を描いて、突っ立っている俺の方へ、祝福するように。
無意識に伸ばした腕を広げて俺はそれを迎え入れていた。胸の前にそっと手渡された光は柔らかな布に包まれていた。
あたたかい。
布を通して俺の冷えた腕が温まる。
そっと布をめくると中にいた小さなそれは、生まれて何日もたっていないような赤ん坊だった。
目を開いて俺を見る赤ん坊は、柔らかく小さく細く、自分で立つことも座ることも出来ないくらい弱く幼い。
腕の中から俺を見上げていた赤ん坊がぱかりと口を開ける。歯はないのだなと思っていると、ひくりと震えた後、俺を見たまま大声で泣きだした。
どうしたらいいんだ?
俺じゃ嫌なのか? 俺だって嫌だ。
小さな赤ん坊はこの理不尽な世界の全てに抗議するように、真っ赤な顔で全身で怒って泣きわめく。
俺は赤ん坊を抱いたまま途方に暮れて突っ立っていた。




