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9.ベリンジャーの屈辱


9.ベリンジャーの屈辱



「やれやれ。この程度のトラブルで参っちまうなんて、情けないねぇ。リヴルの末裔が聞いてあきれるよ」


 バルボラが大げさに肩をすくめてため息をつく。返す言葉がなかった。結局俺様たちはその場に座り込み、無駄な時間を過ごしてただけだからな。魔獣の群れが襲ってこなかっただけ、まだマシってくらいだ。


「ねぇ、ベリンジャー」


「なんだ?」


「これじゃあラチがあかないから、アンタが復活するまでアタイが仕切るよ。いいね?」


「……好きにしてくれ」


 俺様が投げ遣りにそう言うと、バルボラは勢いよく立ち上がった。


「モランゴ。アンタが前衛で斬り込みな。主戦はアタイとこの邪龍ドゥラジールが受け持つ。モランガは後方支援。アタイたちは心配ないから、兄貴中心で援護体制を取るんだよ」


「私とベルは?」


「最後方で回復を優先。万が一のときには出張ってもらうから、気は抜かないでおくれ」


「わ……分かったわ」


 つまりは戦力外通告ってわけか。ふん、まあいいだろう。お手並み拝見といこうじゃないか。



 何事もなく3階層に到着する。しばらく進むと、蜘蛛型の魔獣の群れと遭遇した。サイズは大型犬くらいだが、毒液が厄介だ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」


 雄叫びと共に、モランゴが突っ込んだ。振りかざした大剣がうなりを上げる。

 一撃、二撃、三撃。

 モランゴが息を入れるタイミングで、邪龍が黒炎を放射する。

 更にモランゴの追撃。

 打ち漏らした魔獣の毒液が、モランゴに降り注ぐ。


「偉大なる慈愛の神アモルよ。我に死の厄災を退ける力を与えたまえ―――

―――スフィキシテッド!」


 すかさずモランガが解毒の呪文を唱える。


「勇猛なる疾風の神ベントルよ。我に全てを切り裂く力を与えたまえ―――

―――ウインドブレード!」


 ほぼ同時に、バルボラが風の攻撃呪文で魔獣を切り裂く。

 バラバラになった魔獣の死骸が、一帯を埋め尽くす。

 それらすべてを邪龍が焼き払い、魔獣の群れは跡形もなく消滅した。


 認めたくはないが、即席とは思えないほど見事な連携だった。モランゴとモランガは兄妹だし、同じパーティーの仲間だからまあ分かる。だが連携の要はバルボラだ。こんな芸当は、相当戦い慣れてなけりゃ不可能だろう。コイツ、本当にレベル14なのか?


「やるじゃないか、モランゴ。いつぞやはデクノボウなんて言って、悪かったねぇ」


「いやいや。バルボラがテンポよく攻撃してくれるから、思い切って行けただけさ」


「モランガは状況を的確に把握して、しっかり役割を果たしてたね。素晴らしかったよ」


「いえいえ。私はバルボラ様の指示通りに動いただけですわ」


 などと互いを褒め合う様子まで見せつけられて、俺様のテンションはだだ下がりだ。モランガに至っては様付けでバルボラを呼んでやがる。控えめに言って、最悪だ。


 その後も順調に攻略は進み、中階層を抜け下階層へ到達する。それにしても解せないのは、バルボラの魔力量だ。ここに至るまでバンバン魔法を使い、魔獣を使役してるにもかかわらず、一向に魔力切れを起こす気配がない。確かにレベルの高い冒険者は総じて魔力量が多い。しかしバルボラのそれは、常識の枠を遥かに超えている。コイツ、本当に人間なのか?


そしてとうとう最下層へ到着した。不気味な静けさの中を、奥へ奥へと進んで行く。独特の緊張感。いつもなら高揚するこの感覚だが、今回ばかりは効果がないようだ。


「さぁ、おいでなすったよ」


 遂にラスボスの登場だ。3m級の巨大なミノタウロスが、俺様たちを出迎える。己を鼓舞するように雄叫びを上げ、巨大な斧を構えるその姿は、見事なまでに禍々しかった。


「なかなか強そうじゃないか。これは倒しがいがありそうだねぇ」


 言うだけあって、バルボラはここまでほぼノーダメージ。モランゴ兄妹はまだやれるだけの体力と魔力は残しているが、疲れの色が濃い。やれやれ、どうやら俺様の出番のようだな。


「モランゴ。ここはアタイとドゥラジールでやるから、アンタは下がってな」


「ここまで一緒に戦ってきたのに、そりゃないですよ。確かに今の俺じゃ力不足かも知れませんが、少しでもバルボラ様のお役に立てるなら、全力で戦いますよ」


「そうですよ、バルボラ様。私たちはもう、バルボラ様なしでは生きていけないんですから。どこまででもついて行きますわ」


「おやおや、可愛いことを言ってくれるねぇ。だが今日のところは、その気持ちだけありがたく受け取っておくよ。今使うつもりだったが体力は、今夜のために取っておいとくれ」


 顔を見合わせ、赤面するモランゴ兄妹。それはまあどうでもいいし、もう好きにしてくれって感じだ。

 そんなことより、バルボラはこのサイズのミノタウロスをひとりと1頭で相手するつもりらしい。レベル20の俺様の力をもってしても、確実に勝てるとは言い切れない強敵だぞ? 本気で言ってんのか?


「それじゃあドゥラジール。アンタの本気を見せてやりなっ!」


 邪龍の咆哮が、ダンジョンを震わせる。

 だがミノタウロスもその程度じゃ怯まない。

 邪龍の肩口辺りが、まるで別の生き物のように蠢く。

 ミノタウロスが一歩、また一歩と間合いを詰める。

 邪龍が牙をむいて威嚇する。

 そしてミノタウロスが、いわゆる一足一刀の間合いに入ったその瞬間―――。

 邪龍の両肩辺りから、1本ずつ首が生えてきた。


 邪龍は3つの口を大きく開き、立て続けに真っ黒なエネルギー弾を発射する。

 ミノタウロスは反撃する隙さえ与えられず、穴だらけになっていく。

 容赦ない連続攻撃に、ミノタウロスが悲鳴を上げる。

 砲撃が止んだあとに残っていたのはわずかな肉片と、

 1度も振り下ろすことなく砕け散った、戦斧の破片だけだった。


「なんだい、他愛もない。でもまぁ、こんなもんかねぇ」


 感極まったモランガがバルボラに走り寄り、勢いよく抱きつく。


「すごいですわ、バルボラ様! あんなに巨大なミノタウロス相手に圧勝するなんて!」


「まったくですよ。この強さがあれば、今日にでも勇者になれますよ」


「そんなに褒めるんじゃないよ。調子に乗っちまうじゃないか」


「それにしても、まさかドゥラジールが三つ首ドラゴンだったなんて驚きですわ」


「本当ですよ。まるで伝説の皇龍王トーレスみたいじゃないですか」


「おや、ドゥラジールまで褒めてくれるのかい。それじゃあ今夜は、たっぷりと楽しませてやらないとねぇ」


 そんな和気あいあいとしたやり取りを、俺様はどんな顔で見てるんだろう。リリアが声をかけるのをためらったくらいだから、相当ひどい顔なんだろうな。リリアよ、そんな泣きそうな顔で俺を見るな。心配しなくても、俺様が必ずお前を女王にしてやる。だから相手が誰だろうと、俺様は負けるわけにはいかねぇんだ。

 バルボラにも、魔王にも……そして、ノーマンにも。

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